楽曲リリースをする前に考えたいこと

近年は配信サービスの普及により、誰でも手軽に楽曲をリリースできるようになりました。しかし、作品を公開すること自体はゴールではありません。“なぜリリースするのか?”“誰に届けたいのか?”といった目的が曖昧なままでは、思うような成果につながらないことも少なくありません。収益を得たいのか、ファンを増やしたいのか、あるいは作家活動や仕事獲得のための実績作りなのか。目的によって、取るべき戦略やリリースの意味は大きく変わります。今回は、これから楽曲をリリースする方に向けて、活動の方向性を考えるうえで役立つ視点をご紹介します。

Yoshihiko Kawai
Yoshihiko Kawai
(更新: )5min read

リリースはゴールではなくスタート

多くのアーティストが陥りやすいのが、“曲が完成したからリリースする”という考え方です。
もちろん作品を発表すること自体は素晴らしいことですが、リリースした瞬間に活動が終わってしまっては意味がありません。

実際には、

  • 誰に届けるのか
  • どのように知ってもらうのか
  • その先に何を得たいのか

を考えることが重要です。

例えば飲食店を開業したとして、“お店を作ったから終わり”ではありません。むしろ開店してからが、お客様との接点づくりの始まりです。音楽も同じです。

Spotify や Apple Music に楽曲が並んだだけで自然に再生される時代ではありません。リリース後に何をするかまで含めて計画することで、初めて作品が生きてくるのです。

“ターゲット”を明確にする

リリース戦略を考える上で最も重要なのがターゲット設定です。“誰に向けて音楽を作っている?”意外とこの質問に即答できるアーティストは多くありません。

みんなに聴いてほしいという気持ちは自然ですが、実際には誰に向けて作るかを絞った方が届きやすくなります。

例えば、

  • 10代のボカロ・リスナー
  • 20〜30代のシティポップ好き
  • アニソン・ファン
  • バンド・サウンド好き
  • 癒やし系インストを求める人

など、年齢や性別、エリア等、ターゲットによって聴く場所も情報収集の方法も異なります。

TikTok で音楽を探す人もいれば、YouTube や Spotify のプレイリストから新しい音楽を見つける人もいます。

ターゲットが明確になると、

  • ジャケット・デザイン
  • SNS運用
  • MV制作
  • リリース・タイミング

まで、自然と方向性が決まってきます。音楽そのものだけでなく、“誰に届けたいのか”を考えることがリリースの第一歩です。

リリースの目的は何か?

次に考えたいのが、音楽活動を行う目的です。実はここが曖昧なまま活動しているケースは少なくありません。リリースの目的は人によって全く異なります。

1:お金を稼ぐため

音楽を仕事にしたい人にとって、リリースは収益化の入口になります。しかし、配信収入だけで生活できるアーティストはごく一部です。

そのため、

  • ライブ収益
  • グッズ販売
  • ファンクラブ
  • 楽曲提供
  • レッスン
  • 制作受託

などを組み合わせたビジネス・モデルを考える必要があります。この場合のリリースは、直接利益を生むだけでなく、自分の価値を証明する営業資料としての役割も持ちます。

2:名声や認知度を高めるため

まずは多くの人に知ってもらいたいという目的の人もいるでしょう。その場合は、楽曲単体の売上よりも、

  • SNS で話題になるか
  • プレイリストに入るか
  • メディアに取り上げられるか

などが重要になります。このタイプの活動では、リリース頻度や継続的な発信が大きな意味を持ちます。1曲の完成度を追求することも大切ですが、“忘れられない頻度で発信し続けること”も同じくらい重要です。

3:趣味や自己表現のため

趣味として音楽活動を行う人もいます。この場合は収益や再生回数が必ずしも成功指標ではありません。自分の作品を形にすることや、仲間と共有することが目的であれば、それは十分価値のある活動です。むしろ他人と比較し過ぎることで、本来の楽しさを失ってしまうケースもあります。

趣味であれば、“何万回再生されなければ失敗”という考え方をする必要はありません。自分自身が満足できる作品を世に残すことも、立派なリリースの目的です。

リリースは“宣伝ツール”になる

近年は、アーティスト活動そのものよりも、別の仕事につなげるためにリリースを行うケースが増えていると感じます。

例えば、

  • 作曲家
  • 作詞家
  • 編曲家
  • トラックメイカー
  • ボカロP
  • エンジニア

などが、リリースから自分の本業につなげるということ。この場合、配信収入そのものは大きな目的ではありません。むしろ、“この人に依頼したい”と思ってもらうための実績作りが目的になります。

実際に音楽業界では、“どんな曲を書けるのか分からない人”よりも、“すでに作品が公開されている人”の方が圧倒的に仕事を受けやすくなります。

リリース作品は名刺代わりになります。

営業資料として考えるなら、

  • 得意ジャンルを明確にする
  • クオリティを高める
  • 継続的に発表する

ことが重要になります。

数字だけを追わない

リリース後は再生回数やフォロワー数が気になるものです。もちろん数字は重要です。しかし、それだけで成功・失敗を判断するのは危険です。

例えば、1万回再生されたけれど仕事につながらない人もいれば、100回再生しかされなくても、その作品をきっかけに企業案件を獲得する人もいます。

また、“フォロワーが10人増えた” “ライブに来てくれた” “制作依頼が来た”という成果は、単純な再生回数では測れません。

数字はあくまで指標の一つです。自分の目的に対して成果が出ているかを確認することが大切です。

リリース前に考えたい質問

最後に、リリース前に自分へ問いかけてほしい項目をまとめます。

誰に聴いてほしいのか?

ターゲットは明確になっていますか。

何のためにリリースするのか?

収益、認知、趣味、営業活動など目的は定まっていますか。

リリース後に何をするのか?

SNS やライブ、動画投稿などの計画はありますか。

この作品は自分の将来につながるのか?

目指す方向性と一致していますか。


まとめ

音楽配信が身近になった現在、リリースそのもののハードルは大きく下がりました。しかし、だからこそ“なぜリリースするのか”という視点が以前にも増して重要になっています。

ターゲットは誰なのか。何を目的として活動するのか。収益化を目指すのか、認知度向上なのか、それとも作家活動や音楽制作の仕事につなげるためなのか。その答えによって、取るべき戦略は大きく変わります。

大切なのは、他人の成功パターンをまねすることではなく、自分自身の目的に合った活動を選ぶことです。楽曲リリースはゴールではありません。むしろ、その作品を通じてどんな未来を作りたいのかを考えることこそが、本当の意味でのスタートなのではないでしょうか。

Yoshihiko Kawai
Written by
Yoshihiko Kawai

株式会社Core Creative代表。株式会社リットーミュージックで、キーボード・マガジン編集部、サウンド&レコーディング・マガジン編集部にて編集業務を歴任。2018年に音楽プロダクションへ転職。2021年、楽曲制作をメインに、多方面で業務を行う。2022年、事業拡大のため株式会社Core Creativeを設立。現在は東放学園音響専門学校の講師なども務め、さらなる事業拡大のため邁進中。

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