地声と裏声の違い〜ヘッドボイスやファルセット、チェストボイスって何?

歌声は、時にその発声方法の違いや、音色の違いから様々な区分がされています。 歌の経験がない人でも「地声」や「裏声」という言葉を聞いたことがある方は多いでしょう。 歌の世界では、みなさんがイメージする歌の中で使われる地声は「チェストボイス」、裏声は「ヘッドボイス」や「ファルセット」と呼ばれることが多いです。 この記事では、地声と裏声の違いから、「チェストボイス」「ヘッドボイス」「ファルセット」について、現役ボーカルコーチの筆者が解説していきます。

Nami
2025-03-054min read

地声と裏声の違い

一般的には、地声=普段の話し声、裏声=高い声、という認識があるかもしれません。
しかし、地声と裏声は単に音の高さだけではなく、発声時に主に働く筋肉にも違いがあります。

地声を出すときは「甲状披裂筋」、裏声を出すときは「輪状甲状筋」という筋肉がそれぞれメインで使われているのです。

地声と裏声の確認方法

自分で地声と裏声の違いを確認する方法の一つとして、「あ〜」と声を出しながら、低い音から徐々に音程を上げてみましょう。あるポイントで声がひっくり返るように変化する瞬間があるはずです。

これは、その音域から上は地声のままでは発声しづらくなり、裏声のフォームへと切り替わるために起こる現象です。

裏声

ヘッドボイス(頭声)

ヘッドボイスとは、裏声の中でも響きがあり、芯のある声のことを指します。

ファルセット

ポップスにおいてのファルセットは、男女関係なく息が多く含まれた裏声に対して使われることが多いです。また、声楽においては、裏声全般をファルセット、ヘッドボイスは実声の高音域そのものや、頭の方に抜けるような声色に対して使われることが多い印象です。

Sam Smith - I'm Not The Only One (Official Music Video)|SAM SMITH

ポップス ファルセット例(サビ)

オペラ ファルセット例(4:10頃)

ファルセットは、元々はラテン語で「偽り」を意味する falso に由来しており、 元々は男性の裏声に対して使用されていた言葉とされています。そのため、ジャンルによっては男性のカウンター・テナーが歌う高い声に限定されて使われる場合があります。

それって本当に地声?

ボーカルコーチをしているなかで、過去に「高い声を地声で出したいです!」というご相談をいただいたことがあります。

その人のイメージする声を詳しくヒアリングすると、それはヘッドボイスでした。

ヘッドボイスは地声の発声のまま高い音域を出している訳ではないのですが、ご本人のイメージ的にはそのように捕らえてしまっており、実際にその方の発声を聞くと、地声のまま無理やり高い音域を歌ってしまっていたのです。

(地声を高い音域でも出していると思われがちな発声はヘッドボイスだけでなく、ミックスボイスやベルティング発声というものもありますが、これらはまた別の機会にご紹介します。 )

無理に地声で高音を出そうとすると「張り上げ声」になりやすく、喉に大きな負担がかかります。その結果、聴き手にとっても苦しそうと感じる音になってしまいます。無理に地声で出そうとするのは避けましょう。

地声

チェストボイス

チェストボイスは定義が曖昧な用語の一つです。

チェストボイスを普段会話する声と同じと表現するひともいれば、反対に普段の声とは全く異なると説明する人もいます。

また、特定の声質のことを指したり、声区(※1)として使用されることもあります。

他にも、名前の通り「胸に響かせるような声」と説明される場合が多く、実際に低音域を発声すると胸骨に響きます。胸に手を当てながら、音程をどんどん上げていくと、低い音は振動し、高い音は全く振動しないことが分かるでしょう。

いずれにしても、チェストボイスは地声領域においての発声を表し、多くの場合はその発声が整えられ、響きが豊かな声を指して使用されることが多いです。

(※1)音色や生物学的に、発声を分けたもの

ややこしい発声の世界

ここまで、さまざまな発声に関する用語が登場しました。

裏声と地声、ヘッドボイス、ファルセット、チェストボイス……

裏声と地声は「発声の状態」を指しますが、それ以外の用語は「音色の特徴」が混ざっているため、少し複雑に感じるかもしれません。

楽器であれば内部の構造を見て音の出る仕組みを確認できますが、ボーカリストは「体」が楽器のため、発声のメカニズムを直接目で見ることはできません。

さらに医学で解明されていることもあれば、まだ研究中の分野もあります。特に昔は今よりもさらに不明確なことが多かったため、より一層感覚に基づいて用語が使われてきたのではないでしょうか。

今でも人によって用語の使い方にばらつきがあり、使用する人によって若干説明の仕方が違ったりもします。そのため、本記事では「〜のように使用されることが多いです」や「〜として使用されることもあります」などの書き方をさせていただきました。


まとめ

今回は、裏声と地声、またヘッドボイスとファルセット、チェストボイスについてご紹介しました。

発声に関する用語を知ることで「裏声にも種類があるんだ!」といった気づきが得られ、より深く発声を理解できるようになります。また、レッスンを受ける際にも共通の用語を知っていると、指導がスムーズに進みやすくなるのではないでしょうか。

ヘッドボイス以外にも「ミックスボイス」「ホイッスルボイス」「エッジボイス」「ウィスパーボイス」....などなど、様々な発声方法があります。これらはまた別の機会にご紹介します!

また、発声方法を知っていく上での注意点としてお伝えしておきたいのは、用語に囚われすぎないことです。

人間の声には言葉では表しきれない豊かな表情があるので、用語にこだわりすぎる必要はありません。

一番大切なのは、自分の声に意識を向け、どのように発声をしたらどんな声色になるのか? そのとき喉や体はどんな状態なのか?を感じることです。

用語はその足がかりとして知る程度が良いでしょう。

Nami
Written by
Nami

東京出身の音楽クリエイター。 幼少期から音楽に触れ、高校時代ではボーカルを始める。その後弾き語りやバンドなど音楽活動を続けるうちに、自然の流れで楽曲制作をするように。 多様な音楽スタイルを聴くのが好きで、ジャンルレスな音楽感覚が強み。 現在は、ボーカル、DTM講師の傍ら音楽制作を行なっている。 今後、音楽制作やボーカルの依頼を増やし、さらに活動の幅を広げることを目指している。

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