#かわいいだけじゃだめですか?バズり中!作曲家・早川博隆氏のこれまでの歩み、作曲上達のヒント

AKB48 や乃木坂46 をはじめとしたアイドルソング、さらには学園アイドルマスターなどのゲーム、ブルー・ロックの舞台音楽など、幅広く楽曲を提供している早川博隆氏。 2018年には AKB48『Teacher Teacher』の作編曲を手掛け、レコード大賞優秀作品を受賞。最近では CUTIE STREET に提供した楽曲『かわいいだけじゃだめですか?』が SNS を中心にバイラルヒットになるなど、ますます注目を集めている作編曲家、プロデューサーです。 今回は、音楽シーンの最前線で活躍を続ける早川博隆さんに、これまでの歩みをお伺いしました。

Nami
2024-12-048min read

音楽遍歴について「J-POP、ダンスミュージックとオーケストラなどの原流的な音楽の両方が耳に入っていた」

-作曲を始める以前に楽器経験などはありましたか?

3歳の頃からクラシックピアノをずっとやっていました。絶対音感があるんですけど、そういった音感や、コードの流れはそこで培われたと思います。

あるアニメのオープニングを「ここのメロディーとコードって合ってないよなぁ」って思いながら聞いたりもしていました。でも、自分が昔作った曲を今聞き返すとそう感じたりもするんですけどね(笑)。

他にも中高でトロンボーンを吹いていたのですこし吹けるのと、あとドラムもすこしだけ叩けます。

-幼少期はどんな音楽を聴いていましたか?

母親がクラシックを家でよく流していて、それを自然と聴いていました。ジャズも時々流れていましたね。

父親は J-POP が好きだったので、邦楽とクラシックの両方が耳に入ってきていて、それが良かったなって思ってます。

中高時代はラジオを聞いたり、近くの GEO(ゲオ)でレンタル CD をたくさん借りて、MD にとったり。常に何か良い曲がないか漁っていました。

-大学ではジャズの勉強もされていたのだとか?

僕は法政大学出身なんですけど、湯川新先生というジャズに詳しい先生がいたんです。湯川先生はジャズの本を出してたりもしている方で「Louis Armstrong は最高だ!」、「Chick Corea ならこの曲だ!」とか、これを聞きなさい!って CD を渡されて聞いていました。

大学時代はそうやって湯川先生の元でジャズをふわふわ勉強していたんですが、誰かのトランペットのリフだったり、今でもフレーズを耳が覚えているっていうことが結構あります。

ジャズに関係するお仕事もするようになって、「この曲、あの時の曲だ!」みたいなことがよくあります。

作曲をはじめたきっかけ「結果的に何でも繋がる」

-作曲はいつから始めましたか?

高校あたりからです。

中学校の時に SOL2 っていう Cubase の前身(?)になる音楽ソフトを買ってもらったんですが、初めの頃は使い方も全然分からず、開くのも1ヶ月に一回程度でした。

当時は今みたいに調べたりしても記事などでてこなかったですし、 周りに SOL2 を使ってる人もいおらず、やばいやつと思われると思って誰にも言えなかったです(笑)。

ちゃんと触るようになったきっかけは、高校生の時に、幼馴染がラップをやっていたんですが「HIPHOP のトラック作ってよ」って頼んできたことです。

そうしてその流れでトラックメイクをはじめて、大学時代も HIPHOP やR&B 関係のトラック制作や、同人音楽みたいなものも作るようになって作曲を学びました。

-当時はどういった人に影響をされて曲作りをしていたんですか?

BACHLOGIC(バックロジック)さんや Jeff Miyahara (ジェフ・ミヤハラ)さん 、HIRO(ヒロ)さん...などの、最強的な大先輩にあたる、音楽業界を先導していた方達です。

そういう方々の作られる曲はすごく参考にしてよく聞いていました。

-いつ頃から作曲家を目指そうと思ったんですか?

きっかけはスカウトですね。

大学生の頃に幼馴染のラッパーのライブのイベントで知り合って、今も一緒に曲を作っている Shogo っていうトップライナー(作曲家)がいるんですけど、当時から一緒に曲を作ったりしてて、ある日その Shogo から「作曲の事務所から声かけられたんだけど...」て聞かされて、話を聞いたら EXILE 系の仕事とかもしている事務所だったんです。それで事務所(作家事務所)と契約することになりました。

最初はそれまでやっていた自分のやりたい音楽も同時並行で作ってたんですけど、だんだん余裕がなくなってきて。さらに就職を視野に入れ始めた時に、やることを絞らなきゃダメだなって思い始めたんです。

そこで、楽曲提供をするようなプロの作曲家になりたいと思って、そこから全てをそっちへ向けて注ぐようになりました。

-スカウトをきっかけに方向性も定めていったんですね。

そうですね。絞って取り組んだから成功したっていうのはあると思います。

今みたいに、色んな曲をプロデュースして、オーケストラやバンドなどの生楽器の演奏も録って、ただ作るだけじゃない広い知識を持てたのは、この道を選んだおかげかなと思います。

-それでは大学卒業後から今までずっと作曲家として活動されている?

はじめのころは、事務所とは月に数曲作るという契約でした。なので、最初の3年くらいは会社員をしながら、曲を作っていましたね。

結果的に一回就職して良かったなって思います。

会社に勤めた経験があるからこそ、社会人としての基礎的な部分を学べましたし、喋り方も矯正してもらったりして、全部が今活かせていると思います。

音楽とは全然関係ない業種だったんですが、結果的に何でも将来に繋がるんだなって思いました。

-これまでターニングポイントとなる出来事はありましたか?

2018年はターニングポイントの年だったかなと思います。会社でトラブルがあったんですけど、それを機に意識が大きく変わりました。このトラブルがなかったらダメになっていたかもしれないです。

同年に AKB48『Teacher Teacher』という楽曲でレコード大賞をいただいたんですが、その一件があって自粛していたので、宣伝などはしなかったんです。

でも、見てくれている人はちゃんといて。そこから少しずつプロデュースの依頼が来たり、業績的にはちゃんと伸びてきて、 仕事も増えてっていう流れになりました。

あと、ターニングポイントというのかわかりませんが、20代後半くらいから変化を感じますね。

-その変化はなんでしょうか?

より一層音楽に集中できたというか、スイッチが入ったというか。言葉にするのは難しいんですが、曲作り、編曲、プロデュースなどの自分自身のスキルがぐんと向上した気がします。

若いころは勢いでやっていた部分もあったと思うんですが、20代後半からでも学ぶ姿勢があれば結構変わるんだなぁと思いました。

作曲上達のコツ「適当に聞いてるのと、何か盗めないかと思って聞いてるのでは、1と100 ぐらい違う」

-作曲を上達させるためにできることは?

これ、僕的には心理になっちゃうんですけど、音楽って適当に聞いてるのと何か盗めないかと思って聞いてるのでは、1と100 ぐらい違うと思うんです。

売れている曲って、やっぱり認めている人がたくさんいて広がっているわけだから、絶対に盗めるポイントってあるはずなんですよ。

そういうことを考えながら聴くと、変わると思います。

-早川さんはどんなポイントを聴いているのでしょうか。

たとえば、曲の構成って意外とみんな意識して聞かないんですよね。

今流行ってる曲はイントロが超短い。 とはいえ、こっちのけんとさんの曲とか聴いてみるとちゃんとイントロがあったりするんで、必ずしも短くする必要はないんだな、とか。

あとはコード進行も結構チェックしてます。

こないだはデパートでトイレ入っていたら 館内の BGM が流れてきて、そのコードがおしゃれだったんで急いで出て録音しました(笑)。

2小節でずっと転調するループの曲で、なんじゃこりゃ!みたいな。

最近はおしゃれなコード使わない方がいい曲になることもあるなぁって思ったりもするし...みたいな感じで常に考えながら曲を聴いていますね。

分析しようっていうメンタルでいればそれだけ伸びると思います。

今後の目標「ずっと作曲していたい」

-早川さんの今後の目標は?

自分は年をとってもかっこいい曲を作れたらなぁって思います。

昔、大先輩が、ずっと続けていると作曲に飽きてくると話していたことがあるんです。なので、現場とかに来てる若い方やアーティストさんにはいつも勉強させてもらってます。例えばヤリラフィーって言葉を教えてもらったり(笑)。

他にも、話の流れで出たおすすめの曲だったり、本だったり、そういうのはなるべくチェックするようにしています。

こないだはオススメされた「地面師たち(不動産詐欺の話)」を見た後に、不動産関係の方とお話しして一瞬でもその話ができたりして、色んなところにアンテナを貼っていると、意外なところで繋がったりするんですよね。

歳を取るごとに、何か新しいものを取り入れるのって、億劫になるのは分かるんですけど、そこで一歩踏み出すことが大事だと思います。

-最近ハマっている曲はありますか?

EDMだと「Chime」さんという方が作った Colour Bass っていう新しいジャンルがあるんですけど、そういった曲はよく聞いています。J-Pop だとMrs. GREEN APPLE さんはよく聞いてますね。HipHop だと「高所恐怖症」の SEEDA さんがかっこよくてたまに聞いたりします。

それらの曲をはじめとして、勉強とかアイディアの参考という意味でも、自分のいいなと思った曲プレイリストと、参考になりそうな曲プレイリストも作っているんですよ。

-そのプレイリストの内容を知りたいです。

一番最新は Tim Henson (ティム・ヘンソン)が入っていますね。

他にはドビュッシーのパスピエ(ベルガマスク組曲第4 )、あと、TikTok でバズってる曲ってやっぱいいですよね。DXTEEN の『Snowin'』とか、サビが良すぎますよね....。

別にゲーム音楽のプレイリストも作ってるんですよ。

-「Undertale」とかいいですよね!

「Undertale」いいですよね!『Megalovania』とか。この曲、途中でメタルとかプログレっぽくなるんですよね。

ゲーム音楽って2種類あると思っていて、完全にBGM としての役割の曲と、反対に曲を推していくパターン。後者は「まもるクンは呪われてしまった!」とかですかね。

それでいうとカービィはどっちも備えているんですよ。安藤浩和さんっていう、もう神みたいな作曲家がいて...。本当に尊敬してます。

ラスボスの曲のテーマが、道中にもパラパラと伏線のように入っていて、最後のラスボスのところでそのテーマがバーンってきて超エモい!みたいな。

-これだけでひとコーナーできそうですね。

是非またやりましょう!

-今後の早川さんの個人的に挑戦したい案件などはありますか?

ゲームのお仕事はやっていきたいですね。ポケモン関係の仕事などは目標の一つです。それと、オリンピックなどの国の行事のお仕事もやってみたいですね。

他には、僕の強みとしてかなり幅広いジャンルを押さえているので、CM など得意そうだなぁと思ったりしています。


まとめ

幼少期から多くの楽曲に触れてきた早川氏。

「適当に聞くのと、何か盗めないかと思って聞くのでは、1と100ぐらい違う」という言葉が印象的でした。

アニメのオープニングテーマを聴いているときや BGM が流れる瞬間、そして好きな曲の要素を分析し、作曲家ならではの視点で語る姿勢に、早川氏のプロフェッショナルな一面がうかがえました。

現在、幅広いジャンルに対応できる背景には、これまで曲に対して深い分析力と意味を見出しながら向き合ってきた過去があるからなのでしょう。

早川博隆 | ONLIVE Studio
株式会社Rebrast代表取締役StellaPhizz音楽プロデューサー

早川博隆氏プロフィール

作詞家、作編曲家、エンジニアを抱え、楽曲制作を行う作家事務所・株式会社Rebrastの代表取締役。
名前: 早川博隆
所属:株式会社Rebrast
出身:千葉県松戸市
出身校:法政大学
趣味:音楽鑑賞・つけ麺・学マス・ポケモンカードなど
生年月日:9/9
Hirotaka Hayakawa Works
https://rebrast.com/creators/hayakawahirotaka/

Nami
Written by
Nami

東京出身の音楽クリエイター。 幼少期から音楽に触れ、高校時代ではボーカルを始める。その後弾き語りやバンドなど音楽活動を続けるうちに、自然の流れで楽曲制作をするように。 多様な音楽スタイルを聴くのが好きで、ジャンルレスな音楽感覚が強み。 現在は、ボーカル、DTM講師の傍ら音楽制作を行なっている。 今後、音楽制作やボーカルの依頼を増やし、さらに活動の幅を広げることを目指している。

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