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音楽の街、下北沢で — Music Island O の10年
- 現在オーナーを務める「Music Island O」についてお伺いします。10年前にこの場所をオープンされた経緯は?
今の Music Island O がある場所は、以前別の方が経営しているライブハウスでした。僕も演者として何度か演奏に来たことがあって。最後に来た時がお店の閉店パーティーだったのですが、その時に次の物件のオーナーを探しているという話を聞いたんです。下北沢のビストロでライブを企画していた経験もあったので、“ここだったらもしかしたら、また自分のやりたいことができるかも”と思って、妻に相談して翌日には内見に行き、つい始めてしまったんです。最初はどうなるかと思いましたが、そこから10年続いています。

- 衝動的なスタートだったんですね!実際に10年間、ご自身のお店として経営されてみていかがですか?
改めて思うのは、ライブハウスというのは、お客さんが来てくれるから成り立っているんだなということです。僕の店というより、「みんなの音楽基地」みたいな感覚が強いですね。
日々足を運んでくださるお客さんがいて、その積み重ねがあったからこそ、気がつけば10年続いていました。当たり前のことのようでいて、とてもありがたいことだと、今あらためて感じています。
ライブハウスでレコーディングするメリット
- 「Music Island O」は、ライブハウスでありながら本格的なレコーディングスタジオとしても機能しています。これは当初からの構想だったのですか?
はい。お店を始めるときには、すでに CM制作やセルフ・レコーディングをがっつりやっていたので、当初から「レコーディングができるお店」にするとは決めていました。
iPad で操作できる PA卓を導入したのですが、それが32チャンネルのオーディオインターフェースとしても使えるということで、ライブレコーディングはもちろん、本格的な録音もできるように整えました。

- 伊藤さんはドラマーでもありますが、ドラムのレコーディングには特別なこだわりがありそうですね。
あると思います。エンジニア目線で見ても、ドラムのレコーディングって一番難しいんですよ。狭い空間に太鼓がたくさんあって、それを一本一本マイクで狙って、上からも録って…あそこまで密度高くマイクを置く楽器は他にありませんから。
ドラムのマイキングやミキシングは、すごくキャラクターが出るところです。自分がドラマーであることは、ドラムの音がどう鳴るべきかを知っているという意味で、大きな強みだと思っています。
- 先ほどここでレコーディングされた音源を聴かせていただきましたが、アコースティックギターの音も非常に生々しくて素晴らしかったです。
ありがとうございます。アコギの録り方には、僕なりのちょっとした独自のセオリーがあって。近いマイクで金属的なアタック音や硬い音を狙いつつ、遠いマイクで全体の空気感やフレットノイズ、人が呼吸しているような質感を録るんです。
- 「呼吸している質感」ですか。
はい。フレットの上を指が滑る音や、服が擦れる音、そういう「そこで人が弾いている」という気配まで録り切らないと、打ち込みの音のようになってしまいますから。その場の空気ごとパッケージすることを大切にしています。
- ライブハウスという広い空間で録ることのメリットも感じますか?
すごく感じますね。一般的なレコーディングスタジオのようにガラスで仕切られたブースではなく、広い部屋にみんなで集まって録るスタイルを基本にしています。 ですので、バンドで一斉に演奏してレコーディングしたい方にはおすすめしたいです。もちろん、ギターアンプなどは別ブースに入れて隔離しますが、基本的には「バンドの一体感」やその場の空気を大切にしたいと思っています。
- あえて仕切らないと。
欧米のスタジオのように、一つの大きな部屋でドラムセットを囲んでみんなで演奏する、あの贅沢な感じを下北沢のど真ん中で再現できるのは、ここならではの魅力だと思います。 もちろん、後から修正したい時に「ドラムの音がかぶってるから直せない」みたいな制約はあります。でも、「もういいか、それも味だよね」と割り切れるくらいの勢いや一体感を優先したい。ライブハウスで録るというのは、そういうライブ感も含めてのレコーディング体験だと考えています。

アーティストに寄り添う、柔軟な「音楽基地」へ
- 今後、どのようなアーティストにこのスタジオを使ってほしいですか?
基本的には誰でもウェルカムです。最近のバンドですとメンバーが DAW を扱えることも多いので、すべてをこちらに任せるのではなく、柔軟な使い方も提案しています。
例えば、うちのスタジオではドラムやアコギなどの「録り(トラッキング)」だけを行って、データを持って帰って自分たちでミックスするという使い方も大歓迎です。
- それだと予算も抑えられそうですね。
そうですね、かなりリーズナブルに済むと思います。もちろん、僕がミックスからマスタリングまで完パケすることも可能です。

- 逆に、外部のエンジニアさんが来ることは?
今のところまだないんですが、大歓迎です。その場合は僕がアシスタントに入って、ProTools のルーティングやシステム周りのお手伝いをします。
壁一面にアウトボードが並んでいるような豪華なスタジオではないですが、広い空間と最低限の良い機材はあるので、この環境を面白がってくれるエンジニアさんがいたら、ぜひ来てほしいですね。
- 最後に、今後の目標をお聞かせください。
高校生の時にドラムと出会って、「これで人生全うしたい」と思った夢が、形を変えながらも今に繋がっています。だから、今はとても幸せですね。
さらにやりたいことがあるとすれば、これまで培ってきた経験やこの場所を使って、困っているアーティストのみんなの役に立ちたいですね。音楽に対する「熱さ」を持っている人たちの想いに、できるだけ応えられるような場所であり続けたいと思っています。
- 困っているアーティストの駆け込み寺のような?
そうですね。僕自身がドラマー、エンジニア、経営者といろいろなことに手を出してきたので、対応できるというか、イレギュラーな相談にも強い方だと思います。「まずは相談してくれれば、なんとかなるかもよ」というスタンスで、これからもアーティストを支えていきたいですね。





まとめ
今回は、レコーディングスタジオとしての Music Island O ならではの魅力についてお話を伺いました。
筆者自身、ライブハウスとしてもレコーディングスタジオとしても何度か利用していますが、音楽を愛するミュージシャンやリスナーが自然と集い、そっと寄り添ってくれるような空間に、いつも居心地の良さを感じています。ここでは、純粋に音楽を楽しむ時間を味わうことができます。
レコーディング場所に悩んでいるアーティストの方、バンドマンやシンガーなど、どんな方でも、まずは一度伊藤氏に相談してみてはいかがでしょうか。
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伊藤勇気氏プロフィール
ビクターエンタテインメントよりPOMERANIANSのドラマーとしてメジャーデビューし、FUJI ROCKやSUMMER SONICをはじめ大型フェスにも多数出演。
以降Afrobeatバンドhype sessionsを率い、CM音楽制作や多数アーティストのサポートドラム、エンジニアリングなど幅広く活動。ドラム講師としても長年にわたり後進の育成に携わる。
音楽制作(作家・エンジニアリング)では、誰もが一度は耳にしたことのある大手企業のCM音楽を多数手がけ、ジャンルや業種を問わず提供。
2022年にはナイジェリアのサックス奏者Adebowale Osunnibu(SEUN KUTI & EGYPT 80)とLAGOS TOKYO PROJECTを立ち上げ、国際的な音楽制作にも着手。
下北沢で10年にわたりライブハウス「Music Island O」を経営。新旧が交差する音楽の現場で、表現者と観客をつなぎ、時にプロデュースやコーディネイトも行う。

シンガーソングライター。2012年デビュー、メジャーレーベルからリリースするなどの活動後、現在はフリーに。作詞作曲、ステージでのパフォーマンスを軸に、サッカーチームの応援ソング書き下ろし、企業オリジナルソングの制作、アーティストへの楽曲提供、ラジオパーソナリティなど多分野で活動を展開中。







