
サイドチェインとは?
サイドチェインとは、あるサウンドに対してのエフェクトのかかり具合を、別のサウンドの音量(入力信号)をトリガーとしてコントロールできるという手法です。
多くの場合、コンプレッサーが使用されます。
ダッキングについて
サイドチェインを応用して得られる効果・手法として「ダッキング」があります。
ダッキングとは、ある楽器の音を目立たせたい場合に、もう片方のオーディオの音量を一時的に抑える効果のことです。
このダッキングという言葉は、ボクシング用語が由来となっています。
相手の攻撃がきたら身を屈めてかわす様子のことで、これと同じように、ある特定の入力音をトリガーにして、もう片方の音量が引っ込む...といった具合です。
サイドチェインとの違いは、サイドチェインは仕組みで、ダッキングはサイドチェインを使った時に得られる効果のことを言います。
実際には「サイドチェイン」というワードと「ダッキング」は同じような意味合いで使われているので、サイドチェイン=ダッキングと思っても良いでしょう。
サイドチェインの誕生
サイドチェインが誕生したのは1930年代とのこと。
Douglas Shearer(ダグラス・シアラー)という映画の音響エンジニアが、俳優が話す台詞の歯擦音を弱める方法はないか?と考えました。歯擦音とは、歯の裏に舌を当てて発音する主に「s」を使った子音です。この子音は高音域の成分を多く含むため、音量が大きいと耳障りな印象になります。
そこで、彼はコンプレッサーと EQ を使って、歯擦音が入った時にだけコンプレッサーがかかるようにしました。
これがサイドチェインの始まりです。音楽業界よりも先に、映画業界で誕生していたんですね。
サイドチェインの活用例
ベースとキック
キックとベースはどちらも低音域を多く含んでいるため、ベースの低音にキックが埋もれてしまうことがあります。キックが弱いと、リズムが際立ってきません。
そこで、キックをトリガーにして、ベースの音をコンプレッションすることで、ベースの音量が下がり、キックを聞こえるようにすることが可能です。
ポンピング
ポンピングとは、ダッキングを行った際に発生するサウンドのうねりです。
EDM では、シンセ・ベースやパッドなどの音色をサイドチェインをかけて、ポンピング効果を活用することで楽曲にグルーブを与え、思わず体を動かしたくなるようなサウンドに仕上げています。
ラジオDJ のトーク
ラジオDJ が話し出すと、うしろの BGM が小さくなり、DJ の喋り声が聞こえやすくなる場面は、イメージしやすいと思います。これは、ディレクターがフェーダー操作している場合も考えられますが、サイドチェインが活用されているケースもあるのです。
サイドチェインのかけ方
この章では、キックの入力信号をトリガーに、任意のトラックへのサイドチェイン設定を解説していきましょう。
Logic Pro の場合
1.サイドチェインをかけたいトラックに、Compressor のプラグインをインサートします。
2.右上に「サイドチェーン」と表記された枠があるので、クリックして「キック」のトラックを選択(事前にキックのトラックを作っておく必要があります)。
3.キックの入力信号に応じて、設定した値のコンプがかかります。

サイドチェイン・プラグイン
サイドチェインは上記で紹介した方法でかけることができますが、サイドチェインの効果を得られるプラグインもあります。
Kickstart2
有名DJ兼、音楽プロデューサー である Nicky Romero が監修し、Cableguys というドイツのメーカーが開発したプラグインです。
Nicky Romero は 2014年にヒットした SEKAI NO OWARI「Dragon Night」にプロデューサーとして参加した人物でもあります。
Kickstart2 は、インサートするだけで簡単にサイドチェイン効果を得られるプラグインです。
値段も16ドル(日本円で2,500円程度)と比較的お手頃なので、手が出しやすいでしょう。
簡単にサイドチェインを試してみたいという方におすすめのプラグインです。
VolumeShaper 5
Cableguys が販売するオーディオ・プラグインです。
Kickstart2 と同様に、手軽にサイドチェインをかけることができます。
このプラグインの最大の特徴は、低、中、高音域それぞれ3つの帯域に分けて処理をできるマルチバンド機能があることでしょう。つまり、帯域別にそれぞれ任意のサイドチェインをかけることができます。
より細かい処理をしたい方におすすめのプラグイン。
記事寄稿時の価格は、29ドル(日本円で4,420円程度)となっています。
まとめ
以上、今回はサイドチェインについて紹介しました。
サイドチェインの仕組みを利用してダッキングでキックを強調したり、ポンピング効果で楽曲にグルーブを与えることで、思わず体を動かしたくなるサウンドを作ることが可能です。
特に フェスで演奏される BIG ROOM などの EDM では、ほぼ必ずと言っていいほど楽曲に取り入れられています。
サイドチェインを使うことで、曲全体のビートのパンチが強くなったり、よりノリの良い楽曲にすることができるでしょう。
みなさんもぜひ、自身の楽曲制作に取り入れてみてください。

東京出身の音楽クリエイター。 幼少期から音楽に触れ、高校時代ではボーカルを始める。その後弾き語りやバンドなど音楽活動を続けるうちに、自然の流れで楽曲制作をするように。 多様な音楽スタイルを聴くのが好きで、ジャンルレスな音楽感覚が強み。 現在は、ボーカル、DTM講師の傍ら音楽制作を行なっている。 今後、音楽制作やボーカルの依頼を増やし、さらに活動の幅を広げることを目指している。







