音楽制作におけるミキシングの基本手順

ミックスの工程は、楽曲のクオリティを大きく左右します。しかし、「実際にどのような手順で行って行けば良いの?」という方も多いのではないでしょうか。この記事では、ミックスの基本的な手順をご紹介いたします。

Nami
2023-07-265min read

そもそもミックスについてよく分からないという方は、先にこちらの記事をお読み下さい。

音楽制作のミックスとは?作業内容や考え方を解説 | ONLIVE Studio
ミックスは、音楽制作における重要な工程の一つです。普段私たちが聞いている音楽は、全てミキシングされたものになります。今回はミックスとはどのようなものか、ミックスを行うことでどのような効果があるのかをご紹介致します。

ミックス前の準備

ミックス作業に入る前に以下のような準備を整えておくことで、ミックス作業をスムーズに行う事ができます。

トラックの整理と設定

まずはトラックを見つけやすいように整理をしましょう。
トラックが一目で分かるようにトラック毎に名前を変更し、トラックが不規則に並んでいる場合は、トラックを並び替えると良いです。
この並び替えの順番は人によって違うため、自分のやりやすいように並び替えると良いでしょう。例えば、ボーカルトラックは一番上、ドラムは一番下など、必ず編成にあるパートの位置を毎回同じにすることで、トラックを見つけやすくなり効率的な作業に繋がります。
また、パートごとにグルーピングしたり、色付けを合わせて行う事でより分かりやすくなります。

バッファサイズの確認

ミキシングにおいては、バッファサイズは一般的に大きめに設定することを推奨します。
ミキシング作業はリアルタイムで行われるため、バッファサイズが小さいと処理負荷が大きくなり、トラックの量が多いと途中で再生が止まったりする場合があります。

※バッファサイズ・・・再生時にあらかじめ読み込まれるデータ容量の大きさ。あらかじめデータを一定量読み込んでくれることにより、データの読み込みが原因で再生が途中で止まってしまうことを防ぎます。

リファレンスの用意

ミキシングを行う際は必ずリファレンス曲を用意しましょう。
リファレンス曲とは、自分が仕上げたい方向性を示すための参考曲のことです。
このリファレンス曲があることで、楽曲の目指す方向性が定まり、ミックス途中に「どんな風に仕上げたいのか分からなくなっちゃった...」ということを無くす事ができます。

もし、あなたがミキシング案件を受注する場合は、クライアントにリファレンス曲があるかを確認しましょう。
リファレンス曲を用意したら、いつでもミキシング作業中に確認できるようにプロフジェクトに入れておくと良いです。

トラックの品質を確認

ミックスは、トラックがあってこそ成立する作業です。
オーディオトラック、MIDIトラック共に抜けやミスがないかを確認します。
オーディオトラックで複数テイクがある場合は、その中でもより良いテイクを選定します。
パンチインを行ったり、オーディオの一部を削除した場合は、オーディオの繋ぎがスムーズに聞こえるようにクロスフェードを施しましょう。

これらの下処理が終わったら、ノイズゲートを使用して不要なノイズを取り除きます。
ノイズゲートとは、音量レベルが設定したしきい値以下の場合に音声信号をカットするエフェクトのことです。静かな部分の音を自動的に消して、ノイズの混入を防止する事ができます。

バスのグループ化

バスのグループ化とは、複数のトラックをまとめて1つのバスに送ることです。
バス ( Buss )とは、マスタートラックに出力される前に通過する仮想的なチャンネルのことです。
例えば、ミキシングでドラムセットを処理する場合、キック、スネア、ハイハット、タムタムなど、複数のトラックが存在します。これらのトラックに同じエフェクトを使用したい時、それぞれにエフェクトを挿すことは非効率です。
同じ効果を得たいものを同じバスに送ることにより、エフェクトやEQなどの処理を効率的に行うことができます。

ゲインステージング

ゲインステージングとは、オーディオ素材を適切なゲインに調整する作業です。
ここで注意なのが、ボリュームとの調整と混合しがちという事です。
ゲインは入力信号のレベルを調整するためのパラメーターで、オーディオ素材でいうところの波形のことを指し、ゲインステージングはこの波形を調整します。
一方でボリュームは、トラックの出力信号のレベルの音量のことです。このボリュームはフェーダーで調整ができますが、波形そのものに影響はありません。

エフェクトプラグインをかけるときの調整は、音量によって調整の具合が変わってきます。
そのため、ゲインステージで元々の入力レベルであるゲインの大きさを適切に設定しておくことにより、適切な調整でエフェクトを効果的にかけることができます。
また、その他各トラックのバラツキを正すことで聞きやすい音になり、クリッピングの防止にもなります。

ボリュームを調整する

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Photo by Jiroe (Matia Rengel) / Unsplash

曲の中で一番トラック数が多いところ(曲が一番盛り上がるところ)をループにして、パンと音量フェーダーで各トラックのボリュームを調整をします。
初めにトラック数が多いところを組んでおくことで、他のセクションも調整しやすくなります。

この時、最も重要なトラックを決めて調整し、他のトラックも調整していくと良いでしょう。

個々トラックの調整

EQ

各トラックの周波数帯域が重なってしまっている場合、それぞれの楽器の音を聴きやすくするために、EQを用いて周波数帯域を調整することができます。
また、EQは楽器の良さをより引き出すために効果的な周波数域を削ったり上げたりなどを行うことで、音作り的な役割も果たします。

エフェクト

リバーブやディレイ、サチュレーションなど、エフェクトには様々な種類があります。
特にリバーブやディレイは空間の調整にも役立ちます。

パンニング

パンニングは、音をステレオフィールドにおける左右の広がりを調整することです。
楽器を空間の横幅のどの位置に配置するか、あるいはどれくらい音の広がりを持たせるかなどといったことを考慮して調整を行います。

コンプレッション

コンプレッションで、ダイナミックレンジを調整します。
場合によっては、コンプレッサーを通した音が欲しいというサウンド面からかける場合もあります。

オートメーション

必要に応じてオートメーションを書きます。
ボーカルなど、一部分だけ大きすぎたり、小さすぎたりする部分はボリューム、また一部分だけフィルターをかけたい場合はフィルターのオートメーションを書きます。

全体の調整

個々のトラックの音作りが終わったら、最後に全体を聞いて、気になるところを微調整していきます。
また、全ての調整が終わったら、モニタースピーカーのみならず、イヤホンやラジカセなど、様々なオーディオ機器で聴き比べて、どの媒体でも同じ印象になるかを確認してみましょう。

まとめ

以上、ミキシングの一般的な手順についてお話ししました。
もちろんエンジニアによってミックスの順序は異なります。今回お伝えした手順はあくまで一例としてお考えください。

ちなみに、ONLIVE Studio では星野源や東京スカパラダイスオーケストラも手がけた業界の第一線で活躍するエンジニア、渡辺省二郎氏に取材をしています。

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Nami
Written by
Nami

東京出身の音楽クリエイター。 幼少期から音楽に触れ、高校時代ではボーカルを始める。その後弾き語りやバンドなど音楽活動を続けるうちに、自然の流れで楽曲制作をするように。 多様な音楽スタイルを聴くのが好きで、ジャンルレスな音楽感覚が強み。 現在は、ボーカル、DTM講師の傍ら音楽制作を行なっている。 今後、音楽制作やボーカルの依頼を増やし、さらに活動の幅を広げることを目指している。

監修

Masato Tashiro

プロフェッショナルとして音楽業界に20年のキャリアを持ち、ライブハウスの店長経験を経て、 2004年にavexに転職。以降、マネージャーとして、アーティストに関わる様々なプロフェッショナルとの業務をこなし、 音楽/映像/ライブ/イベントなどの企画制作、マーケティング戦略など、 音楽業界における様々な制作プロセスに精通している。 現在はコンサルタントとして様々なプロジェクトのサポートを行っている。

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