モデリングマイクとは?
モデリングマイクとは、様々なマイクを模倣してソフトウェアでサウンドを再現してくれるマイクです。
マイクにはそれぞれ特性があり、使用するマイクによって録り音のキャラクターも異なります。
特に音楽制作の現場で長く愛用されている定番マイクは、高品質な録り音を実現するだけではなく、そのマイクで録ったことによって付加されるキャラクターも味として親しまれています。
様々なマイクをコレクションして、自分好みのサウンドを見つけたり、楽曲によって使用するマイクを選択することができたら夢のようですよね。
しかし、プロの現場で定番となっているマイクは非常に高額なため、そのような予算を用意できる人は限られるでしょう。
モデリングマイクには、一つのマイクの中にプロの現場で定番となっているマイクや伝説的なビンテージマイクなどのサウンドが数種類〜数十種類選択肢として用意されており、実際にそれらのマイクで録音したかのようなサウンドを実現してくれます。
モデリングマイクではどんなことができる?
モデリングマイクは、マイク本体とセットで専用のソフトがついてます。
このソフトを使用することによって、様々な有名なマイクモデルを選ぶことが可能となります。
また、製品によってはマイクモデルのみならずマイクの指向性、録音環境に合わせた調整などをソフトで処理することも可能です。
詳しくは「有名なモデリングマイク」の章で、具体的な製品をご紹介します。
モデリングマイクのメリット
コスパが良い
モデリングマイクの最大のメリットは、一つのマイクで様々なマイクサウンドを試すことができるため、コスパが良い点です。
マイクは非常に高価な機材であり、さらに音楽制作にはマイク以外にも様々な機材が必要です。複数のマイクを揃えるには、かなりの資金が必要でしょう。
しかし、モデリングマイクを使用すれば一本で様々なマイクシミュレーションが可能です。
クリエイティビティが上がる
異なるマイクの特性を簡単に試すことができるため、録音の幅が広がります。
様々なマイクのキャラクターを活かした録音を行うことで、新しい音作りの可能性が広がり、新たなクリエイティブのきっかけにつながるかもしれません。
モデリングマイクを活用することで、より多彩なサウンドを追求することができます。
レコーディング後にマイクを擬似的に変更できる
通常のレコーディングでは、レコーディング前にマイク選びを行います。
そのため、オケと録音した音との相性は、レコーディング後に確認することになります。
モデリングマイクのメリットとして、レコーディング後にソフトからマイクを選択することが可能な点があります。
これにより、オケと併せて確認しながら、どの音色が良いかを選択することができ、柔軟な音作りが可能です。
ビンテージ機材のサウンドに近い音を体感できる
実際にはなかなか手の届かない、高額なビンテージマイクを使用して録音したかのような音をシミュレーションすることができます。
そのため、名機のサウンドの特性を知ることができます。
このような業界で愛されているビンテージ機材の独特な音色を体験することは、音作りの理解が深まり、制作においてプラスになるでしょう。
また、そのサウンドを生かして制作に取り入れれば、プロ仕様に近いサウンドを楽曲に付加することが可能です。
モデリングマイクについて知っておきたいこと
オリジナルの音色は完全に同じではない
モデリングマイクではいくら再現度が高くても、完全にオリジナルのマイクの音色を再現することは不可能です。
特にヴィンテージマイクは個体差があるとも言われており、なおさら同じ音を求めることは現実的ではありません。
また、モデリングマイクは著作・商標などの都合で明確にどこのメーカーの、どの機種をモデリングしたかを言及することはできないため、おそらくこのマイクだろうと予想する必要があります。
しかし、再現元のどのマイクもとても有名で、さらにモデリングマイクの名前にもヒントが隠されているため、粗方何のマイクをモデリングしているかは予想することが可能です。
レイテンシーが発生しやすい
モデリングマイクを使用して掛け録りをする場合は処理が追いつかず、環境によってはレイテンシーが発生しやすいです。
このような問題は次の章で言及している、専用のハードウェアと併用する、もしくは掛け録りではなく録音後にソフトでモデリングマイクを選択することで軽減できる場合があります。
専用のハードウェアとの併用が推奨されている
モデリングマイクのパフォーマンスを最大限に上げるためには、専用のオーディオインターフェースやマイクのプリアンプとの併用をメーカーがおすすめしている場合が多いです。
もちろん既に使用している他社の製品で使用可能ですが、メーカー側は「〇〇(製品名)」との使用を想定して設計していると謳っているメーカーもあります。
有名なモデリングマイク
Sphere DLX / Universal Audio(ユニバーサル・オーディオ)
Universal Audio はアメリカのメーカーで、ビンテージの名機をプラグインで再現した UAD プラグインやオーディオインターフェイスでも有名です。
モデリングマイクに関しても、その再現性や実用性に定評があり、モデリングマイクの定番メーカーとしても名前が上がります。
Sphere には DLX と LX の2種類が展開されていますが、今回は上位モデルの DLX をご紹介します。
Sphere DLX では、38 種類の様々なマイクの名機でレコーディングしたようなサウンドをシミュレーションすることが可能です。
また、録音する時にはリフレクションフィルターを使用する方も多いと思いますが、このソフトでは sE Electronics Reflexion Filter、Aston Microphones HALO、KAOTICA EYEBALL などといった定番のリフレクションフィルターにそれぞれ合わせた自然な響きをソフト上で調整してくれる機能があります。
その他にも指向性やリボンマイク、コンデンサーマイク、ダイナミックマイクなどの種類、マイクの角度、マイクとの距離感によるサウンドの変化もソフト上で再現可能。
さらには、好きなマイクを2種類選んでステレオでも録音可能と、機能が満載です。
また、同社のオーディオインターフェイスである Apollo と併用すれば、レイテンシーを最小限に抑えて高品質な録音が実現できます。
引用:Sphere DLX - Universal Audio|Hookup, Inc.
マイクのお値段は、サウンドハウスにて税込 220,000 円で販売しています。(2024/07/24現在)
UNIVERSAL AUDIO ( ユニバーサルオーディオ ) / Sphere DLX|サウンドハウス
以下の動画では、Sphere と本家のマイクと比較しています、是非合わせてご参考にしてください。
SC-1 / Universal Audio
Sphere は多機能な分、少々お値段が張ります。
また、多機能だとなかなか使いこなすのが難しいといった側面もあり、ハードルを高く感じてしまう方もいるでしょう。
そんな方には、同じ Universal Audio が発売している SC-1 がおすすめです。
SC-1は Standard Series というシリーズのコンデンサーマイクです。
このマイクを購入した方は無料で Hemisphere というモデリングができるソフトがついています。
このソフトを使用して定番どころのマイクモデリングを選択することが可能です。
Sphere よりもシンプルな機能で十分という方には、こちらの機種がおすすめです。
マイクのお値段は、サウンドハウスにて税込 79,200 円で販売しています。(2024/07/24現在)
UNIVERSAL AUDIO ( ユニバーサルオーディオ ) / SC-1|サウンドハウス
ちなみに、Standard Seriesのダイナミックマイクバージョンである SD-1 もおすすめです。
こちらはさらにリーズナブルで、サウンドハウスにて税込 48,400 円で販売しています。(2024/07/24現在)
UNIVERSAL AUDIO ( ユニバーサルオーディオ ) / SD-1|サウンドハウス
Edge / Antelope Audio(アンテロープ・オーディオ)
Antelope Audio は、ブルガリアのメーカーです。
同社が提供する、モデリングマイクの Edge シリーズは近年 GO、SOLO、DUO、QUADRO、NOTE と、性能によって様々なモデルを展開していますが、今回は Edge シリーズの定番である DUO をご紹介します。
この Edge DUO は、全部で 18 種類のマイクのサウンドをモデリングしており、指向性も切り替え可能です。
Antelope Audio 社のオーディオインターフェイス、もしくはプリアンプを使用する場合は掛け録りも可能で、これにより安定したクオリティを求められます。
別会社のオーディオインターフェイスを使用する場合は専用のプラグインを使用する必要があり、それに合わせて別途で iLok (※1)2、もしくは3 の USB ドングルを購入する必要があります。
(※1)iLok とは、プラグインのライセンスを管理するためのものです。
マイクのお値段は、サウンドハウスにて税込 88,000 円で販売しています。(2024/07/24現在)
ANTELOPE AUDIO ( アンテロープオーディオ ) / Edge Duo コンデンサーマイク|サウンドハウス
以下の動画では、Edge と本家のマイクと比較しています、是非合わせてご参考にしてください。
ML-1 / Slate Digital (ソリッド・デジタル)
Slate Digital はアメリカのロサンゼルスやフランスに拠点を置く、音響機器やプラグインを販売するメーカーです。
ML-1 は、合計8種類のマイクをモデリングしています。
単一指向性のため、上記二つのように指向性を変えることはできません。しかし、マイクの質の高さや音の再現にも定評があり、モデリングマイクの主要な製品として名前が挙がります。
The Strongroom London mic pack というモジュールがマイクに付属しており、これにより様々なモデリングされたマイクのサウンドを試すことができます。
また、通常の The Strongroom London mic pack のみならず、拡張機能として Classic 87 Expansion Pack を別途購入することも可能です。
この Classic 87 Expansion Pack は、世界で最も有名なマイクを3機種モデリングしたものです。
こちらのマイクは同社の Slate VMS-One プリアンプと併用することでより良いクオリティを求めることが可能です。
マイクのお値段は、サウンドハウスにて税込 121,000 円で販売しています。(2024/07/24現在)
SLATE DIGITAL ( スレートデジタル ) / ML-1 MODELING MICROPHONE|サウンドハウス
以下の動画では、ML-1 と本家のマイクと比較しています、是非合わせてご参考にしてください。
マイクのクローン機種とは
ここまでモデリングマイクについて説明してきましたが、名機のサウンドを再現するといった意味ではクローン機種という選択肢もあります。
このクローン機種は定番マイクを模して制作されたマイクで、手頃な価格でそのマイクと近いサウンドが手に入ります。
例えば、WARM AUDIO という会社は、ビンテージの名機を高いクオリティで再現した機材を低価格で販売しています。
様々なマイクを試したい訳ではなく、憧れのマイクが決まっている、しかしオリジナルは高額で手が届かない....という方は、そのマイクを模したクローン機種がおすすめです。
合わせてチェックしてみてはいかがでしょうか。
まとめ
以上、今回はモデリングマイクについてご紹介しました。
マイクは高額な買い物ですが、モデリングマイクは一つのマイクで様々なサウンドを得ることができます。
コスパ良く制作の幅を広げたい、色んなマイクを試してみたいという方におすすめです。
YouTube ではモデリングマイクと、そのモデルとなっているマイク、それぞれで録音した素材を比較している動画が投稿されています。
今回ご紹介したモデリングマイクの動画もぜひ合わせてそのサウンドの違いを確かめてみてください。
モデリングマイクを使うことで、有名なマイクを通しているような録音ができ、気分が上がり楽曲制作の幅も広がることでしょう。
モデリングマイクを試してみて、音楽制作をさらに楽しみましょう!
東京出身の音楽クリエイター。 幼少期から音楽に触れ、高校時代ではボーカルを始める。その後弾き語りやバンドなど音楽活動を続けるうちに、自然の流れで楽曲制作をするように。 多様な音楽スタイルを聴くのが好きで、ジャンルレスな音楽感覚が強み。 現在は、ボーカル、DTM講師の傍ら音楽制作を行なっている。 今後、音楽制作やボーカルの依頼を増やし、さらに活動の幅を広げることを目指している。