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Ed Sheeran 『Nancy Mulligan』
Ed Sheeran(エド・シーラン) の楽曲『Nancy Mulligan』には、アイリッシュ音楽及びケルト音楽(※1)で頻繁に使用されるティン・ホイッスル、フィドル、バウロン、アコーディオンが使用されています。
ケルト音楽とは、ケルト文化圏で発達した、伝統的な民族音楽です。
日本でも比較的馴染みのあるジャンルで、ゲーム音楽に取り入れられていたり、生活雑貨を販売している無印良品の BGM に使用されていたりします。
皆さんも耳にしたことがあるのではないでしょうか。
Ed Sheeran はイングランド出身のアーティストですが、彼のご両親、さらには祖父母がアイルランド出身なので、アイリッシュの伝統的な音楽が幼い頃から身近にあったようです。
この曲は、Ed Sheeran の祖父母の出会いについて歌ったもので、当時のアイルランドの時代背景を知ることができます。
音の面からも、歌詞の面からも、アイリッシュを感じる作品です。
<バウロンの音色>
<ティンホイッスル>
<フィドル>
<アコーディオン>
(※1)ケルト文化圏とは、ケルト人としてアイデンティティを持つ人たちの文化が残る、もしくは影響を受けている地域のこと。アイルランド 、スコットランド、マン島、ウェールズ、コーンウォール、ブルターニュなどが含まれます。
Taylor Swift 『Mean』
Taylor Swift (テイラー・スウィフト)の 楽曲『Mean』では、バンジョーが使用されています。
バンジョーは、ブルーグラスやカントリー、ケルト音楽、初期のジャズなどといった様々なジャンルで使用されている弦楽器です。
バンジョーのルーツはアフリカにあり、奴隷貿易によってアフリカ大陸にいた人々がアメリカ大陸に連れてこられたことをきっかけに、新たな形として形成されました。
アメリカで発達した楽器ということもあり、しばしば洋楽のポップスで取り入れられています。
<バンジョーの音色>
Selena Gomez 『Me & The Rhythm』
Selena Gomez (セレーナ・ゴメス)の楽曲『Me & The Rhythm』では、スティールパンという楽器が使用されています。
スティールパンとは、カリブ諸島に位置する国、トリニダード・トバゴ発祥の打楽器です。
トリニダード・トバゴは石油輸出国であり、輸送用で使用されていたドラム缶の廃材を、奴隷貿易によってトリニタード・ドバゴに連れてこられた西アフリカの人たちが利用してスティールパンが作られました。
カリブ海生まれの楽器ということで、爽やかで、どことなく海を感じる音色です。
スティールパンを使用した曲として、The Little Mermaid (リト・マーメイド)の『Under the Sea』も有名です。
<スティールパンの音色>
MISIA「 つつみ込むように... 』
MISIAさんの楽曲『 つつみ込むように... 』では、ビブラスラップという楽器が使われています。
ビブラスラップとは、アメリカのラテンパーカッション社という会社が制作した打楽器です。
その音は独特且つ、インパクトがあります。
この楽器は、ハンバーグ師匠でお馴染みのお笑いタレント、井戸田潤さんが相棒としても使用しており、イメージしやすい方も多いのではないでしょうか。
ビブラスラップは、カリブ諸島に位置する国、キューバの楽器である「キハーダ」という楽器を元に作られたとされています。
<ビブラスラップの音色>
星野源『恋』
TBSドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」の主題歌としてお馴染み、星野源さんの楽曲『恋』では、二胡(にこ)という楽器が使用されています。
二胡は、中国の伝統的な民族楽器です。その歴史は古く、唐の時代(618〜907年)から初期の二胡が登場しているとされています。
軽快でキャッチーなサウンドの中に、アジアに馴染みのある民族楽器を曲中に忍ばせることで、独特のサウンドを生み出しています。
<二胡の音色>
浦島太郎(桐谷健太)『海の声』
KDDI のブランドである au の CM キャラクターとして桐谷健太が演じる浦島太郎の楽曲『海の声』では、三線が使用されています。
同じ海沿いの地域に根差した楽器として、先ほどご紹介したスティールパンがありましたが、スティールパンは南国の海を連想させ、三線の音色は落ち着いていて、日本の沖縄の海を連想させる響きです。
三線を取り入れたヒット曲は BEGINさんや THE BOOMさんなど数々あり、私たちにとっては馴染みのある音ですよね。
沖縄出身ではないのに、三線の音が懐かしいと感じるのは、私だけではないはず。
The Beatles 『Love You To』
The Beatles の楽曲『Love You To』では、インド音楽に使用される様々な楽器が使われています。
作詞作曲は George Harrison(ジョージ・ハリスン)が行い、インド楽器を積極的に取り入れたのも彼でした。
George Harrison は、1965年に公開された The Beatles の映画『 Help! 』のセットで使用されていたシタールをきっかけに、インド音楽、哲学などのインド文化へ興味を示し始めたとされています。
シタールは、インドの伝統的な弦楽器で、ひょうたんからできたボディ、幅のあるフレット、また多くの弦が使用されていて、その見た目はインパクトがあります。
The Beatles の楽曲ではじめてインドの楽器が使用されたのは、1965年の『Norwegian Wood』で、シタールが用いられました。
今回ご紹介する楽曲である『Love You To』は、翌年にリリースされ、シタールのみならず、別のインド楽器であるタブラ、タンプーラが使用されています。
タブラとは、インド音楽でポピュラーに使用される打楽器です。
異なる高さを持った、タブラとバーヤという2つの太鼓が組みになっており、2つで1つの楽器です。
また、タンプーラはインド音楽において、ドローンの役割を担う弦楽器です。そのため、メロディーを奏でるものというよりは、ベースのように音楽を支える役割を担っています。
ちなみに『Love You To』のシタールの演奏は、 Ravi Shankar (ラヴィ・シャンカール)というインドのシタール奏者に師事し、George Harrison が演奏したものです。
<シタールの音色>
<タブラの音色>
<タンブーラの音色>
まとめ
以上、今回は有名な曲で使われてる意外な楽器をご紹介しました。
世の中にはたくさんの楽器があり、楽器探索の旅に出るのも面白そうですね。
筆者が個人的に驚きだったのは、『 つつみ込むように... 』のなかに隠れていたビブラスラップです。
効果音に使われていることが多いことから、音の印象がコミカルなイメージを抱いていましたが、使いどころが違うと印象もまた全然違いますね。
普段のバンドとは異なる楽器を取り入れることで、音楽の幅を広げることができます。
皆さんも気になる楽器があれば、作曲に取り入れてみてはいかがでしょうか。
東京出身の音楽クリエイター。 幼少期から音楽に触れ、高校時代ではボーカルを始める。その後弾き語りやバンドなど音楽活動を続けるうちに、自然の流れで楽曲制作をするように。 多様な音楽スタイルを聴くのが好きで、ジャンルレスな音楽感覚が強み。 現在は、ボーカル、DTM講師の傍ら音楽制作を行なっている。 今後、音楽制作やボーカルの依頼を増やし、さらに活動の幅を広げることを目指している。