
DSP とは?
DSP とは「Degital Signal Processor」の略で、日本語にすると「デジタル信号処理装置」です。「Degital Signal Processing」と呼ばれることもあります。
電子機器動作の処理を担う頭脳の一部であり、CPU の一種です。
DSP はデジタル信号処理に特化した機能をもち、リアルタイムで信号処理をする機器での利用を目的とした設計のため、大量のデータを高速に読み書きすることが可能になっています。
音響機器では、ミキサーやスピーカー、アンプに内蔵されていたり、リスニング用のオーディオの音質をあげるための外付けのネットワークプレイヤーとして DSP が使われていたり、あらゆる場面で登場する存在です。
また音楽機器以外でも、携帯電話やカーナビなどの通信処理、デジカメなどの画像処理に使われており、実は私たちの生活のいたるところで活躍しているんです。
オーディオインターフェイスに内蔵された DSP
DAW 上でプラグインエフェクトを使う際、通常はパソコンの CPU を使いますが、オーディオインターフェイスに内蔵された DSP を使うことで、パソコンに負担をかけることなく、高速で音素材の処理をすることが可能になります。
DSP を使用するメリットは主に以下のようなものがあります。
エフェクト処理ができる
前述の通りDAW上でプラグインエフェクトを使う際、通常はパソコンの CPU で処理されますが、DSP に対応したプラグインエフェクトであれば CPU を稼働させずに処理できるため、パソコン本体のスペックに影響されることがなく快適に操作ができます。
レイテンシー(音の遅延)をなくす
DAW 上でエフェクトをかけながら演奏を録音する際に、楽器を弾いたタイミングと実際に音が聞こえるタイミングがズレる場合があります。
DSP を使うと、インターフェイス内に取り込まれた音がコンバーターでアナログからデジタルに処理されたあと、DSP を経由することでエフェクトの処理が高速に行われるので、ヘッドホンから聞こえる音に遅延を感じることなく演奏ができるのです。
なお、DSP はオーディオインターフェイスに必ず搭載されているものではありません。非搭載の場合はパソコンの CPU で処理するような設計になっているか、もしくは FPGA という DSP によく似た処理装置が入っていたり、コンバーターなどの他の機能で処理速度を補っている場合もあります。
オーディオインターフェースそのものの機能について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてみてください。
各社モデル別機能の違い
DSP を内蔵したオーディオインターフェイスはたくさんありますが、それぞれ機能させる使い方はメーカーによって大きく変わってきます。
いくつかの例をご紹介します。
Apogee「Duet 3」

DSP の処理により、Symphony ECS Channel Strip というプラグインを使うことができます。ボブ・クリアマウンテンというミキシング界で著名なエンジニアがプロデュースした もので、EQ やコンプレッサーなどをゼロレイテンシーで扱うことができます。
また、Apogee Channel FXプラグインを追加購入すれば更に使用できるエフェクトが増えていきます。
プロユースの印象が強い Apogee ですが、このモデルは比較的初心者にも扱いやすいモデルになっています。
RME「Babyface Pro FS」

TotalMix FX という機能が、DSP により処理されています。
レコーディング環境に柔軟に対応できるよう設計されており、細かい設定が可能なミキサー・ルーティング機能、リバーブやエコー、EQ などのエフェクトをかけながら録音する機能など、複雑で多岐に渡る作業をレイテンシーを起こすことなく処理することが可能です。
RME は DSP のみならず、同社オーディオインターフェイスに基本搭載されている SteadyClock という高性能なクロックのための技術の評価が高く、クリアなモニタリングを提供していることで人気のメーカーです。
Universal Audio「Apollo twin X」

UAD という同社の人気プラグインが使えることで有名な Apollo シリーズ。高性能で複雑なエフェクトを処理するために、DSP が使われています。
録音素材にプラグインのエフェクトをかける場合、通常はサンプリングでその音の特性を再現していますが、UAD ではアナログ回路そのものを演算します。そのため高度なスペックが必要とされ、DSP の出番というわけです。
ハイエンドユーザーに人気の高い Universal Audio の製品ですので、本格的なオーディオインターフェイスにステップアップしてみたい方は、挑戦してみる価値のあるモデルです。
オーディオインターフェイスに外付けする DSP
更にプロユースになると、内蔵されたものではなく、外付けの DSP としてプラグインエフェクトを処理できるモデルも存在します。
外付けの DSP のプラグインシステムとしてよく知られているものは以下のようなものがあります。
Avid「Pro Tools HDX Core 」

AAX という DAW の最新フォーマットに対応した DSP 。AAX は、VST などと比べ専門性の高いプラグインフォーマットであるため、より精度の高い DSP 処理が必要になります。
Universal Audio「UAD-2 Satellite」

同社からリリースされているプラグイン「UAD」に特化した処理を行うための DSP 。前述の通り UAD はアナログ機材の音を再現しているため高度な演算が必要となり、この専用 DSPアクセラレーターを使うことでより高速な処理が可能になります。
このように外付け DSP は専門性も高く、プロ仕様のスタジオで使われるような高価格帯のものでもあるので、ビギナーや自宅で DTM を始めたい人は、内蔵された DSP で十分快適な制作環境が得られるでしょう。
制作での活かし方
DAW の制作において DSP を正しく機能させるためには、専用のセットアップが必要です。
まず、オーディオインターフェイスを DAW に繋げるためには、専用のドライバーをパソコンに入れる必要があります。更に DSP を動かすためには、別のソフトをインストールしなければならない場合が多いです。
各メーカーの HP に製品に必要なドライバーのダウンロードページがあるので、そこから必要なソフトをインストールし、DAW と連動させて使ってみましょう。
まとめ
今回はオーディオ機器にとって重要な装置、DSP についてまとめました。
DSP を使えば、快適な制作環境のなかで録音素材の新たな可能性を広げることができます。
これからオーディオインターフェイスの購入を考えている方は、DSP が内蔵されているかどうか、それによってどんな使い方ができるのかを調べてみて、自分にあった機材を選んでみてください。

シンガーソングライター。2012年デビュー。作詞作曲、ステージでのパフォーマンスを軸に活動しています。サッカーチームの応援ソング書き下ろし、企業オリジナルソングの制作、アーティストへの楽曲提供、ラジオパーソナリティなど多分野で活動中