シンセサイザーの魅力|実機を知り、そのサウンドとアーティストに惹かれた訳

シンセサイザーの魅力は、登場以降、その独特なサウンドや、著名アーティストが愛用することで次々に生まれたヒット曲にありました。筆者もその機材を知り、サウンドに触れて魅力に惹かれていった経緯があります。楽曲やアーティストの背景を探ると、そこには常に象徴的な実機が存在していることを知りました。本記事では、実際に機材を知って見えてきた、シンセサイザーならではの面白さをお伝えします。

Yoshihiko Kawai
Yoshihiko Kawai
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シンセサイザーとの出会い〜喜多郎の『シルクロード』

幼少期、筆者はピアノを習っていました。クラシック中心でしたが、そんな中で初めてシンセサイザーの音に出会ったのが、父親が購入してきた喜多郎の『シルクロード』のCDでした。そこには、ピアノとは違う、ゲーム音楽とも異なる音色が広がっていました。幻想的で、宇宙的ですらあるそのサウンドに、子どもながら強い衝撃を受けたのを覚えています。後になって知ったのですが、この作品で印象的に使われていたのが miniKORG 700だと分かり、“あの音の正体はこれだったのか”と納得した記憶があります。

その後、シンセサイザーとの距離を一気に縮めたのが TMNETWORK の存在でした。彼らの音楽は、それまで聴いていたバンドとは異なり、シンセサイザーそのものが主役として機能していたのです。楽曲はもちろん、ステージでの立ち姿や演奏パフォーマンスも含めて、シンセのカッコ良さに気付かされました。音だけでなく、表現手段としてのシンセサイザーに魅了されていった瞬間だったと思います。

しかしその一方で、学生時代は、シンセサイザーという楽器そのものについて深く理解していたわけではありませんでした。音は好きでも、その仕組みや構造、どのように音が作られているのかまでは考えていなかったのです。バンド活動をするようになると、興味はむしろピアノやオルガンといった生楽器系のサウンドと、演奏自体へと移っていきました。聴く音楽も、いわゆる“バンド系”になっていました。

『キーボード・マガジン』時代に触れた名機たち〜YAMAHA GS-1、SEQUENTIAL Prophet-5 など

そんな自分が再びシンセサイザーに引き戻されることになったのが、『キーボード・マガジン』編集部に配属されたことでした。ここで私は、国内外のビンテージ機から最新モデルまで、さまざまなシンセサイザーに触れる機会を得ました。記事制作のために実機を扱い、音を出し、構造を理解し、そしてその歴史や文脈を調べていく。そのプロセスを通じて、“あのとき聴いていた音”がどのように生まれていたのかを、実感として理解できるようになったのです。

それまでも楽曲の中でシンセの音は当然のように聴いていましたが、実際に機材に触れることで、音作りの思想や演奏との関係性、さらにはアーティストごとの使い方の違いなどがより理解できるようになりました。単なる音色としてではなく、“表現としてのシンセサイザー”を改めて認識した瞬間です。

こうした経緯もあり、“楽曲”と“シンセサイザー”が強く結びついたものに魅力を感じるようになりました。たとえば、TOTO の「Africa」で聴ける YAMAHA GS-1 だったり、YMOの「Solid State Survivor」での SEQUENTIAL Prophet-5。Journey(ジャーニー)の「Separate Ways (Worlds Apart)」なら Roland Jupiter-8、Van Halen(ヴァン・ヘレン)の「Jump」なら Oberheim OB-Xa といった具合です。どれもその時代を象徴する名機だと感じています。

アナログ・シンセばかり例に挙げましたが、デジタル・シンセも、もちろん魅力的な機種が多く存在します。YAMAHA DX7のエレピは、David Foster(デイヴィッド・フォスター)の作品で数多く耳にしましたし、Michael Jackson(マイケル・ジャクソン)の作品では Fairlight CMI が革新的な役割を果たしていました。また、小室哲哉のサウンドにおいては Roland JD-800 のピアノの存在も印象的です。

これらに共通しているのは、“音”と“パフォーマンス”が密接に結びついている点だと感じています。音作りそのものの魅力ももちろん大きいのですが、それ以上に、演奏されることで初めて完成する楽器であるという感覚でしょうか。どんなに優れた音色でも、実際に弾かれてこそ意味を持つものです。自分のプレイヤーを目指していたからこそ、楽曲とセットで強く記憶に残っているのだと思います。

名機たちが残したサウンドは、今も受け継がれている

一方で、現代のシンセサイザーを見渡すと、“この機材でしか出せない音”という絶対的な個性は、以前ほど強くはないのかもしれません。技術の進化によって、ソフトウェアでも高品質な音作りが可能になり、誰もが手軽にシンセ・サウンドを使える時代になりました。それは非常に魅力的であり、新たな表現の可能性を広げていると感じています。

それでも、1970年代以降に急激な進化を遂げた時代のサウンドの魅力は、今もなお色褪せることがありません。その記憶があるからこそ、現代のシンセ・サウンドにも同じ系譜を感じ取り、自然と魅力的に聴こえるのだと思います。

シンセサイザーは単なる電子楽器ではなく、時代の空気やテクノロジー、そして演奏者の思想までも内包した存在です。だからこそ、これからも“どのシンセが使われているのか”を意識しながら音楽を聴き続け、その背景にあるストーリーにも耳を傾けていきたいと思っています。

Yoshihiko Kawai
Written by
Yoshihiko Kawai

株式会社Core Creative代表。株式会社リットーミュージックで、キーボード・マガジン編集部、サウンド&レコーディング・マガジン編集部にて編集業務を歴任。2018年に音楽プロダクションへ転職。2021年、楽曲制作をメインに、多方面で業務を行う。2022年、事業拡大のため株式会社Core Creativeを設立。現在は東放学園音響専門学校の講師なども務め、さらなる事業拡大のため邁進中。

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