新人スタジオエンジニアのリアルなお仕事(1)|1番やらなければいけないのは、『周りを見ること』。

アーティストやミュージシャンのレコーディング現場で、音響機器やDAWを駆使して最高の音を録音するレコーディングエンジニア。音楽がまさに生み出されていく現場に関わることは非常に刺激的であり、大きなやりがいのある仕事だといえるでしょう。 そんなレコーディングエンジニアたちのリアルに迫るべく、都内3箇所にプロユースのレコーディングスタジオを構え、さらにはライブハウスの運営も行う Studio A-tone(スタジオアートーン。運営会社:株式会社フリーマーケット)に関わるプロフェッショナルたちにお話しを伺います。

asu
2023-09-197min read

第1弾となる本記事は、スタジオ入社3年目の澤畑 慧(さわはた けい)さんにお話を伺います。入社からアシスタントとして順調に経験を積み、現在はエンジニアとして携わる案件を徐々に増やしていっているとのこと。そんな澤畑さんに、音楽業界を志したキッカケから、今のお仕事、そして将来の目標など、キャリアに関してお聞きします!

まずは、サウンドエンジニア3年目の澤畑さんが取り組む具体的なお仕事の内容や、お仕事を通じて気づいた大切なことなど、リアルな"今" に迫ります。

現在のお仕事について

澤畑さん Studio A-tone Aスタジオコントロールルームにて

−まずは、現在のお仕事についてお聞かせいただきたいと思います。3年目のエンジニアのお仕事内容はどのようなものなのでしょうか。

新人枠と言われながらも、そろそろ色々とやらせてもらえることが増えてくる年代なのかな、と思いますね。僕は、今だとアシスタント業務のようなこともあるんですが、最近ではゲームの音声収録にエンジニアとして関わらせていただくことが少しずつ増えてきました。

−事前にいただいたプロフィールに、趣味はゲームと書かれていますよね。

普段はパソコンでゲームをやっているんですけど、RPGではなく、例えばシューティングゲームのようなジャンルのものが好きです。ゲーム音声収録もそれに近いような内容だったりもするんで、やってて楽しいなっていうのはあります。

−面白そうですね。どういった内容ですか。

内容としては、キャラクターのセリフ録りというのが1番近いかと思います。キャラクター同士のセリフのやり取りを録音するとか、攻撃をしているアクションのリアクションの「ハァ!」みたいな音声などを録っていくことが多いです。

あまり詳しいことは言えないんですが、海外のゲーム案件などもあります。元の言語が英語のものを日本語へ吹き替えします。

例えば、キャラクターが喋っている映像があったとして、それはあくまでも外国語、その時は英語で喋っているので、その尺に合わせて翻訳された日本語を収めないといけない、というのがあったりするんです。どうしても英語より日本語の方が長かったりする場面などもあるので、それをどう詰めていくのかといったことを試行錯誤します。

−そうして録音したセリフを編集されたりもするのでしょうか。

はい。尺に合わせるために、タイムを短くしてちょっと早送りにするイメージです。音質が変わらない程度にちょっと早送りにしてちょっと詰めてみるとか、演者さんにワードを変えて喋ってもらい短く録っていく、といった調整もします。

あくまでジャッジするのはディレクターさんなので、僕はちょっと短くするとか、尺をどうしますか、などの提案をエンジニアの仕事の範囲内で聞きます。

エンジニアとしての初案件について

澤畑さん Studio A-tone Aスタジオ Booth にて

−エンジニアとして一人立ちした時のことは覚えていますか?

初めてエンジニアとしてミュージシャンとお仕事をさせていただいたのは、確か入社してから1年目の後半ぐらいです。担当している先輩のエンジニアさんの代わりでした。

その案件は言語が日本語ではなくて、別の国の言葉だったんです。 しかも、案件の内容も先輩からはちょっと特殊だよ、という風に聞いていて。日本語ですら自分がメインで歌の案件をやった経験がないのに、案件内容も特殊なものをやることになって「どうしたらいいんだろう」と頭の中でばたつきました(笑)。
そんななかでも、 アーティストの方がやりやすく、歌いやすくするにはどうすればいいか、というのをものすごく考えながら録った記憶があります。

−忘れられない記憶になりましたね(笑)。言語が違うと、うまく歌えてるかの判断も難しいのではないですか。

はい。言語がハワイ語だったんですよ。英語ですらなくて。頂いた歌詞も、もちろんハワイ語で書かれていて(笑)。この案件が、初めて歌取りを自分がメインのエンジニアとしてやらせてもらった仕事です。

エンジニアとして判断するにはなかなか難しいのですが、ジャッジをするディレクターさんが一応いますので、「こういう風だよね」というやり取りをしながら進められました。音的な、エンジニア的な考えを聞かれた時は僕もお答えはするんですけど、言語や歌詞に対しては本当に分からないのでお任せしましたね。

−初めての案件が終わった時の手応えはいかがでしたか?

どの仕事においても自分の全力は出してるつもりではいるのですが、振り返ってみて反省する部分がたくさんありました。日頃アシスタントをしながら、先輩に改善点などを色々聞いてはいましたが、いざ自分でやってみると「ここは歌い手さんに親切じゃなかったな」、「もう少し手際よくできたな」といったことを案件の直後は強く感じました。

ただ、クライアントさんから「何事もなく録らせていただいてありがとうございます」というお声をいただいたことは本当に良かったです。

−それは嬉しいですね!すでに澤畑さんのクレジットが載ってる案件はありますか。

おそらく色々と載っているんですけど、意外と知らないうちに載ってたりすることもあるんですよね(笑)。僕がクレジットに初めて載ったのは、先ほどのハワイ語でレコーディングを担当した作品です。名前が載っていて「やった!」と思いました。やはり、手ごたえというか、目に見える形として残るというのは、やっぱり嬉しくて。親にはそのCDを渡しましたね。

−親御さんの反応はいかがでしたか。

「1年目ながらにしてちゃんとやってますね」みたいな風には言ってくれてはいました。絶対知らないところでいっぱい聞いてくれてると思います(笑)。

エンジニア経験を積んで

澤畑さん Studio A-tone Aスタジオ Booth にて

−普段レコーディングするにあたって、気をつけてることはありますか?

『アーティストや演者さんのことを常に見る』というのは徹底するようにしてます。
アーティストがどう歌いたいとか、どういう風な考えなのかというのが、割と仕草などで見て取れたりするんですよ。そうしたことをすぐ察知できるように、アーティストとか、 横にいるディレクターさんとか、プロデューサーさんとか、メインでエンジニアをやってる方に常に目を張っているというか。 なので、操作そのものはパソコンの中での作業なんですけど、実際はアーティストをはじめとした、人との会話というのを、もう本当に最優先で見ていますね。そこから次に何をどうしたいのかというのを先読みして、こちらから提示できるようにすることは心がけてます。
これは最初の頃から先輩にずっと言われてきたことではあるんですけど、時々まだできていなかった、と振り返ることがあったりします。どうしても音楽的な要素などを自分の中で考えちゃったりすると、周りを見ることが止まっちゃって...良くない癖だなとは思うんですけど。

−音楽に集中するだけではなくて、周りの方とのコミュニケーションがとても重要なんですね。

はい。よく先輩達に言われるのは、「エンジニアは音を録ることも大事だけど、一番大切なのはコミュニケーションだ」と言われます。

なのでアーティストがどういう風にやりたいとか、ディレクターさんがどういうやり取りをしてるのかということに常に気を張ってます。よりスムーズにやりやすくできるというのが1番大事だなと思うので。そういうところは、非常に気を付けています。

専門学校で教わるのは、レコーディングの仕方であったり、マイクのメーカー、種類などといった「レコーディングに必要な機材ってどういうものなんだろう?」といったことです。しかし、いざ実際にアーティストとレコーディングをする時に、1番やらなければいけないのは、『周りを見ること』です。
エンジニアを見ないといけない、アーティストを見ないといけない、ディレクターさんやプロデューサーさんが何を考えてるか、というのも、常にタイミングを考えて伺わないといけない、というのは、この会社に就職して実際に現場に入ってからかなり痛感しています。

『自分のことに必死にならないようにする』ということは、1年目、2年目は特に苦労しました。


エンジニアとしての初めてのレコーディングのエピソードや、現場の仕事を通じて痛感している「一番大切なこと」を教えていただきました。サウンドエンジニアというと、技術的なことや音楽知識などの大切さを思い浮かべます。しかし、どんな職業にも共通する「コミュニケーション」のスキルこそ、音楽の現場では必要不可欠。やはり音楽制作にはたくさんの人が関わるからこそ、間に入るレコーディングエンジニアにはコミュニケーション能力が求められるのではないでしょうか。

今回は、現在のお仕事を中心にお話を伺いましたが、続いての記事でお聞きするのは「そもそもなぜ音楽業界を目指し始めたのか」。音楽体験の原風景や、就職活動での「Studio A-tone」との出会いに迫ります。

次の記事はこちら!

新人スタジオエンジニアのリアルなお仕事(2)| これを超えるものがあるんだろうか、なんて思いながら聞いていましたね。 | ONLIVE Studio blog
アーティストやミュージシャンのレコーディング現場で、音響機器やDAWを駆使して最高の音を録音するレコーディングエンジニア。音楽がまさに生み出されていく現場に関わることは非常に刺激的であり、大きなやりがいのある仕事だといえるでしょう。 そんなレコーディングエンジニアたちのリアルに迫るべく、都

プロフィールご紹介

澤畑 慧 氏

  • 名前:澤畑 慧(さわはた けい)
  • 所属:Studio A-tone(株式会社フリーマーケット)
  • 所属年数:2021年〜
  • 生年月日:2001年2月9日
  • 出身:神奈川県横浜市
  • 出身校:日本工学院専門学校音響芸術科 八王子校
  • 趣味:オンラインゲーム、アニメ、ライトノベル鑑賞
  • 音楽以外での目標:綺麗な景色を見る旅がしたい

Studio A-tone(スタジオアートーン)

  • Studio A-tone 東麻布
      住所:東京都港区東麻布1-8-3 エスビルディング
  • Studio A-tone 四谷
      住所:東京都新宿区四谷三栄町14-5 名倉堂ビルB2
  • Sound Valley
      住所:東京都新宿区四谷本塩町15-12 カーサ四谷 羽毛田ビル B1,B2
  • WEBサイト:https://www.studio-a-tone.com
  • E-mail:info@studio-a-tone.com
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Written by
asu

5歳の頃にピアノを始め、鍵盤や打楽器に触れる。 学生時代はヒットチャートを中心に音楽を聴いてきたが、 高校生の頃にラジオ番組を聴くのが習慣になり、 次第にジャンルを問わず音楽への興味を持つようになる。 野外フェスや音楽イベントへ通い、ライブの持つパワーや生音の素晴らしさを実感。 現在はピアノと合わせてウクレレを練習している。 弾き語りが出来るようになるのが目下の目標。

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