
作曲家はどうやって収入を得ているのか?
若手クリエイターが知っておきたい“仕事の種類”と“お金の実情”〜作曲家になりたいと思った時、多くの人が最初にイメージするのは、アーティストへの楽曲提供かもしれません。 しかし実際の音楽業界では、作曲家の仕事はかなり幅広く、収入の形も案件によって大きく異なります。また、世間では“ヒット曲を出せば印税生活”といったイメージもありますが、実情としては、複数の仕事を組み合わせながら活動している作家が大半です。この記事では、これから作曲家を目指す方や、活動を始めたばかりの若手クリエイター向けに、作曲家の代表的な仕事の種類と、案件ごとの価格感・収入構造について、できるだけリアルに整理してみたいと思います。
作曲家の収入は“印税”だけではない

まず最初に知っておきたいのは、作曲家の収入は大きく分けて2種類あるということです。
① 一時的にもらう制作費
いわゆる“ギャラ”です。
- 作曲料
- 編曲料
- BGM制作費
- カラオケ制作費
- 譜面制作費
- ディレクション費
- 演奏費
など、案件ごとに支払われます。
② 継続的に入る著作権印税
こちらはいわゆる“権利収入”です。
- CD
- 配信
- カラオケ
- テレビ放送
- サブスク
- ライブ演奏
など、楽曲が使われるたびに発生する可能性があります。
ただし、印税は“ヒットしたら大きい”反面、実際にはすぐ大きな金額になるケースばかりではありません。特に新人時代は、まず制作費ベースで経験を積みながら、徐々に印税収入も増えていく流れが多いでしょう。
① コンペ参加(楽曲オーディション)

現在の J-POP業界では、もっとも一般的な入口の一つです。
レコード会社や音楽出版社、アーティスト事務所などが、新曲候補を募集するのですが、まずその情報を得るには、事務所に所属するか、個人的につながりを持たないと難しいでしょう。なので、まずチャレンジできる状況に身を置くというのが大事です。
コンペは厳密には“仕事”というより、オーディションに近い仕組みです。採用されなければ基本的に報酬はありません。
そのため、若手作家の多くは、楽曲を数十曲単位で提出しますが、実際の採用率はかなり低く、制作コストは自己負担という環境で戦っています。
採用後の収入は、関わる範囲によって増えていきます。
たとえば、
- 作曲印税
- 作詞印税
- 編曲料
- Recディレクション料
- 楽器演奏料
- 譜面制作料
などです。価格帯も、案件によって、そして上記の中の関わる範囲によってかなり幅があります。編曲料のみ5万円〜ということもありますし、レコーディング周りもすべて担当して数十万円、ということも。その場合は、かかる経費を差し引いた金額が実質のアレンジ料となるわけです。
ただし、コンペは採用されるまでは無収入の時間が長いため、精神的にも体力的にも消耗しやすい世界です。その一方で、ヒットにつながれば、その後の作家キャリアが大きく変わる可能性もあります。
② 歌モノの指名制作

コンペではなく、この作家に作ってほしいと直接依頼されるケースです。
作家としての実績や人脈ができると、こちらの割合が増えていきます。
内容としては、アーティストやアイドル、VTuber、アニメソングなどさまざまです。
収入構造はコンペ採用時とほぼ同じですが、指名案件はスケジュールが確定している上に、条件交渉がしやすいというメリットがあります。
また、制作体制がチーム化しているケースも多く、作詞家、作曲家、編曲家、エンジニアなどで分業されることも珍しくありません。
指名ではないですが、近年は SNS等で、楽曲制作依頼を募集している人も少なくありません。そういったところに応募することで、案件を獲得することも重要な動きになります。ただし、その際は条件面、権利面について、必ず最初に確認した上で、制作に取り掛かるようにしましょう。
③ 広告・企業PR系BGM制作

近年かなり増えているのが、広告・企業案件系の BGM制作です。
たとえば、
- CM
- Web広告
- YouTube広告
- 企業VP
- 展示会映像
- 商品PR映像
などで使われる音楽です。
こちらは“著作権印税型”というより、基本的には“制作費買取”が多い世界です。つまり、制作時にまとまったギャラを受け取り、後から印税は発生しないという契約も少なくありません。
依頼の流れとしては、CM音楽の制作会社に所属して担当するほか、案件ごとに外部の作家を指名で依頼するケースがあります。歌モノコンペのような方式はほぼありませんが、作家数名のプレゼンで決まることもあり、不採用となった場合でも、制作費を支払ってもらえることが多いです。
価格としては、こちらも案件規模によりますが、数万円から、数十万円とかなり差があります。納期が短い代わりに、比較的“仕事”として成立しやすいジャンルでもあります。
④ 劇伴(ドラマ・アニメ・映画)制作

作曲家の仕事の中でも、かなり専門性が高い分野です。いわゆる劇伴(げきばん)と呼ばれるもので、ドラマ、アニメ、映画、ゲームなどの BGMを制作します。
劇伴は、予算全体が先に提示されることが多いのが特徴です。
その中から、
- ミュージシャン費
- スタジオ費
- エンジニア費
- マスタリング費
- 自分のアレンジ料
などを配分します。つまり、単なる作曲だけでなく、“制作全体を回す能力”も必要になります。
劇伴の特徴は、
- 曲数が非常に多い
- 納期が厳しい
- 修正対応が多い
- チーム制作になりやすい
という点です。一方で、作品がヒットすれば長期的に印税が入る可能性もあります。
⑤ ライブ/イベント用BGM

ライブやイベントでは、意外と多くの BGM が使われています。
たとえば、
- 開演前SE
- 登場曲
- ダンスパート
- 映像演出用BGM
- 舞台転換音楽
などです。
特に近年は、2.5次元舞台やVTuberのライブ、アイドル・イベント、配信ライブなどの増加により、需要はかなり広がっています。
放流の形態も案件によってさまざまです。完全買取、使用範囲限定、印税契約の場合もあります。比較的短納期で動くことも多く、対応力が重要になります。
⑥ カラオケ/歌ってみた用オケ制作

こちらは比較的“職人的”な仕事です。古くから、通信カラオケ用にオケ制作をする仕事はありましたが、そちらは、基本的に midi による打ち込み制作でした。
しかし、近年の歌ってみた用、ライブ用カラオケの音源制作は、より原盤に忠実なリアルさを要求され、楽器も生演奏での録音で対応することもあります。
ですので、価格帯としては、数千円から数万円と幅があり、印税というより制作アルバイトに近い感覚で行っている人もいます。
ただし、
- DAWスキル
- 耳コピ能力
- ミックス能力
など、基礎力を鍛えるには非常に良い現場でもあり、若手時代の経験としては、かなり実践的です。
⑦ その他の仕事(譜面制作、講師業など)

音楽業界では、音楽一本で食べていると言っても、実際には複数の仕事を組み合わせている人がほとんどです。
たとえば、
- 譜面制作
- 専門学校講師
- 個人レッスン
- YouTube活動
- 機材レビュー
- サウンド販売
- 配信活動
なども、重要な収入源になります。特に近年は、SNS や YouTube によって自分で仕事を作る時代になっています。
昔のように、“レコード会社に入れば成功””事務所に所属すれば安定”という構造ではなくなっていますので、自分自身で収入を確保する動きをすることが、作家として、長く活動できる鍵になります。
若手作曲家が最初に持つべき視点

これから活動を始める人にとって大事なのは、最初から理想の仕事だけを狙いすぎないことです。
実際には、コンペを頑張りながら、BGM制作、譜面制作、制作サポート業務などを並行しながら、少しずつ実績と信頼を積み上げていくのが現実的でしょう。
そして、その中で自分の得意なジャンルの把握や、人脈の形成、制作のスピードや専門性が形成されていきます。
作曲家という仕事は、華やかに見える一方で、かなり地道な積み重ねの世界でもあります。しかし、だからこそ、継続した人が強い世界でもあります。
音楽で生きていくというと、特別な才能だけが必要に思えるかもしれません。 ですが実際には、納期を守る、修正にしっかり対応する、人と信頼関係を築く、継続して作り続ける、といった、“仕事としての力”が、長く活動するうえでは非常に重要です。
これから作曲家を目指す方にとって、この記事が少しでも現実的な道筋を考えるヒントになれば幸いです。

株式会社Core Creative代表。株式会社リットーミュージックで、キーボード・マガジン編集部、サウンド&レコーディング・マガジン編集部にて編集業務を歴任。2018年に音楽プロダクションへ転職。2021年、楽曲制作をメインに、多方面で業務を行う。2022年、事業拡大のため株式会社Core Creativeを設立。現在は東放学園音響専門学校の講師なども務め、さらなる事業拡大のため邁進中。







