スムーズな録音方法
一曲を通して歌うのも大切ですが、一定の間隔に区切って録音する方法もあります。
これらの方法は、プロのレコーディングでも取り入れられている方法です。場合に応じてこの録音方法も取り入れるとよいでしょう。
セクションごとに分けて録音
セクションごとに分けて録るという方法です。
例えば、A メロ、B メロ、サビでそれぞれ繰り返しテイクを録る、といった具合です。
このようにセクションごとに分けて録音することで、その箇所に集中して取り組めるので、歌の精度を高めることが期待できるでしょう。
他にも、息継ぎが間に合わなそうなところや噛んでしまいそうなところ、ギリギリ出るか出ないかのハイトーンなど、歌う曲や自分の状況と合わせて区切ってもよいでしょう。
パンチイン
パンチインとは、特定の箇所のみ録音をし直し、テイクを差し替えるという方法です。
一箇所だけ歌詞を間違えてしまったり、歌い方が気に入らない...というときに有効です。
まずは録り直したいフレーズのみを録音し、録音し終わった後に編集で前後のオーディオ素材とつなぎ合わせます。
また、DAW によってはスムーズにパンチインができる機能もあります。
メイン Vo 以外の録音をしてみよう
リリースされた楽曲をよく聞いてみると、実は主旋律以外にもボーカルが入っていることがあります。
そのようなトラックを重ねることで、音像や音の厚みが増し、プロクオリティに近いサウンド感を実現することができます。
ダブル・トラッキング
ダブル・トラックキングとは、同じフレーズを2回以上演奏して録音し、トラックを重ねることです。
なぜわざわざ同じフレーズを重ねるの?と疑問に思うかもしれませんが、ユニゾンを思い浮かべると、イメージしやすいかもしれません。
音は同じフレーズを歌っても、全く同じに歌うことはできません。
そのため、テイクによって音程の揺らぎ方や含む周波数が少しずつ違い、それらを重ねることによって音に立体感が生まれるのです。
反対に言えば、全く同じ波形を重ねてもこのような結果は得られず、単純に音量が上がるだけになります。
この手法は、1950年代に活躍しロックの礎を築いたことで知られる Buddy Holly(バディ・ホリー)が考案したとされています。
以下は、ダブル・トラッキングを使っている曲の例です。
Aメロ、サビ部分
サビ部分
ハモリ
ハモリは、主旋律のメロディーに対して、ハーモニーになるように歌うことです。
特によくあるハモリは3度や5度で歌うことです。
3度は上でハモる場合は「上ハモ」、下でハモる場合は「下ハモ」と呼びます。
例えば、主旋律が「ド」の場合、上ハモは「ミ」になり、下ハモは「ラ」となります。
音程が迷子になりにくいよう、ハモリ用のガイドボーカルを作っておくのがおすすめです。
サビ部分
オクターブユニゾン
ユニゾンとは、同じ旋律をオクターブで歌うことです。
ハモリはイメージしやすいと思いますが、上下のオクターブをユニゾンで入れるだけでも、リッチな印象になります。
サビ部分
レイヤー
ここまでご紹介した、ダブルトラッキングやハモリ、オクターブユニゾンを普通の声で歌うのが定番ですが、作品によってあえて息多めのウィスパーボイスで歌ったり、声色を変えて歌うことで、印象が変わります。
作品に合わせて試しに録音してみるのも良いでしょう。
サビ部分
以下の動画では、アーティストでありながらプロデューサーとしても活躍するCharie puth(チャーリー・プース)がボーカルトラッキングを作成する様子を見ることができます。
オクターブの同じ音程でも声色を時には喉を下げてうたったり、鼻にかけたり、ウィスパーボイスにしたりなど変化させて歌ったりしています。参考にしてみてください。
番外編:プラグインを活用してみよう
最近では様々なプラグインが出ており、今回ご紹介した効果を再現できるものもあります。
たとえば、ダブラーと呼ばれるエフェクトは、ダブルトラッキングの効果を再現したものです。有名なプラグインだと Sound Toys の Microshift などがあります。
また、Celemony Melodyne や Waves Harmony などのプラグインを使用すれば、1本の歌声からハモリトラックも生成することが可能です。
メインボーカルしかレコーディングできなかった場合は、このようなものを利用してもよいでしょう。
このような工程は「ボーカルミックス」とも考えることができます。
ミックスとは、レコーディンングで素材を録った後に、それらを綺麗に処理したり、バランスを整えたり、時には面白いエフェクトをつけたりする工程のことです。
ボーカルミックスの工程を知りたい方はこちらの記事もおすすめです。
まとめ
以上、今回は歌ってみたで実践できる、ボーカルレコーディングの録り方についてご紹介しました。
日頃の練習はもちろん大切ですが、その上でレコーディングの録り方を工夫したり、新たなトラックを追加することで、あなたの作品のクオリティはさらに良くなるでしょう。
是非今回ご紹介した内容を、あなたのレコーディングに取り入れてみてください。
また、必要に応じてプロに依頼をすることも、クオリティを上げるための選択肢です。
例えば、ONLIVE Studio では、様々なシンガーが登録されており、ご自身に合ったシンガーに依頼することができます。
メインボーカル以外のトラックをご自身の声で作成しても良いですが、別の人の声を取り入れてみるとまた違った雰囲気を取り入れることもできます。
他にも、レコーディングスタジオも登録されているので、レコーディングをプロに依頼することで、プロの現場ではどのようにレコーディングを進めているのかを知れるだけでなく、歌に集中して取り組めることもメリットです。
また、番外編でご紹介したような内容を行うには、DTM やプラグインの知識が必要になります。これを機会に勉強してみるのも良いと思いますが、他の人に依頼したい場合は歌ってみた専門のミックス師であったり、エンジニアに依頼して作成してもらうことも可能です。
こちらも合わせてご活用ください。
東京出身の音楽クリエイター。 幼少期から音楽に触れ、高校時代ではボーカルを始める。その後弾き語りやバンドなど音楽活動を続けるうちに、自然の流れで楽曲制作をするように。 多様な音楽スタイルを聴くのが好きで、ジャンルレスな音楽感覚が強み。 現在は、ボーカル、DTM講師の傍ら音楽制作を行なっている。 今後、音楽制作やボーカルの依頼を増やし、さらに活動の幅を広げることを目指している。