
サイドチェーンとは、あるサウンドに対してのエフェクトのかかり具合を、別のサウンドの音量(入力信号)をトリガーとしてコントロールできるという手法です
。
多くの場合、エフェクトとしてコンプレッサーが使用されます。
ダッキングについて
サイドチェーンを応用して得られる効果・手法として「ダッキング」というものがあります。
ダッキングとは、2つのオーディオの片方を目立たせたい場合に、もう片方のオーディオの音量を一時的に抑えるというものです。
このダッキングという言葉は、ボクシング用語からきています。
相手の攻撃がきたら身を屈めてかわす様子のことをダッキングと言いますが、これと同じように、ある特定の音が入力されたら、もう片方の音量が引っ込む...といった具合です。
実際には「サイドチェーン」というワードと「ダッキング」は同じような意味合いで使われています。そのため、サイドチェーン=ダッキングと思っても良いでしょう。
サイドチェーン例
ベースとキック
キックはドラムの中でも低域が多く含まれているため、ベースの低音がキックの迫力を減らしてしまっている場合があります。
そこで、キックの入力レベルに応じて、ベースにかかるコンプレッション具合を大きくすることで、ベースの音量が下がり、キックが強調されて聞こえるようになります。
ポンピング
ポンピングとは、コンプレッサーを強くかけ、そのコンプが外れた瞬間に急激に元の音に戻ることによって発生するサウンドのうねりです。
EDM では、このポンピングを頻繁に活用して楽曲にグルーブを与えています。
ラジオDJ
ラジオDJ が話し出すと、後のBGM が小さくなり、DJ の喋りが聞こえやすくなりますよね。これも、サイドチェーンを応用したものです。
サイドチェーンのかけ方
この章では、キックの音量をトリガーに任意のトラックへインサートする方法をお伝えします。
Logic Pro の場合
1.サイドチェーンをかけたいトラックに、コンプレッサーをインサートします。
2.右上にある「サイドチェーン」の設定をキックトラックに設定します。
3.コンプレッサーで設定した内容がドラムの音量に応じてかかるようになります。

サイドチェーンプラグイン
サイドチェーンは今回ご紹介した方法でかけることができますが、サイドチェーンの効果を得られるプラグインもあります。
Kickstart2
有名DJ である Nicky Romero が監修をしたプラグインです。
Nicky Romero はオランダ出身の DJ です。2014年に流行した SEKAI NO OWARI「Dragon Night」にプロデューサーとして参加した人物でもあります。
Kickstart は、インサートするだけで簡単にサイドチェーンを得られます。
値段も16ドル(日本円で2,500円程度)と比較的お手頃です。
まずは簡単にサイドチェーンを試してみたいという方におすすめのプラグインです。
VolumeShaper 5
Cableguys というメーカーが販売するプラグインです。
Kickstart2 と同様に、手軽にサイドチェーンをかけることができます。
このプラグインの最大の特徴は、低、中、高音域それぞれ3つの帯域に分けて処理をできるマルチバンド機能があることでしょう。つまり、帯域別にそれぞれ任意のサイドチェーンをかけることができます。
より細かい処理もしていきたいとういう方におすすめのプラグインです。
29ドル(日本円で4,420円程度)と手が出しやすい金額です。
https://www.cableguys.com/volumeshaper
サイドチェーンの歴史
サイドチェーンが誕生したのは1930年代です。
Douglas Shearer(ダグラス・シアラー) という音響エンジニアが、俳優が話す台詞の歯擦音を弱める方法はないか?と考えました。歯擦音とは、歯の裏に舌を当てて発音する主に「s」を使った子音です。この子音は高音域の成分を多く含むため、音量が大きいと耳障りな印象になります。
そこで、彼はコンプレッサーと EQ を使って、歯擦音が入った時にだけコンプレッサーがかかるようにしました。
これがサイドチェーンの始まりです。音楽業界よりも先に、映画業界で誕生していたんですね。
まとめ
以上、今回はサイドチェーンについてご紹介しました。
DAW を持っていたら簡単にかけられるので、みなさんも是非試してみてはいかがでしょうか。
サイドチェーンは特に EDM といったジャンルで、ベースやシンセ、ノイズなど、様々な楽器にかけられます。
サイドチェーンの掛け方によっても得られるグルーヴ感が変わってきますので、様々なプリセットを試したり、コンプの設定を変えたりして、その変化を感じてみると、より幅広い表現ができるでしょう。

東京出身の音楽クリエイター。 幼少期から音楽に触れ、高校時代ではボーカルを始める。その後弾き語りやバンドなど音楽活動を続けるうちに、自然の流れで楽曲制作をするように。 多様な音楽スタイルを聴くのが好きで、ジャンルレスな音楽感覚が強み。 現在は、ボーカル、DTM講師の傍ら音楽制作を行なっている。 今後、音楽制作やボーカルの依頼を増やし、さらに活動の幅を広げることを目指している。







