スウィングとはどんなリズム?
スウィングとは、一般的に八分音符を楽譜通りに演奏するのではなく、三連符の感覚で演奏することをいいます。
スウィングのリズムを取り入れるジャンルは、ブルースやジャズ、ファンクなど様々です。特にジャズにおいてスウィングのリズムは重要な位置づけとなっています。
スウィングのリズムについて、以下で詳しく見ていきましょう。
通常のリズム
通常のリズムは以下の楽譜通りに演奏します。
このリズムを「ストレートノート」や「イーブン」と表現することもあります。
タタタタタタタタ...というリズムです。
<譜面>
<実際に演奏されるリズム>
スウィングのリズム
一方のスウィングのリズムは、タッカタッカタッカタッカ...と、スキップしているようなリズムです。
<譜面>
<実際に演奏されるリズム>
スウィング=三連のフィーリングで演奏する
楽譜上はどちらとも八分音符で表されていますが、スウィングのリズムの場合、八分音符を三連符に分割し、そのフィーリングを感じながら演奏したようなリズムとなります。
スウィングの基本的な説明としてよく用いられるのは、三連符の真ん中を抜いた演奏です。
そのように演奏すると「タッカタッカタッカ」というリズムになり、これが跳ねたリズムと表現されます。
楽譜によっては以下のように、スウィングの指示が記載されている場合があります。
スウィングのリズムの難しさ
先ほどのスウィングの説明はあくまで一般的な目安として説明される内容です。
スウィングは上記の説明の他にも始まりと真ん中をスラーで繋げた演奏、付点八部音符と十六部音符と表される場合もあります。
また、スウィングの特徴として、推進力を感じさせるようなグルーブがあります。バックビート、つまり2拍4拍を強調する傾向があり、全てを総称してスウィングと指している場合もあります。
スウィングの定義が難しいのは、演奏する人や曲、時代によってスウィングの感覚は異なるからです。
実際にスウィングのリズムは奥深く、先ほどの音源は実際のスウィングとは言い難いものです。
スウィング・ジャズとは
ジャズの形態の一つに、スウィング・ジャズというものがあります。
スウィング・ジャズは1930年〜40年代頃に隆盛した大人数編成のジャズスタイルです。
このジャンルを代表する曲の一つである Benny Goodman(ベニー・グッドマン)『sing sing sing ! 』は聴いたことがある方も多いのではないでしょうか。
スウィングしたリズムを持つスウィング・ジャズは思わず体を動かしたくなるようなサウンドが特徴です。
その音楽性の通り、スウィング・ジャズは当時のダンスミュージックであり、人々はこの音楽と共に踊りを踊りました。
スウィング・ジャズではスウィングして演奏されますが、「スウィング」のリズムはこのジャンルだけに使用されているわけではありません。
スウィングを感じる楽曲
スウィングを感じる楽曲として、やはりスウィング・ジャズは外せないでしょう。
ちなみにスウィング・ジャズを牽引した Duke Ellington(デューク・エリントン) は、「It Don't Mean a Thing (If It Ain't Got That Swing)」(スウィングしなけりゃ意味ないね)という曲を出しているほど、スウィングは重要なリズムとして扱われているのが伺えます。
Ella Fitzgerald and Duke Ellington『It Don't Mean a Thing (If It Ain't Got That Swing)』
Duke Ellington and his Orchestra『Take the A Train』
また、Lofi ミュージックの先駆者である J Dilla(J・ディラ)は、ヒップホップにスウィングの要素を取り入れたことで有名です。この揺らぎは J Dilla Swing とも呼ばれています。
J Dilla『So Far to Go』
ジャズのルーツにもあるブルースでも、スウィングを感じることができます。
Robert Johnson『Sweet Home Chicago』
エレクトロ・スウィングというジャンルは、スウィング・ジャズをサンプリングしてダンスミュージックと掛け合わせているジャンルです。
Caravan Palace『Lone Digger』
シャッフルとの違いとは?
シャッフルもまた、リズムを表す音楽用語です。
スウィングとシャッフルについて検索しても、その説明は基本的に同じで、八分音符を三連最初と最後の音符を演奏をする説明が多く出てきます。
それでは、それぞれ違いはどこにあるのでしょうか。
一般的にはスウィングの方が定義が曖昧で、演奏者や曲により流動的に変化するものと捉えることができます。
両者ともリズム感は「長-短」となりますが、シャッフルはブルースの鼓動とも呼ばれており、この「長-短」の比率はシャッフルの方がより安定し、規則的なリズムを提供すると考えて良いでしょう。
まとめ:「If you don't feel it, you'll never know it.」
ちゃんと理解しようとすると、なんだか難しいスウィング。
一般論としては三連符の真ん中を抜いて、跳ねているリズムとされますが、深掘りをするとそう簡単な話ではなさそうです。実際にジャズの演奏を聴くと、必ずしも先の説明に当てはまるわけではないのです。
ジャズの巨匠、 Louis Armstrong(ルイ・アームストロング)もスウィングに関して「If you don't feel it, you'll never know it.」(感じることができなければ、理解することはできない)と名言を残しています。
本質的なスウィングを理解したい場合は、言葉で理解するよりも沢山の音楽を聞いて「感じる」ことが大事なのでしょう。
東京出身の音楽クリエイター。 幼少期から音楽に触れ、高校時代ではボーカルを始める。その後弾き語りやバンドなど音楽活動を続けるうちに、自然の流れで楽曲制作をするように。 多様な音楽スタイルを聴くのが好きで、ジャンルレスな音楽感覚が強み。 現在は、ボーカル、DTM講師の傍ら音楽制作を行なっている。 今後、音楽制作やボーカルの依頼を増やし、さらに活動の幅を広げることを目指している。