仮歌体験談〜実際に受注してみた感想

こちらの記事の読者のなかには「仮歌を受注したい」という方がいるかと思います。とはいえ「仮歌ってどのような流れで行うの?」「そもそも仮歌って?」とお考えの方も多いはず。今回は、実際に私が仮歌した体験を、みなさんにシェアしたいと思います!

Nami
2023-10-274min read

仮歌とは?

仮歌とは、文字通り「仮」で歌を入れることです。
仮歌を入れる曲は、主に楽曲提供をする曲や、楽曲コンペに提出する曲です。
楽曲提供や楽曲コンペの場合は、実際に歌を歌うアーティストが作曲者とは異なるため、本来は歌なしのデータをクライアントに渡すことになります。そこで仮歌を入れることによって、実際に歌が入った時の曲をクライアントによりイメージしてもらいやすくなるという意図があります。

ちなみに楽曲コンペとは、テーマやコンセプトに沿った楽曲を複数の作曲家から集め、その中から実際にリリースする曲や使用する曲を採用するといった、楽曲のコンペティションです。
採用された楽曲の使用先は様々ですが、自身で楽曲制作を行わないアイドルやアーティストに提供する曲や、CM 曲などがあります。
今回は楽曲コンペに提出するための曲に仮歌を入れました。

依頼内容

今回の依頼は、ありがたいことに知り合いのミュージシャンからご依頼をいただきました。そのため、ONLIVE Studio での納品プロセスとは少々異なりますのでご注意を。

依頼内容は「とある声優さんの新曲を目的としたコンペに出す楽曲に仮歌を入れて欲しい」とのこと。レコーディングするセクションは、ワンコーラス+ブリッジです。
今回は当日納品で承りました。

また、レコーディング場所は知り合いの方の制作環境にて。対面でボーカルディレクションを受けながらレコーディングを行いました。

ボーカルディレクションとは、レコーディングの際にボーカリストへ歌唱の指導や表現方法の提案などを行い、レコーディングを目的のクオリティに仕上げるためにディレクションすることです。
楽曲のコンセプトに合った歌い方や、良いパフォーマンスを出してもらうために、ディレクションをする人の提案を挟みながらレコーディングが進んでいきます。

共有素材

今回は当日納品だったので、レコーディングをする日の夕方頃に、以下の素材を共有して頂きました。(レコーディングは夜から。)

  • 仮仮歌の入った音源(仮歌のためにさらに仮で入れた歌)
  • インストのみの音源
  • 歌詞カード
  • リファレンス曲 

今回リファレンスでいただいたのは、asmi というアーティストの『 memory 』という曲。この曲のイメージは歌い上げるより少しエモい感じで!とのこと。
また、楽曲は R&B をイメージされており、歌い方もそのようなトラックに合ったリズムを意識して欲しいということもご希望でした。

仮歌の流れ

いよいよ仮歌の REC を開始していきます。
まずは1〜2周さらっと通して歌って、オケやボーカルの返し、入力ゲインの調整を行いました。この時、必要に応じてボリュームや声の返しを上げ下げしてもらうように伝え、自分が歌いやすいように調節してもらいます。調整が終わったら、セクション毎に数テイクずつ録っていきます。
この時に、もっとここはこういう感じで!などボーカルディレクションが入ります。
最後に気になったところをもう一度録り直して終了です。

録り終えてみて

結論から言いますと、仮歌は自分のスキルの向上に繋がると感じました。
その理由は以下の通りです。

・普段歌わない歌を歌う

仮歌は普段は歌わないような歌を歌う機会にもなるので、勉強になりました。
ちなみに、今回私が苦戦したのはシャッフルのリズムです。
シャッフルのリズムは、三連符の真ん中の音符をとったリズムのこと。つまり少し跳ねたリズムで、ジャズや R&B、カントリーなどによく使われるリズムです。

多くの歌の場合、8部音符をそのまま演奏( よく Straight などと表現されます )しますが、シャッフルの場合は少し跳ねさせて演奏されます。

このリズムになかなか慣れず...レコーディングの途中で少し練習しました。(汗)
「私はこのタイプの曲にすぐに対応できないんだ!」ということが分かったので、次は対応できるように練習するなど、対策を打つことができます。

また、このような場面でも様々な曲や依頼主の要望に答えられるように、普段からジャンルを理解し、また様々な曲をカバーしてみると良いと思います。

・表現を考えるきっかけになる

既存曲をカバーをするのと違い、自分の考えで歌の表現をしていくため、もっとこうした方が良いのではないか、ということを考える意識にも繋がるでしょう。
また、対面の案件でディレクションをしてもらえる場合は、楽曲全体のことを考えている人から指示をもらえるので、音楽的な表現の勉強にもなります。

例えば、「語尾の表現はこんな感じで」、「ここのリズムはこんな感じで」、「ここはサビ前だから表現を変えて」...など、歌における音楽的な要素の指摘をもらえます。

これは私自身への戒めでもありますが、歌が上手くなりたいと思ったら=発声!となる方も多いかと思います。しかし、実際には発声は歌をうまく歌うための一つの要素にしか過ぎません。
そのため、このような経験はリズム、声色、ダイナミクス、滑舌など、様々な要素を見直すきっかけになります。

「もうちょっと切ない感じで」「ここは強い感じで!」というような指示もある場合があるため、そのような要望に答えられるよう、様々なアーティストの歌を聞いて、どのようなタイミングでどのような表現を施しているかを聞いて真似してみると良いでしょう。このように練習すれば、表現のストックに繋がります。

オンラインのみでの納品などといった、ボーカルディレクションなしで自分1人でレコーディングをする時も基本的には同じです。
どのように歌うかを考え、時には依頼主とやり取りをしてフィードバックをもらい修正をする場合もあるため、楽曲においてどのように表現していけば良いかを考えるきっかけになります。

まとめ

以上、今回は私の仮歌体験談でした!
仮歌を入れる流れのイメージを掴んで頂ければ嬉しいです。


依頼主はこの仮歌のオーディオデータをそのまま使用するわけではなく、基本的には録り終えた音源に修正を加えます。例えばピッチ、タイミングの修正、フェードイン・フェードアウトなどのオーディオ処理、リバーブなどのエフェクトをかけるなどです。
私が DTM を始めて間もない頃、知り合いの作曲家の方に「自分で歌入れできるのいいね」と言われたことを覚えています。
自分で曲を作っていたら「もっとこうしたい、こういう感じにしたい」という想いが出てきて、それを歌唱に活かすことができるでしょう。なので、作曲者側の気持ちも知っておくという意味でも、ボーカルの方達が曲作りにチャレンジしてみることはおすすめです。

Nami
Written by
Nami

東京出身の音楽クリエイター。 幼少期から音楽に触れ、高校時代ではボーカルを始める。その後弾き語りやバンドなど音楽活動を続けるうちに、自然の流れで楽曲制作をするように。 多様な音楽スタイルを聴くのが好きで、ジャンルレスな音楽感覚が強み。 現在は、ボーカル、DTM講師の傍ら音楽制作を行なっている。 今後、音楽制作やボーカルの依頼を増やし、さらに活動の幅を広げることを目指している。

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