JASRAC 会員へ作曲を依頼する際に、依頼者側が行わなければならないこと&考慮すべきこと

作家には、楽曲制作をしたタイミングで著作権が発生し、作詞家や作曲家などの著作者がその権利を保有します。しかし、その権利を個人で管理し利用活用するのは現実的ではないため、JASRACへ直接管理委託する、もしくは、音楽出版社を通してJASRACかNexToneへ管理してもらうことが多くなっています(個人で管理委託できるのは、現時点ではJASRACのみです)。では、そんな著作権団体と管理委託契約をしている作家へ楽曲制作を依頼する場合、依頼者はどんな点に留意する必要があるのでしょうか? 本稿で解説していきましょう。

Yoshihiko Kawai
2024-10-026min read

JASRAC 会員とは?

よく作家同士で“JASRAC 会員ですか?”という会話になることがあります。この“JASRAC 会員”とは、どういう状態のものなのでしょうか? JASRAC のホームページを参照してみると、以下のような解説がされています。

“JASRACに著作権管理を委託する契約を結んだ作詞・作曲をする方、音楽出版社などの皆さまを「信託者」といいます。「信託者」のうち、JASRACの事業目的に賛同し、所定の手続きを行ったうえで、入会金と会費をお支払いいただくと「会員(準会員)」になります。「準会員」のうち一定の条件を満たした方が「正会員」になることができます。信託者・準会員・正会員のいずれも、使用料の徴収、分配の取り扱いに違いはありません(JASRAC webサイト 会員制度 会員とは? より引用)。”

個人、出版社ともに、「信託者」「準会員」「正会員」の3つの契約方法があることが分かります。その中で、JASRAC が提唱する“JASRAC 会員”というカテゴリーは、「準会員」「正会員」の2つに属する作家(出版社)のことを指すのですが、今回、このブログで解説する“JASRAC 会員”という言葉は、JASRAC が定義する“会員”の内容ではなく、“JASRAC に著作権管理を委託する契約を結んだ作家(出版社)”(=信託者)に対してとしますので、まずはその前提でこのブログを読み進めてください。

JASRAC 会員への楽曲制作の依頼と著作権

著作権は、作品を作った時点で作家に帰属する権利ですが、JASRAC と信託契約をしている場合、基本的には、その作家の作品(これまで作った作品、今後作る作品)は JASRAC へ著作権が移転されることになります。つまり、JASRAC 会員の作家へ楽曲制作を依頼した場合、その楽曲は、JASRAC が管理することになるのです(音楽出版社経由の場合もあり)。

作家が JASRAC と信託契約を結んでいない場合は、作家自身が著作権を管理することになりますので、著作権使用料に関しては、依頼者と作家が個別に交渉して取り決めることになりますが、こちらを実際に行っている例はごくわずかだと思います。

そして、ONLIVE Studio のサービスを利用し、楽曲制作費を支払って JASRAC 会員に楽曲制作をしてもらう場合、その費用の中には“著作権使用料”は含まれません。なぜなら、JASRAC との契約上、JASRAC と契約のある音楽出版社への譲渡を除き、著作権を第三者に譲渡すること(「買取契約」等)はできないからです。

JASRAC 会員でない作家へ依頼した場合、いわゆる買取契約(著作権譲渡契約)(※1)を結ぶことは可能なのですが、契約時にしっかりと楽曲の使用範囲等の目的を明記しないと、意図しない改変を加えられたり、他人名義のクレジットが記載されるなど、後々のトラブルに発展する可能性があるので、注意が必要です。

では、制作費を支払い楽曲を制作をしてもらった楽曲に対して、著作権使用料を支払う必要があるのは、どのようなケースなのでしょうか? 本サービスを利用して、まずは JASRAC 会員へ楽曲制作を依頼した場合を想定して、利用目的別に記していきましょう。

(※1)著作権(著作隣接権以外)に対する対価を作家へ支払うことで、楽曲の著作権を譲渡してもらう契約

利用目的別!JASRAC 会員へ依頼した際の著作権使用料を支払うタイミング

楽曲リリースの場合(インタラクティブ配信)

まず、制作依頼した楽曲をリリースしたい場合。昨今は配信リリースが主になっているので、配信ディストリビューターを経由してリリースすることがほとんどでしょう。その場合の著作権使用料は配信ディストリビューターが支払います。

また、JASRAC と包括契約を結んでいるサービス(YouTube、TikTok 等)に楽曲をアップする場合も、サービス側が著作権使用料を支払うことになるので、別途著作権使用料を支払う必要はありません。

CD や DVD で販売したい場合

CD や DVD などに楽曲を収録して販売したい場合は、プレス(※2)をするタイミングで、著作権使用料を支払う必要があります(販売店に流通するだけでなく、ライブハウス等で手売りをする場合でも、基本的には申請が必要です)。
この際、歌詞カードを印刷してブックレット等を作る場合は、歌詞の著作権使用料も支払う必要があります。使用料の金額や支払方法は、JASRAC のホームページで確認でき、曲数やプレス枚数に応じた概算もとることができます。

(※2)CD や DVD などのディスクメディアに楽曲を収録し、生産する工程のこと

広告や映画・演劇、ゲームなどに利用したい場合

次に、制作依頼をした楽曲を広告や映画・演劇、ゲームなどに利用したい場合。

この場合は、該当楽曲を自由に利用できるようにするために、JASRAC へ申請することで、JASRAC の管理を制限することが可能です(利用目的によっては、支払いが免除される場合もありますが、基本的には、利用の可否や使用額の条件等を事前に取り決める必要があります)。

また、タイアップで使用したい場合は、タイアップ先での利用についての使用料を免除することも可能な場合があります。

その他

そのほかには、コンサートやイベント等での演奏利用をしたい場合も手続きが必要です。

コンサート主催者や会場(ライブハウス等)が、支払い申請を代行してくれる場合もありますが、自身で行う必要があるケースもありますので、そちらも確認しておきましょう。


まとめ

このように、JASRAC 会員は、様々な場面で利用される楽曲の著作権使用料を、JASRAC が徴収してくれるのです。

楽曲制作を依頼する際、その作家が JASRAC 会員か JASRAC 会員でないかにかかわらず、著作権は、その作家に帰属するのですが、楽曲が完成後に、どのような目的で楽曲を使用するか?によって、著作権使用料を支払う必要がある、ということを覚えておきましょう。

ただし、JASRAC 会員ではない作家への依頼の場合、前述の使用料については、作家本人と直接交渉をすることになるのですが、実際には、楽曲制作費を支払うことで、目的ごとに使用料を支払うということは行われていないのがほとんどです(個人では JASRAC 会員でなくても、音楽出版社が入り、その業務を代行する場合は、使用料を支払う手続きをしています)。

JASRAC 会員へ楽曲制作を依頼して完成した楽曲を利用する場合は、利用目的に応じて、著作権使用料の支払いが発生し、その手続が必要であるということがお分かりいただけたでしょうか? 

JASRAC 会員は、2024年9月12日現在で合計2万人を超えています。(参考:一般社団法人日本音楽著作権協会 「JASRAC 情報公開・公示・公告等」員・信託者及び社員数 2024年9月12日会

そのため、音楽制作でプロフェッショナルの作詞・作曲家とコラボレーションしていると、依頼したいプロフェッショナルが JASRAC 会員 である場合が出てくることもあるでしょう。

作家にとって著作権というのは、生活を支える重要なファクターです。

依頼者はその点を理解した上で発注する必要があります。

プロフェッショナルの作家へリスペクトを払い、作家にとって大切な著作権を守るためにも、必要な知識を身につけましょう。

Yoshihiko Kawai
Written by
Yoshihiko Kawai

株式会社Core Creative代表。株式会社リットーミュージックで、キーボード・マガジン編集部、サウンド&レコーディング・マガジン編集部にて編集業務を歴任。2018年に音楽プロダクションへ転職。2021年、楽曲制作をメインに、多方面で業務を行う。2022年、事業拡大のため株式会社Core Creativeを設立。現在は東放学園音響専門学校の講師なども務め、さらなる事業拡大のため邁進中。

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