ONLIVE Studio スタッフが、グラミー賞受賞アーティスト ジェイコブ・コリアーの合唱に出演!体験談をインタビュー!
ONLIVE Studio のスタッフから、誇らしい話題が届きました! Jacob Collier(ジェイコブ・コリアー)は、多重録音やマルチプレイで有名な作曲家であり、音楽プロデューサーです。世紀の天才とも呼ばれる彼の才能は YouTube から発掘され、現在も躍進を続けており、これまでにグラミー賞を5回受賞しています。 そんな彼が出演する『HarbourVOICES!(ハーバー・ヴォイセス)』のイベントに、ONLIVE Studio のスタッフ・菊地海杜が合唱団員として出演!今回は体験談をお聞きしました。
出演したイベントについて
-今回、菊地さんが出演したイベントについて教えてください
カナダの東部にある地域、セントジョンズで開催された『HarbourVOICES!』という合唱イベントです。
このイベントは国内外の合唱団体を巻き込んだ大規模な催しで、全部で6日間にかけて開催されました。
イベントにはフィリピンからの合唱団やアイスランド・アイルランドの男性アンサンブルグループだったり、世界中から色んな合唱団体が参加して、様々な出し物が行われました。
僕は World Youth Choir(世界青少年合唱団)という団体の一員としてこのイベントに出演したんですが、このイベントのヘッドライナーとして呼ばれていたのが Jacob Collier だったんです。
-World Youth Choir とは何でしょうか?
World Youth Choir は、17歳から26歳の合唱を愛する若者たちを対象にした非営利プロジェクトです。毎年世界中からオーディションでメンバーが選ばれて、著名な指揮者と色んな国で演奏活動を行うというセッションがあります。
今回僕が参加したのは経験者向けセッション(Alumni Session)です。元々は2020年に参加する予定だったのですが、コロナ禍の影響で中止になってしまい、そうこうしている内に参加できる年齢を超えてしまいました。
そのため、今回は経験者枠として呼んでいただけることになったんです。日本からの参加は僕一人で、全世界からは32人がメンバーとして集まりました。
World Youth Choir は UNESCO(国連教育科学文化機関)から平和芸術家の称号をもらったことがあり、オリンピックとかノーベル賞授賞式で演奏したこともあるような団体なんですよ。なのでこの団体は「平和」が、一つのテーマになっていたりします。
僕はこの World Youth Choir に参加したくてこの団体のオーディションに応募したことが、今回イベントに参加するきっかけでした。
-菊地さんは今回どのようなスケジュールで参加されたんですか?
全部で6日間あって、そのうち初めの3日間はリハーサル、4日目から本番のステージがありました。 本番初日には Gala Concert(ガラコンサート)という枠組みがあり、そこで Jacob Collier のコンサートがありました。さらにそのコンサートとは別で教会コンサートが2日間ありました。
-Jacob Collier のコンサートはどのような形で参加されましたか?
World O World (ワールド・オー・ワールド)という、 Jacob Collier が作曲した曲を彼の指揮で合唱した形ですね。当時この曲は楽譜が公開・販売されていなかったので、彼による演奏しかまだ世に出ていない時期であり、貴重な機会でした。
このコンサートを含めすべての舞台は伝統衣装で歌うことになっていて、僕は浴衣を着て歌いました。
曲を歌ってみて
-曲を歌ってみてどうでしたか?
なんか...壮大でした。
彼の多重録音ってすごいテクニカルで「普通はこう行かないよね」という和声感だったり、微分音やポリリズムがたくさん使われているんですよ。でも、この曲の譜割りは割と標準的な、誰もが歌いやすい曲になっている。後半に行くと結構ゴスペルっぽい感じで、音域もすごく広くてパワフル...なので、そういった伝統的な歌唱っぽさと、彼らしさが融合した曲だなと感じました。
-指揮はどうでしたか?
みんなを巻き込もうとしてるのがすごく伝わりました。
彼自身は合唱指揮の出身ではないので、ある種自分なりのスタイルで指揮を振っていたと思うんですが「どうぞ、安心してきてください!」という感じで。
ちゃんと彼の胸の扉が開いていて、みんなを受け入れてくれる、そんな指揮だったという印象です。
-Jacob Collier とのコンサートの他には、どのような曲を歌いましたか?
大きくは世俗的な曲と、教会で歌う宗教的な曲の2パターンに分かれていて、全部で8曲ありました。
World Youth Choir の特色を踏んでたと思うんですけど、指揮者が選んだ曲がバラエティ豊かで。
指揮者がスウェーデン出身だったんですけど、スウェーデンの先住民族にサーミ族っていう人たちがいるんですよ。そのサーミ族の伝統的な旋律を合唱にしたものが2曲ありました。
あと、カナダの先住民族にルーツを持つ人が作曲した曲もありました。 Andrew Balfour さんという方で、直接お話を伺う機会があったのですが、彼は Sixties Scoop と呼ばれる同化政策によって生後6ヶ月で親元から引き剥がされた経験を持ち、里親との生活で得た西洋音楽と自身のルーツである先住民族の音楽を掛け合わせた作曲を行っています。
こうした曲が2曲、世俗的な曲としてピックアップされていましたね。で、それらとは別にバッハなどの宗教的な曲が4曲ありました。
この中にはウクライナの作曲家の曲もあって。
その作曲家はウクライナ侵攻のせいで持病の薬が受け取れなくなって、2次的に亡くなった方だったんです。そういうバックグランドを持つ人の曲がセレクトされてたってのは結構大きかったなと思います。
こういった、時代やこれまでの歴史に切り込む選曲も、思い出に残ってます。
-菊地さんご自身はどのような想いで歌われたんですか?
うーん、やっぱり複雑ですよね。
今回 World Youth Choir に参加して、こういったイベントで歌ったことで、すごくいろんなことを考えました。
ハーバー・ヴォイセスって企画自体も、先ほども少し話に出た、カナダが先住民族に対して化政策的なことをしていた過去を反省して、先住民の文化も巻き込んでいこうという考えがバックグラウンドにあるんですよ。この部分はイベントの中でもすごく意識されていたのを感じましたね。
僕らは民族的な歌からレジェンダリー的なバッハまで、バックグラウンドが様々な曲を歌ったので、頭が揺さぶられるような1週間でした。
合唱をやっていると、ある種の宿命かもしれないんですけどね。
-宿命というと?
合唱って、政治的なことと結構密接だったりするんです。
例えば、ラトビアは有名な例で。ラトビアは「歌の民族」とも呼ばれるくらい、歌と結びついているんです。
ラトビアは歴史的に色んな列強国に支配された時期を経ながらも、彼ら独自の歌と踊りの文化は絶やさないで受け継いできていて。それが民族としての団結力やアイデンティティーを守ることに繋がって、国として独立したことに大きく貢献したという背景があるんです。
彼らは今でもその文化を大切にしていて、5年に1回、何万人もの人たちが大きな広場に集まって歌う大規模の合唱の祭典があります。
他の国でもそういった民主化のシンボルみたいな役割を担っていることが多かったりして。そういう政治的なテーマを受け止めがちなジャンルということも、合唱の持つ1つの特徴かもしれないなと思いますね。
今回の挑戦を通して感じたこと
-今回特に印象的だった出来事を教えてください。
キャンプの2日目の夜、みんなで出し物をする会があったんです。
みんなそれぞれ違う国から来ているんで、本当に色んな出し物があって。
台湾メンバーはYu Tung Fa(油桐花)っていう歌を歌ったり、マレーシアは Rasa Sayang(ラサ・サヤン)っていう曲を歌ったり。
当然各々の言語なんで、歌詞はぱっと聞いてもよくわからないんですよ。その中でも「しっとりした曲だな」や「アグレッシブな曲だな」とか、 そういう感覚から、なんとなくその人のパーソナリティとか、その国の雰囲気を推し量ることができたというか。
リハーサルや本番は結構レールに乗ってイベントを楽しむという感じでしたが、一番パーソナリティが見えたのはこの出し物の時だったと思いますね。
-参加してみて、菊地さんの中で起きた変化はありますか?
エンパワーメントですね。キャンプを通してみんなの優しさを感じる場面がたくさんありました。
僕はカナダに到着してからしばらくの間、時差ぼけで体調が悪く少しベッドで休んでたんですよ。そしたら色んなメンバーからメッセージや電話が来たり、さらには部屋まで来てくれる子もいて。
色んな国の人が集まっているので、文化的な違いは当然感じることもありましたが、それを超越して他の人を勇気づけたり、やる気づけるみたいな人の力を感じました。
僕はこれまでどこか遠慮しちゃうところがあったんですけど、誰かが元気なさそうだったり、逆にいつもより嬉しそうだぞ?って時には声をかけたりだとか、そんなコミュニケーションをもっと大事にしていきたいなと思います。
まとめ
合唱を通じて世界と共鳴するという、ONLIVE Studio のスタッフとして非常に誇らしいエピソードでした。
これまでも釜山やスペインなど、様々な合唱コンクールに出場してきた菊地ですが、今後はさらに国際的なコミュニケーションに関わりたいと考えており、現在は英会話にも通っているとのこと。これからのさらなる飛躍に期待しています!
東京出身の音楽クリエイター。 幼少期から音楽に触れ、高校時代ではボーカルを始める。その後弾き語りやバンドなど音楽活動を続けるうちに、自然の流れで楽曲制作をするように。 多様な音楽スタイルを聴くのが好きで、ジャンルレスな音楽感覚が強み。 現在は、ボーカル、DTM講師の傍ら音楽制作を行なっている。 今後、音楽制作やボーカルの依頼を増やし、さらに活動の幅を広げることを目指している。