新しい表現と出会おう!音と映像の祭典『ニッパチ祭』とは?

大阪・梅田のイベント・スペース VS. にて、12月6日(土)に開催される、音と映像が交錯する特別な祭『ニッパチ祭』。学生時代からクラブ・イベントを共に企画してきた仲間であり、現在はプロデューサー、パフォーマー、DJ、イベント・オーガナイザーとして活動する Masashi さん、Aya さん、Itti さんが運営する “ニッパチ製作所” が主催するイベントです。オーディオビジュアル・パフォーマンスやワークショップを通じて、表現の魅力や面白さに触れることができる本祭について、そして個人でも音楽活動を続ける3人が考える“音楽と仕事”について、お話を伺いました。

宇宙まお
2025-12-0311min read

「無駄な時間」を楽しみ尽くす

-『ニッパチ祭』は盛りだくさんの内容で楽しそうですが、全体のコンセプトを教えてください。

Aya:簡単に言うと「表現する」って楽しいよね、面白いよねというのをみんなで一緒に体感しよう、というものです。

小さい頃は、絵を描いたり歌ったり、創造的な表現を日常的にやっていて、そこに何の抵抗もなかったですよね。

でも大人になると「うまい人しかやっちゃいけない」とか「見せて恥ずかしくないものをしなきゃいけない」などと考えて、表現することのハードルが上がってしまう。

なので、もっと子供の頃みたいに純粋に表現を楽しめる場を作れたらいいなと思っています。

また、私たち3人は学生時代からずっと一緒にイベントを企画して開催してきたのですが、演者と観客の間に大きな隔たりがあることを感じていました。

その垣根をなくして「表現って面白い、自分もやってみたい」と思ってもらえるような場にしたいという想いがあります。

『ニッパチ祭』主催メンバーの Aya さん(右)とIttiさん(左)。Aya さんは当日、 DJ としてパフォーマンス予定!

-どういった経緯で『ニッパチ祭』を開催することになったのですか?

Aya:『ニッパチ祭』の開催自体は2回目なのですが、このイベントの構想が始まったのが、コロナが流行っていた時期になります。世間からはエンターテインメントが不要不急だと言われて、衣食住に関わる部分しか重要視されなかった。

そこで考えたのが「最高に無駄な時間を過ごす」というテーマです。

「無駄な時間」というのはあえて皮肉として言ってるんですけど、私たちは、アートや表現、カルチャーを楽しむことこそ人生の目的じゃないかと考えていて、だったら効率や生産性、結果などではなく、創作をするプロセスも含めて楽しみ尽くすことをしようと。それが私たちが言う最高に無駄な時間です。

子供の頃、近所のお祭りに行くときって最高にワクワク感がありましたよね。

お祭りに行ったからといって何か特別な成果があるとは限らないけれど、楽しむことが目的の場は絶対に人生に必要だと思い、『ニッパチ祭』をスタートさせました。

アーティストが長く活動できる仕組みを

-表現を受け取るだけでなく、応援する仕組みもあると聞きました。

Aya:はい。今回の『ニッパチ祭』での新しい取り組みは、表現者がずっと表現を続けていくための仕組み作りです。

私も20歳から DJ を15年続けてきたのですが、その中で、自分が憧れてきた人たちが辞めていってしまうことを多く目にしてきたんですよね。やっぱり表現活動で生きていける人は本当にひと握りだし、経済的な事情で続けられなくなってしまう人もたくさんいる。

それはすごくさみしいなと思っているので、今回 “Cheer for Artist Program” という仕組みを取り入れています。

Cheer for Artist Programとは、入場の際に購入したチケットについてくる Cheer Tickets というものを、当日のパフォーマンスを見て、感動した・刺激を受けたアーティストに投票すると、それが支援金としてアーティストに入るという仕組みです。

アーティストが表現活動を続けられる循環を作っていくというのも、私たちの大きなコンセプトのひとつになっています。

“Cheer for Artists Program”では気に入ったアーティストごとにボックスが用意され、 Cheer Tickets で投票することができます(画像は実物ではなく生成AIで作成されたものです)

『ニッパチ祭』で楽しめること

-当日は、体験できるコンテンツがいろいろあるようですね。

Aya:大きく「パフォーマンス」「ワークショップ」「トーク・セッション」の3つに分かれています。

「パフォーマンス」は、実際に楽器を演奏する「ライブ・パフォーマンス」、音と映像をその場で組み合わせる「オーディオビジュアル」のほか、DJ のプレイもあります。

お客さんにアーティストと接点を持ち、表現を身近に感じてもらうためのコンテンツが、「ワークショップ」と「トーク・セッション」です。

-パフォーマンスされるアーティストの聴いてほしいポイントなどはありますか?

Itti:オーディオビジュアル、ライブ・パフォーマンスフロアに関しては、真鍋大度さんのステージは是非皆さんに体感していただきたいですね。今回真鍋さんには、世界の音楽フェスでパフォーマンスしている最新作品のアップデート版を披露していただく予定です。

その他のアーティストはみんな、その日が初披露の、要はワールド・プレミアと言われるようなセットで臨むので、本当に『ニッパチ祭』でしか見られないステージになると思います。

Masashi:自分が個人的に聴いて欲しいのは、Ryo Fujimoto さんと、HAIOKA さんです。

15年前、自分たちが学生時代にイベントを企画していた時期から出演してくれている2人で、まだ駆け出しだった頃からお世話になっている人が、時を経た今もアップデートした表現を続けてくれているのが、個人的に感慨深いところですね。

オーディオビジュアル、ライブ・パフォーマンスで出演するのは、左上からDaito Manabe(VS. / Nippachi Destival / ISCA Presents)、Dayzero & Itti + Atsushi Kobayashi、HAIOKA + Shiroharineko、Ryo Fujimoto & Takeshi Nishimoto & SARO + Takuma Nakata

Itti:DJ/VJフロアは、国内外問わず活動している、次世代シーンを作っていくアーティストがたくさん出演します。

例えば、Fetus と Oyubi、Herbalistekは、今現在世界的に注目されているアーティストです。

-昔から見ていた憧れの先輩のような人たちもいれば、若手もいるという。

Masashi:そうですね。生息地が全然違う人たちが、うちのイベントでは一緒に出演しているんです。

学生時代からずっと同じやり方なんですけど、世代やジャンルを超えて、個性の強い万物を混ぜる感覚でキュレーションをしています。

Itti:やってることはその頃から変わらないですね。

だけど下品な混ぜ方はしてないと思っていて。昔から自分たちのピュアなフィルターを通しているので一貫性はあると思っています。

DJフロアに出演するのは左上から、Aya、comm、Fetus & Oyubi、Herbalistek、MISOLA、Velocity、yu-more
“応援”でつながる音楽フェス「ニッパチ祭」12月6日(土)大阪・梅田の新しい文化装置VS.で開催
株式会社ニッパチ製作所のプレスリリース(2025年11月7日 10時00分)“応援”でつながる音楽フェス「ニッパチ祭」12月6日(土)大阪・梅田の新しい文化装置VS.で開催
『ニッパチ祭』主催メンバーであり、当日はオーディオビジュアルでパフォーマンス予定の Itti さん(左)

安藤忠雄建築、坂本龍一チーム監修の音響

-どれも面白そうなコンテンツですが、他にはどんな見所がありますか?

Itti:コンテンツももちろんなんですが、開催場所も重要なんです。

大阪駅、梅田駅からすぐ近くにできた“グラングリーン大阪”の中にある『VS.』という会場で、建築デザインは安藤忠雄さんです。音に関しては、坂本龍一さんのツアーで音響設計を担当していたイースタン・サウンドファクトリーの代表、佐藤博康さんが監修しています。

世界的な建築家、安藤忠雄デザインの『VS.』

-VS. では日常的に DJプレイや楽器の演奏はされているのですか?

Itti:それが、VS. が去年の秋にオープンしてから、今回のニッパチ祭のような規模感でオーディオビジュアルのイベントを開催するのが、初めてなんですよね。

Aya:一般的には“ギャラリー”と言われるような場所だと思うんですけど。

日本だとギャラリーで音が出せて、しかもすごくいい音の場所はあまりないので、今回は特別な体験になると思います。

Itti:パフォーマンスを予定しているフロアが、天井高15mの白掘りであることも特徴ですね。そこにプロジェクター3台を3面に投影するので、音楽と共にかなり没入できる空間になるはずです。

高さ15mの白い壁が特徴の STUDIO A。ここに映像が映し出される。
VS. | うめきた「グラングリーン大阪」の新たな文化装置 | うめきた「グラングリーン大阪」の新名所 「VS.」テクノロジーとリベラルアーツ、伝統的な文化と新しい発想、国内外の多様な文化や取り組みを結びつけ、今まで経験したことのない体験を提供します。
うめきた「グラングリーン大阪」の新名所 「VS.」テクノロジーとリベラルアーツ、伝統的な文化と新しい発想、国内外の多様な文化や取り組みを結びつけ、今まで経験したことのない体験を提供します。

クラブ好きから、ご家族連れまで

-今回はどのようなお客さんに来て欲しいですか?

Aya:まずは日常的にクラブに行っている人ですね。

環境が全く違うので、いつもと違う場所でアーティストのパフォーマンスを見るのはすごく新鮮な体験になると思います。

あとは、家族連れですね。実際に今回、ワークショップには小学生のお子さんも参加予定ですし、普段オールナイトでしか見れないパフォーマンスを日中に行うので、そういう意味では家族連れの方には是非来てほしいです。

なので、表現に興味のある方はもちろん、レジャー感覚でちょっと面白そうだから行ってみようみたいに足を運んでもらえたら嬉しいですね。

Itti:町内会のお祭りに行く感覚で遊びに来てもらえるといいのかなと思います。

-私はクラブにほとんど行ったことがないのでこういったイベントは少し身構えてしまうのですが…どんな心の準備をしていったらいいですか?(笑)

Itti:何も気にせず来ていただいて大丈夫なんですが、あえて言うなら、動きやすい格好で来てください。

Masashi:遠足みたい(笑)

Aya:特に DJ で私たちが扱っているジャンルは、ファッションとの結びつきもあって、基本はアンダーグラウンド・ストリートなので、スニーカーを履いてラフな格好で踊るのもいいと思います。

Itti:多分クラブとライブハウスで楽しみ方に違いがあって、ライブハウスは出演者をみんなで鑑賞する形ですけど、クラブだと、踊ったり、ファッション楽しんだり、お酒飲んだり、自由度が高い。

あと、年齢や性別、職業が違う人たちが集まるので、そこでの出会いを楽しむのもいいですよね。

Aya:逆に、クラブに来ても誰とも話さずに、後ろでお酒を飲むだけで帰る人もいるんです。

本当にお祭りと一緒ですよね。みんなで浴衣を着ていくという楽しみ方もできるし、ちょっと行って屋台だけ食べて帰ることもできるし、盆踊りを踊っている人もいればそれを周りで見ているだけの人もいる。そういう自由さがあると思います。

ニッパチ製作所とは

-『ニッパチ祭』の主催はニッパチ製作所ということですが、皆さんはどのような考え方で事業を展開しているのでしょうか?

Masashi:ニッパチ製作所は僕たちが30歳になったときに作った会社です。

当時、それぞれ別の会社で働いていたので、会う度にまたかつてのように一緒に何かを作りたいね、という話をよくしていたのですが、みんなかなり忙しかったのでなかなか実行できなくて。

かつてのように自分たちがやりたいことをやるためのハブ、自分の人生を生きるための箱として、ニッパチ製作所を作りました。

「自分たちの ”やりたいこと” と ”できること” をイコールにする」ことが、自分の人生を楽しく生きるコツなんじゃないかと、考えたんです。

それで会社名を考える時に、ニッパチ製作所はデジタル・マーケティングを事業の主体にしているんですが、口だけでアドバイスするのではなくて、しっかり手を動かしてクライアントと一緒に作っていく、そんな姿勢を表現したくて、●●製作所とか、●●工務店にしたいよねと。

自分が当時西八王子に住んでいたんですが、Ittiが「西八製作所ってありそうじゃない?街の工場みたいだよね」と提案してくれて、そこから少し発音しやすく変わっていきました。

「”やりたいこと” と ”できること” をイコールにする」を“ニッパチ”に当てはめたら、「ニ」は、上の棒をちょっと伸ばしたらイコールになり、「8」は横にしたら無限になるじゃないですか。

ニッパチ製作所のロゴ

そんな経緯で、ニッパチ製作所という会社名になりました。

会社のロゴにも、そのメッセージが込められています。

そしてまた、子供の頃のように、やりたいことをやっていいんだよという会社の考え方がそのまま、『ニッパチ祭』にも反映されているんです。

-皆さんそれぞれ作曲家やDJとしても活動中ですが、ニッパチ製作所の業務とどのように両立していますか?

Masashi:両立というよりイコールにする、一致させることなのかなと思っています。

自分たちが音楽の活動をしている中で得た、マーケティングのスキルなどがそもそもこの会社の事業になっているので。

学生時代、自分たちで開催するイベントにたくさんの人を集めるために、実践していた当時のデジタル上の施策を、少しずつ高次元にしていって、それが今誰かの役に立ってお金をもらえているという形なんですよ。

だから『ニッパチ祭』と会社の事業も、どちらかの延長上で相互に作用しているんだと思います。

ニッパチ製作所代表の Masashi さん。

『ニッパチ祭』で見つかるかも?楽しく生きるヒント

-最後に、『ニッパチ祭』に行きたいと思っている方へメッセージをお願いします。

Aya:私は、仲間作りの場所にしてもらえたら嬉しいです。

今の話にも続くんですが、私たちもクラブ・イベントで知り合って、同じ時間を過ごしてきたから、今もこうして一緒に仕事をしているんですね。

ひとりで音楽活動を続けている方も、今は昔よりインターネットでコミュニケーションを取れるので、そこで仲間ができる機会もあるだろうけど、リアルな場で会って一緒に時間を過ごすことができる仲間ってまた違うと思うんです。

『ニッパチ祭』に来ていろんな人と交流することで、これからずっと一緒に面白いことができる仲間も見つかるかもしれないので、是非そういう出会いも探しに来てほしいです。

Itti:好きなことを仕事にしていくという自分たちの生き方が、イベントに来てもらうことで、頭じゃなくてリアルで理解してもらえると思うんですよね。

今回は誰の資本も入れてないですし、協賛も入れていなくて、本当に自分たちが一生懸命稼いだお金をやりたいことに使っている。ただそれだけなんですよ。

100% DIY で、こういうイベントもできるんだ、というのをぜひ体感してほしいですね。

Masashi:自分は元々ライブキッズで、いろんなライブハウスに毎週遊びに行くような生活だったんですけど、クラブに遊びに行くようになって人生変わったなと思っているんですよ。

クラブは、職業も性別も人種も年齢も全く関係ない人たちがひとつの箱の中に集まる場所。そこで新しい人と出会うことで、気付くと固定化されていた自分のコミュニティの外側に逸脱できるきっかけがあったんです。

逸脱すること、一歩踏み出すことをこれからも続けていきたい。だから、やりたいこととできることを一致させて、会社のリソースもフル活用してイベントを開催するんです。そして、それが会社の成長にポジティブな形で返ってくる。

仕事と音楽の両立の話がありましたが、こういうやり方があるよ、ということをもっと伝えていきたいんですよね。

もちろん当日のコンテンツもそうですが、我々の仕事のやり方も含めて、見てもらいたい、知ってもらいたいですね。

生きたい人生を生きるための、何かヒントになるんじゃないかと思っています。

左から Itti さん、Ayaさん、Masashiさん。

まとめ

『ニッパチ祭』のコンセプトと、皆さんの仕事や人生への取り組み方が重なるインタビューでした。

「自分の人生を生きること」「”やりたいこと” と ”できること” を一致させていくこと」など、楽しく生きていく上で大切なヒントを体感できるイベント『ニッパチ祭』。

音楽活動をする方もそうでない方も、新しい出会いが見つかるかもしれません。

ぜひ、気軽に遊びに行ってみてください!

ニッパチ祭
日程:2025年12月6日(土)
会場:VS. at GRAND GREEN OSAKA
時間:11:00〜23:30
チケット:https://nippachi-festival.zaiko.io/e/nippahifest2025
ニッパチ祭2025|Nippachi Festival 2025
大阪・梅田の新しい文化装置「VS.(ヴイエス)」で開催決定

宇宙まお
Written by
宇宙まお

シンガーソングライター。2012年デビュー、メジャーレーベルからリリースするなどの活動後、現在はフリーに。作詞作曲、ステージでのパフォーマンスを軸に、サッカーチームの応援ソング書き下ろし、企業オリジナルソングの制作、アーティストへの楽曲提供、ラジオパーソナリティなど多分野で活動を展開中。

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