ONLIVE Studio blog では、定期的に登録プロフェッショナルにインタビュー。気になるトピックを聞いていきます!
今回は、ギタリストとしてご活躍されている遠藤タカヒロさんに、ご自身のお仕事やキャリアに関することをお聞きしました。
遠藤タカヒロ氏のプロフィール
岐阜県生まれのギタリスト。
13歳からギターを始め、中高時代はバンド活動に打ち込みギタリストの道を歩み始める。
名古屋コミュニケーションアート専門学校卒業。卒業後は同専門学校でギター講師としても経歴を積み、その後ギタリストとしてステップアップするため上京。
2012年ロックバンド「 READ ALOUD 」でメジャーデビュー。
解散後、ロックバンド「 reading note 」のギタリストとして渋谷 CLUB QUATTRO などの様々なライブハウスを経験し、プレイヤーとして活躍。
現在は2人組ロックバンド「 tk2tk 」のギター担当としてアーティスト活動を続ける一方で、音楽制作やギターサポート、レコーディングなども行い、ギターを主軸にマルチに活動を行っている。
現在の仕事内容について
-現在の主なお仕事について教えて頂けますか?
楽曲制作、ギター講師、アーティスト活動、演奏サポート、レコーディングなどです。
-幅広く活動されているんですね。制作系のお仕事の受注はどのようにされているのでしょうか?
知り合いからの紹介や、バンド活動を通して知り合った関係の繋がりからが多いです。
-仕事の依頼が来はじめたきっかけはありましたか?
ギターのサポートや演奏の仕事は、専門時代の知り合いや、バンド活動を通して知り合った人から頼まれたりしていました。
DAW を絡めた制作の仕事でいうと、初めは手伝っているバンドのデモ作りを DAW でしていて、それを積み重ねていったら他の知り合いからもアレンジの依頼が来るようになりました。
そうしていくうちに、だんだん自分も成長して対応できる仕事も増えていって。その様子を見て「じゃあこういうのもできる?」と声をかけてもらったりして徐々に依頼の数が増えていきました。
-デモ作りのお手伝いから始まったんですね。現在の依頼内容はどのようなものが多いですか?
歌もののトラック制作が多いです。曲作りから行う場合もあれば、曲は既にあってそのアレンジを依頼される場合もあります。
アレンジの一つとしてギターも入れるので、ギター録音も含まれますね。ただ、今はギターのみの録音依頼というのは少なくて、他のアレンジも込みで依頼されることが多いです。
-案件によって内容が異なるんですね。遠藤さんの場合、受注後はどのような流れで制作されていますか?
制作の依頼で曲作りから行う場合は、提示されたリファレンス曲を聴いて、自分の場合は他にもリファレンスに似てる曲を探して聴いて、まずは曲のイメージを固めていきます。
イメージが固まったら、まず全て MIDI で打ち込んで大体ワンコーラスくらいまでを作ります。この時点で完成後のイメージができるようなところまでは仕上げて、依頼主に一旦共有して方向性の確認をしてもらいます。
曲のキーやテンポは途中で変えて欲しいと言われることもあるので、この2つが決まるまではギターやボーカルなどの録音系は入れないことが多いです。なので歌メロはこの段階だとボーカロイドに歌わせたりしますね。
とはいえ、本当に自分の中で曲のイメージががっちり固まっていて、歌詞もできていたら仮歌は入れたりするんで、場合にもよるんですが...。
依頼主からフィードバックが返ってきたら、それを元に修正してまた共有して...という感じです。
ギターの音作り
-ギターの録音について、詳しくお伺いしたいと思います。エレキギターの録音はどのようにされていますか?
エレキギターの録音は基本的にラインで録っています。
-エレキギターの音作りについて教えて頂きたいです。
音作りはプラグインの UAD Suhr PT100 Amplifier か、マルチエフェクターの LINE6HELIX でほぼ全て作っています。
UAD の方は癖がなくて、クリーンからハイゲイン系のサウンドまで幅広い音色が作れるので、使いやすくて気に入ってます。HELIX はライブでも使用しているので、曲と音色があっていたらこちらを使うことも多いです。HELIX もハイゲイン系のサウンドが欲しい時や、あとはエフェクターを実際に掛けて録る場合は HELIX にプリセットを作っているので、それを楽曲に合うように調整して使っています。
-音作りにおいて、実機は使用されていないですか?
ワウペダルとか、ボリュームペダル奏法を使用するときはペダルを使いますね。
あとは Strymon の BigSky や blueSky というリバーブは、自分的に実機でしか得られないサウンドだと感じているので、この音が欲しい時は実機を使います。
-そうなんですね。
エレキギターを録音してから、音の処理までの流れを教えて頂けますか?
まずは UAD Suhr PT100 Amplifier か LINE6HELIX で音作りをする。
クリーントーン、クランチサウンドだったらこの音という風にプリセットを作っているのでそこから選んで、さらに楽曲に合わせて少し調整をします。
録音するときはおまじないくらいの気持ちでコンプをうっすら掛けて録って、録った音を EQ で LOW やボーカルの帯域に邪魔になるようないらない帯域をカットして、それをまたコンプに掛けます。
コンプは Waves SSL E-Channel 、Universal Audio1176 Classic Limiter collection の 1176NL、Teletronix LA-2A Classic Leveling Amplifier あたりをかけることが多いですね。
コンプの特性的にここでまた余分な音も持ち上げられちゃうので、これにまた EQ を掛けます。
その後は必要に応じて、プラグインでトレモロ、リバーブ、コーラス、ディレイなどをかける...という感じですね。
-アコギの場合はどのように録音されているのでしょうか?
アコギはマイクで録ります。
-アコギを録る際に使用しているマイクを教えて下さい。
NEUMANN TML102、Universal Audio Sphere DLX のどちらかを使用しています。
Universal Audio Sphere DLX は色んなマイクのモデリングが入っているので、ボーカル録りもできるし、アコギを録ることもできるから幅広く使えるんですよね。
-アコギの録音には何か通してますか?
UAD の Neve 1073 Preamp & EQ を使っています。
これが一番好きな音になるんですよね。
音に張りが出て、輪郭がはっきりするし、EQ も設定できるから、音作りがしやすいです。
-遠藤さんはギター歴約24年ほどとお伺いしましたが、ギターは何本くらいお持ちですか?
<エレキ>
- Suhr Standard 1997年製
- HUKUROW-GUITARS SCARD ストラトキャスター
- Sago JM タイプのカスタムオーダー
- Gibson ES-335 1973年製
- Gibson ES-175 1968年製
- Fano Guitars GF6 335
- Shimo Guitars ストラトキャスター
<アコギ>
- YAMAHA LS36
計8本ですね。
他にもあるっちゃあるんですけど、今現役で使用しているのはこれらです。
-8本も!ギターはどのように使い分けているんでしょうか?
単純にその音楽に合うか合わないかだけですね。
基本宅録なので、ラインで通す場合に限ってはギター一本一本の違いというよりは、シングルピックアップか、ハムバックピックアップかどうかの方が録音では影響が大きいなと思っています。
なのでそこをまずは考えて、あと状況に応じて弾きやすさなどを考えます。
-ピックアップでまずは合う合わないを考えるんですね。
ギタリストとしてギターのフレーズ作成は重要な工程だと思います。遠藤さんの場合はどのようにして作成されていますか?
ひたすらループして何回も録ってみる。本当に悩む時は100回くらい弾いている時もあります。
たくさん弾いていると、これは合う、合わないっていう風にだんだんフレーズが自分の中で整理されてくるんですよね。
あとは、自転車漕いでる時とか、寝る前とか、起きた時にふと「このフレーズあの曲に使えるかも」って思って iPhone に録ってあとで実際に入れてみたりしますね。
案件の受け方
-続いて、具体的な制作の案件についてお伺いしたいと思います。お仕事の依頼はどのくらいの頻度で来ますか?
平均して月3〜4件くらいです。
月によって件数は変動するので、忙しさも月によって若干変わりますね。
-仕事受注時のスケジュールはどのように設定されていますか?
スケジュールは基本的に依頼者マターが多いです。
仕上げる作業時間は依頼内容などによって異なるので一概には言えないですが、早いと大体2〜3日あれば完パケできると思います。
-仕事受注時の費用はどのように設定されていますか?
自分で提示する場合は、今まで受けてきた仕事の相場や、依頼内容の手間などを考慮して計算しています。ですが、依頼者側から設定されることが多いですね。
正確な金額を言われることもありますが、大体これくらいという大雑把なものもありますし、納品した後に金額を知ることもあります。
まぁこれはいつも仕事をくれる人なので、そこは信頼している部分もありますが。
-なかには予算が合わない場合もあると思いますが、そのような場合はどのような対応をされていますか?
提示金額が著しく低い場合は、納得のいくものが作れないのでお断りしています。ただ、予算が合わない場合でもできる限りのことはしたいと思うので、何かしらの提案はするようにしています。
仕事との向き合い方
-定期的に仕事受注されていますが、仕事受注のために何かされていることはありますか?
仕事を依頼してくれる人とのコミュニケーションに気をつけています。
制作の案件は急ぎの案件も多いので、特に連絡は早く返す事を心がけています。
-依頼先の返信が早いというのは、依頼主にとって嬉しいことですね。
遠藤さんが受注時に大切にしていることはありますか?
相手が何を望んでこちらに依頼しているか、どんな完成形を望んでいるかを想像して、それを超えていけるように頑張ることです。
そのためにも、リファレンス曲は必ず聞きます。ここをしっかりしていないと、アレンジも迷子になっちゃうので。
オンライン・対面での仕事について
-制作の作業はいつもどこで行っていますか?
基本的に知り合いの制作環境を借りて行っています。レコーディングもそこでやる事が多いです。
自宅でも全くやらない訳ではないですが、やるとしてもアイディア出しとかくらいですね。防音などの面もありますし、外に出た方が気持ちが切り替わるので。
-レコーディングもそこで行うということは、やはりオンラインでの納品が多いのでしょうか?
今はほぼオンラインです。
スタジオに行って録音ということもたまにありますが、最終的な納品はオンラインですね。
-オンライン上でのやりとりで感じているメリット、デメリットはありますか?
メリットは、何回でも色んなアイディアを試せて試行錯誤できるところだと思います。
スタジオで録る場合は、予約した時間内にできるアプローチをしなきゃいけないし、終わらせる必要があります。なので、その場で良いフレーズが浮かんでも、時間が限られているからそう簡単に試せないですし、後日もっとこうした方が良いんじゃないかっていうアイディアが浮かんでも追加できないんです。
反対に言えば時間があるからこそ悩んでしまう部分もあるんですけど、最近はある程度の時間を自分で設定してやることで、その辺の課題はなくせるようにしています。
デメリットと感じている部分は、個人作業になるので自分の判断に迷った時に相談できる人がいないことです。スタジオでやっている時は、みんなの意見で最終的な判断を下すので、そういう迷いは少なかったです。
もちろんオンラインの場合もデータを送って意見を聞くことはできるけど、いちいち聞くとなるとリアルタイムじゃないから非効率ですしね。
-確かにそうですね。
依頼者とミュージシャンがマッチングできるオンライン完結型クラウドソーシングサービス「 ONLIVE Studio 」のサービスについてどう思われますか?
画期的なサービスだと思います。
依頼主からすると自分たちで録る場合、スタジオ代、エンジニア代、演奏代、その他交通費などもかかるので高くつきますし、そもそもお願いできる知り合いがいない人もいますからね。あとは知り合いがいても必ずスケジュールが空いてるとも限りませんし、急な案件の場合にも役立つと思います。
実はうちのバンドも昔、海外の似たようなサービスを利用して海外のドラマーに録音を依頼したことがあるんです。
良かったんですけど、やりとりが英語になるので言語の壁とか、時差がネックになって。ただでさえイメージの共有って日本語でも難しいのでね。なのでそれが日本版であるというのは良いなと思いました。
プレイスタイルの源流・今注目しているもの
-演奏スタイルで、特に影響を受けているアーティストはいますか?
一番大きな起点で、今のスタイルの源流となっているのは、Eric Clapton(エリッククラプトン)です。
高校生の時に LIVE IN HYDE PARK(※1)のビデオを見て、すっごい音がかっこよくて。それからブルースロックってこんなにかっこいいんだ、と思うようになりました。
他にも色んなアーティストから影響を受けていますが、Eric Clapton をきっかけに色んなブルースのアーティストを聞くようになったので。
(※1)LIVE IN HYDE PARK 。1996年に行われたエリッククラプトンの野外ライブを収録した DVD。イギリスのロンドンにあるハイド・パークにて行われた。
-たくさんギターを持っていますが、今欲しいギターはありますか?
欲しいギターもあるんですけど、どちらかというと今は良いウクレレが欲しいです。この間、知り合いが良いウクレレを買って、僕も弾かせてもらったのですが、音に感動しました。
あとは曲のアクセントとして入れるためにスティールギター、マンドリン、バンジョーみたいな民族楽器も欲しいですね。
-最後に、今注目しているものを教えて下さい。
やっぱりギターが好きなのでビンテージギターにずっと注目しています。
ギター以外だと、プラグインですね。自分にとっては操作のしやすさも大事なので、操作面、音の良し悪しを含めて、自分に合う良いプラグインはないか探しています。それで言ったらセール情報も結構見ますね。
最近買ったのは、EVENTIDE ( イーブンタイド ) の Blackhole というリバーブです。
これは、透明感があるけどツヤっぽいリバーブになるんですよね。歌とか、キーボードにも使います。使いやすくてお気に入りです。
以上、今回はギタリストの遠藤タカヒロさんにお話をお伺いしました。
インタビューを通して、仕事を受ける姿勢が印象的でした。
受注時に大切にしていることで「相手が何を望んでこちらに依頼しているか、どんな完成形を望んでいるかを想像して、それを超えていけるように頑張ることです」という言葉がありましたが、この考え方はとても大事なことですよね。
その他にも仕事を依頼してくれる人とのコミュニケーションに気をつける、連絡を早く返す、予算が合わない場合も何かしらの案を提示する...など。
細かい部分ではありますが、このような相手の立場になって考えて行うコミュニケーションや対応が、プロフェッショナルとして長く仕事を獲得していくための秘訣かもしれません。
東京出身の音楽クリエイター。 幼少期から音楽に触れ、高校時代ではボーカルを始める。その後弾き語りやバンドなど音楽活動を続けるうちに、自然の流れで楽曲制作をするように。 多様な音楽スタイルを聴くのが好きで、ジャンルレスな音楽感覚が強み。 現在は、ボーカル、DTM講師の傍ら音楽制作を行なっている。 今後、音楽制作やボーカルの依頼を増やし、さらに活動の幅を広げることを目指している。