

Studio A-tone東麻布 スタジオ紹介〜日差しが差し込む心地の良いプロユーススタジオ
Studio A-tone は、約30年にわたり様々な作品づくりを支えてきた音楽スタジオです。 東京・東麻布の「Studio A-tone東麻布」、四谷の「Sound Valley」の2つのスタジオがあり、10-FEET や古市コータローといったアーティストの作品から、劇伴(ドラマ・アニメ)、CM やゲーム音楽のナレーション収録まで、幅広い制作に対応しています。 今回は、現役エンジニアである武岡博紀さんと営業担当の宮崎千尋さんに Studio A-tone東麻布をご紹介していただきました。 プロユースのレコーディングスタジオに興味がある方、必見の内容です!

各スタジオについて「1フロア1スタジオ設計」

-Studio 東麻布について教えてください
(以下、A Studio= Ast、B Studio= Bst、C Studio= Cst)
宮崎さん:
Studio A-tone東麻布には Ast、Bst、Cst の3つのスタジオがあります。
2階は Ast 、3階は Bst、4階は Cst とそれぞれフロアが分かれていて、各階にブース、コントロールルーム、ロビー、トイレ等がついている1フロア1スタジオ設計になっています。
武岡さん:
Studio A-tone東麻布は、社長、運営、技術部で話して一緒に設計していったスタジオです。
基本的な作りはどの階も同じですが、階ごとにコンセプトを変えて作りました。
-それぞれのお部屋の特徴をお伺いしても良いでしょうか?
武岡さん:
Ast は、小さい部屋でも響きがあるということをコンセプトに作りました。
壁には木を採用し、音を反射しつつも吸音してくれるので木ならではの暖かみのある響きになっています。バイオリンやフルートなど、響きが必要な楽器を個別でレコーディングするのに最適です。
歌ものや音声収録も可能ですが、歌の場合はそのままですと、少し響きすぎてしまうので、録る場合は毛布をかけて吸音して音を調整してます。


Bst は、壁に本物の石を採用しています。石の場合は木とは違い、音を全部跳ね返してくるので、Ast よりもさらに響きが強いです。響きとの相性が良いオーケストラ楽器系が特に合うと思います。
ロビーにはディスプレイがあり、クライアントさんが待機中にここでチェックできるので、歌や楽器だけではなく、ナレーションなどの声の収録や MA でご利用いただくことも多いですね。


Cst の壁は畳になっていて、音響的に一番響きが落ち着いています。
畳を採用しようとなったのは、社長のアイディアです。音響を考慮して畳にそれぞれ角度をつけています。適度に残響が残るので1番音のバランスが良い部屋ですね。


宮崎さん:
音的にも過ごしやすさ的にも、歌もの系は Cst で録ることが一番多いです。
あと、Cst はトイレが一番広くて。アーティストの中にはレコーディング風景を撮影される方もいらっしゃるので、メイク直しなどに使っていただくことも可能です。ゆくゆくは Ast も Bst も、トイレを Cst と同じように改装しようって話していますね。
-設計にも携わっていらっしゃったとのことですが、設計に関するポイントはありますか?
武岡さん:
うちはビルが建つ段階からスタジオの設計に関わることができたので、かなり自由がきいたんです。そういった部分がポイントですかね。
例えば、音響的に縦の広さを確保したり、天井を高くしたり。また壁や床を平行にしない多角形の設計にして、天井にも角度をつけたりしてます。
あと、スタジオは地下に作られることが多く多窓はありませんが、うちは全室に窓があるんです。夜になると東京タワーが見えてすごくきれいで、アーティストさんによっては照明を落として、窓の外の灯りだけでレコーディングされる方もいます。こういうのって、あとから手を加えるのが難しい部分で、設計から関われたからこその強みだと思います。

宮崎さん:
演者の気分が上がる「非日常感」もポイントだと思っています。
例えば、こういうつなぎ目(以下写真)とかは音というよりはおしゃれで入れていて。言われないと気付かないような、プラスアルファな部分が、演者のテンションを上げて良いテイクに繋がっている部分もあると思います。

-実際に使用しているエンジニア目線で、Studio A-toneのおすすめのポイントはありますか?
武岡さん:
ワンフロア1スタジオなので、他の人の目線が気にならないところです。自分も作業しやすいなって、いつも感じています。
昨今は顔出ししない歌手の方たちが増えましたが、そういう方達はなるべく関係者以外と接触しないようとても気を使われていらっしゃるんですよ。そういった面で、誰とも合わずにこのスタジオだけで完結するっていうのは、売りだと思います。
関係者しか入らないスペースだと、ロビーでオンライン会議や、マネージャーと打ち合わせなどもできるので、そういった面でもご活用していただけます。
-スタジオの機材について教えてください
武岡さん:
長期のプログラムではエンジニアが日を跨いで別の部屋で作業することもあるので、3部屋すべて同じ機材で揃えています。
基本的な機材は一通り揃っているので、外部のエンジニアさんでも手ぶらで高いクオリティの録音が可能です。もちろん持ち込みも OK ですし、追加料金が必要な機材は特にありません。
ただ、マイクは早い者勝ちなので、ご希望がある場合は早めにご予約いただければと思います。

Studio A-tone さんの依頼について
-スタジオ専属のエンジニアさんがいるのが音楽スタジオならではだと思います。スタジオを予約した時の依頼はどのようなパターンが考えられますか?
武岡さん:
依頼は大きく分けて、スタジオのみの予約、スタジオ+エンジニア、エンジニア単体の3パターンあります。
エンジニア単体への依頼では、例えばクライアントが他のスタジオを押さえていて、そこにエンジニアだけを派遣するケースですね。
最近では、録音済みのデータを使ってボーカルエディットやミックスだけをご依頼いただく「オンラインミックス」のご依頼もありました。
-Studio A-tone さんならではでできることはありますか?
武岡さん:
音楽制作だけでなく、ナレーション収録にも対応していることです。音楽スタジオとしては珍しいと思います。うちは型みたいなのが出来上がっているので、新規のお客様にもご依頼していただきやすいと思います。
ゲーム案件の場合だと、ナレーションと音楽のレコーディング両方できたりもするので、その点もおすすめですね。
宮崎さん:
素人の人でもプロの人でも、うちは事務所とか一切関係なくリリースできる体制は整っていて。
なので配信や CD制作のお手伝いをしていたり、またライブハウスも運営しているので、音楽に関して幅広く相談ベースで乗ることができます。そういったものもお気軽にご相談いただければと思います。
忘れられないエピソードとモチベーション
-これまで Studio A-tone で働いていて、忘れられないエピソードはありますか?
武岡さん:
前に、バンドメンバーとスタジオだけを押さえて、アーティストの方がその場のインスピレーションで曲を作る、という企画でスタジオを使ってもらったことがありました。
春・夏・秋・冬などといったテーマに沿って、即興でコード進行や展開、それぞれのミュージシャンがフレーズを決めていってそれを録っていったんです。
深夜0時から朝7時までで8曲を録音し、1曲あたり1時間もかからないスピード感だったのでバタバタでしたが、曲が生まれる瞬間に立ち会えるのは面白い体験でしたね。
宮崎さん:
以前、開始時間だけ決めて、「終わりはスタジオの空き次第で」というご予約がありました。その日は昼の12時に入って、作業が終わったのは翌日の夜...。ほぼ1日半スタジオにこもりきりだったんですよ(笑)。
たまたま翌日もスタジオが空いていたからこそ対応できたんですが、珍しいケースでしたね。CD が一番売れてた全盛期の頃は、普通だったのかもしれないですが、最近は働き方改革や予算などの関係で、このような使われ方が減ってきているんですよ。社長も「久々にこういうの見た」と言っていました。

-スタジオでの勤務はハードなこともあるかと思いますが、お二人のモチベーションはどこにあるんでしょう?
宮崎さん:
未知のことへのワクワク感が大きいです。
前に海外アーティストの Lil Nas X が観光のついでに「曲できるかもしれないから」みたいな感じでうちのスタジオを押さえてくれたんです。でも、いつ来るかが明確に分からないんですよ。私が連絡を実際にとっていた人に聞いても「自分に言われてもわからない、全部本人次第だから」っていう感じで、みんな板挟み状態で。
なのでいつ来ても対応できるように3時間に1回は連絡を確認して...っていう状態が1ヶ月くらい続きました。もう赤ちゃんの夜泣き対応みたいな感覚ですよね(笑)。
Lil Nas X の Instagram をチェックして「あ、富士山いるから今日は来ないな」って思ったり。結局その日の夜に「今から行く」って連絡が来て、うちのスタジオを利用してくれました。
スタジオの使い方も面白くて、ビンテージのシンセを5人同時に弾くから円で囲ってセッティングしたり、ドアを開けっ放しで皆ノリノリで録音していたりして。
色々振り回されはしたんですけど、本当に楽しかったですね。「これがクリエイティブなんだな」って感じました。
武岡さん:
僕もエンジニアとして、やっぱりそういう現場に立ち会えるのが面白いですね。
あと、アーティストのクリエイティブって、例えば歌だとして、ディレクションひとつで大きく変わるんですよ。それで声の出し方が変わると、コンプレッサーのかかり方も変わったりして。そういう細かい変化に常に気を配るのが、エンジニアの醍醐味だと思っています。
レコーディング中に「今の演奏すごい良かった!」みんなで盛り上がる瞬間があったり、そこからさらに粘ることもあったり。それでいいテイクに立ち会えたらやっぱり気持ちが高まります。そんなやり取りがあるのも魅力のひとつですね。
スタジオを利用したいと考えている方へ
-スタジオを利用する場合、予算は大体いくらくらい必要なのでしょうか?
宮崎さん:
一般的な目安としては、スタジオ代が1時間あたり16,000円、エンジニア費が8,000円程度で、仮に1曲の1レコーディングからミックスまでが10時間かかったとしたらだいたい24万円かかる計算です。ただ、サウンドオンライブ価格をご用意する予定です。
スタジオ料金の難しいところが、利用目的や内容によって費用が大きく変動するんです。1曲の依頼となっても、企業案件か個人利用か、レコーディングのみかミックス・配信まで含むのか、ボーカルの人数や編集の工数などによって必要な時間も異なるため、明確な料金を事前に提示するのが難しいんですよね。
エンジニアにミックスのみ依頼する場合でも、やっぱりスタジオを使う必要があるので、スタジオ料も一緒にかかって来るんですよ。
なので、予算を抑えたい場合は、納期を設けないという代わりに、エンジニアがスタジオの空き時間に作業を行うことでコストを軽減する方法もあります。
武岡さん:
あと、「アマチュアバンド応援隊」という企画があって、新人エンジニアがバンドをプロデュースしながらレコーディング経験を積める場を提供しています。先輩がサポートしつつ、バンド側も通常より安くスタジオを経験していただけます。
-プロユースのレコーディングスタジオを利用する点でのメリットは何だと思いますか。
武岡さん:
「その気になる」ことでしょうか。
先ほど話に出たバンド応援隊企画で来てくれたバンドの皆さんは、こうしたプロ仕様のスタジオを使うのが初めてだったようで、かなりテンションが上がっていました。
その高揚感が演奏にも表れていて、スタッフとしてもそういう変化を間近で見られるのは、とても面白いなと感じています。
宮崎さん:
そうですね。
以前、レーベルの A&R の方が Sound Valley を予約してくれたのですが、演者は新人だったんです。普通は新人にそんな予算はつかないんですが、あえて良い環境で録ることでその子たちのプロ意識を高める先行投資として予約されていました。
やっぱりプロユースのスタジオを使うことで、「自分もミュージシャンになったんだ!」っていう想いで気合が入ることで演奏が良くなったり、新しいものが生まれたりすることはあると思います。


-これからStudio A-tone さんを利用したいと考えている方達にメッセージはありますか
武岡さん:
ぜひプロユースのスタジオを経験してみてほしいなと思います。
敷居が高く感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、こういうものを作りたいっていうビジョンがあるのであれば、どんな方でも気負わずご相談ください。アマチュアでもプロでもなんでも。
宮崎さん:
うちはプロユースのレコーディングスタジオですけど、別に誰が使ってもいいところでもあって。スタッフは全員、音楽が好きで、休憩時間もずっと音楽の話をしているような人たちばかりです。社長もエンジニアも営業も、「面白いことをやりたい」「いい作品を作りたい」という熱意のある方には、なんとか形にしてあげたいねっていうスタンスなんです。
なので、そういう方はぜひ気軽にご相談いただけたら嬉しいです。

まとめ
今回は、Studio A-tone「Studio A-tone東麻布」についてご紹介しました。
日差しが差し込む明るいスタジオは珍しく、非日常感を味わいながらも落ち着いて制作に臨める心地よい空間が印象的でした。
インタビューでは「バンド応援隊企画」など、予算がなくても情熱を持つアーティストへのアプローチや、海外アーティスト対応のエピソードを楽しそうに語る姿から「一緒にいいものを生み出したい」という純粋なクリエイティブへの気持ちが強く伝わってきました。
「いい作品を作りたい」という情熱をお持ちの方は、ぜひ一度、Studio A-tone にご相談されてみてはいかがでしょうか。
なお、Studio A-tone は、今回ご紹介した「Studio A-tone東麻布」のほか、四谷には広めのレコーディングスタジオ「Sound Valley」も展開されています(※2024年のゲリラ豪雨により浸水被害を受け、現在リニューアルオープンに向けて復旧作業中です)。
また、西麻布にはライブハウス「新世界」も運営されており、音楽活動の相談も含めて幅広くサポートしてくださいます。気になった方は、まずは一度お問い合わせをしてみてはいかがでしょうか。
Studio A-tone
WEB:https://onlive.studio/user/StudioAtone
Studio 東麻布
住所:〒106-0044 東京都港区東麻布1-8-3 エスビルディング
Soundvalley
住所:〒160-0003 東京都新宿区四谷本塩町15-12 カーサ四谷 羽毛田ビル B1,B2
宮崎千尋氏プロフィール
所属:Studio A-tone
出身:福岡
趣味:読書
生年月日1984年3月16日
武岡博紀氏プロフィール
所属:Studio A-tone
出身:東京
出身校:日本工学院八王子専門学校レコーディングクリエイター科
趣味:PC、ドライブ
生年月日:1991年12月12日
https://onlive.studio/user/Takeoka

東京出身の音楽クリエイター。 幼少期から音楽に触れ、高校時代ではボーカルを始める。その後弾き語りやバンドなど音楽活動を続けるうちに、自然の流れで楽曲制作をするように。 多様な音楽スタイルを聴くのが好きで、ジャンルレスな音楽感覚が強み。 現在は、ボーカル、DTM講師の傍ら音楽制作を行なっている。 今後、音楽制作やボーカルの依頼を増やし、さらに活動の幅を広げることを目指している。