ラウドネスとは?音量との違いって?
ラウドネスとは、音の大きさを表すものですが、実際の物理量ではなく人間が音を感じる大きさを表してるものです。
どういうことかと言いますと、人間には低い周波数域、高い周波数域は中高音域よりも聞き取りづらいなどといった聴覚特性があります。つまり、人間が実際に聞こえる音=物理的な音の大きさではないのです。
この聴覚特性を考慮して音の大きさを表しているのがラウドネスとなります。
なぜラウドネスが必要なの?
適切な音量でリスナーが音楽を聴けるために
音楽ストリーミングサービスの場合、曲によって音量がバラバラだと、リスナーが毎回音量調節をしなくてはなりません。
そのため、近年ではテレビ、CM 、音楽プラットフォームなど各所でラウドネスの規定値が設けられています。
前項では人間の聴覚特性上、周波数域によって感じる音量に差があるとお伝えしました。実際に人間が聞こえる音量を表したラウドネスで基準値を設けることによって、リスナーが快適に音楽を聞くことを可能にしています。
基準値を超えた場合は「ノーマライズ」が働きます。
ノーマライズとは、直訳すると標準化するという意味で、規定値を超えた場合は勝手に音量を下げますよという機能です。反対に基準よりも小さすぎる音は勝手に音量を上げるという仕様を設けたプラットフォームもあります。
勝手に音量が下げられる場合、音量が上げられる場合、いずれにせよ元の波形のまま音量が変わるわけではなく、音質が変化してしまいます。想定した音で聞いてもらえるように、予め規定値を確認してから音源を作るのが良いでしょう。
音圧戦争(ラウドネスウォー)を経て
ラウドネスに関しては、歴史を見るとより理解が深まるでしょう。
音楽は大きな音の方が目立ち、且つ人間の心理的にも大きな音の方が良い音と感じる傾向にあります。このことは、1940年代にジュークボックスというレコード再生機器が流行した時点で「音量が大きい方が目立つ」と認知されていました。
1950年代には、大手レコード会社であるモータウンはいかに大きな音のレコードを作成できるかを追求していました。また、1960年代にはビートルズが音圧を上げるためにコンプレッサーを導入するなど、音圧を重要視する動きが見られています。
この動きが CD 時代に激化してしまいます。
1990年代〜2010年代にかけて、他のアーティストよりも小さい音にならないようにと、音楽性を欠いてまでも音圧が最優先され、様々なアーティストが音圧を高めた CD を発売しました。有名なものだと、Red Hot Chilli Peppersの『 Californication 』は0dB を超えてクリッピングしていることが確認できます。
このような音圧ファーストがアーティスト、エンジニアのみならずメディアでも次第に問題視され始め、2013年に有名なエンジニアである Bob Katz 氏が終結を宣言し、この戦争に終止符が打たれました。
また、この戦争が鎮火した大きな要因が、音楽ストリーミングの登場です。
音楽ストリーミングでは、先ほどでお伝えしたノーマライズという機能が設けられているため、音圧を上げても基準値を超えた音は一律して音量を下げられてしまうため音圧を最優先にするメリットはなくなりました。
心理量と物理量:等ラウドネス曲線とは?
人間の音量の感じ方は、聴覚特性により実際の音の物理量とは異なるとお伝えしました。
そのため、物理量を表すメーターと、実際に人間に聞こえる音量には差が生まれてしまいます。
異なる周波数でも等しい音量を示すため、人間の聴覚における周波数特性を表したのが等ラウドネス曲線です。
この説明のみではいまいちピンとこない方も多いと思いますが、表の見方が分かれば理解しやすいです。
▶︎等ラウドネス曲線の見方
等ラウドネス曲線の縦軸は、音圧( db )を表し、横軸は周波数( Hz )を表しています。
表の真ん中に数字と「 phon 」 という文字が書いてありますね。
この「 phon 」はラウドネスレベルの単位で、人間が感じる音量の心理量を意味します。
20phon を例にとって見てみると、20phon=1000Hz の周波数が 20dB の時の音の大きさと等しいことを表しています。
それでは、もう少し低い周波数域である125Hz の場合、人間の聴覚上において同じほどの音量を感じるにはどれくらいの音圧が必要になるでしょうか。
125Hz から縦に辿り、20phon の線にぶつかるところの縦軸を見ると約50dB ほどの値になっています。
つまり、20phoneを表現するためには、1000Hzの場合20dB の音圧、125Hz の場合は50dB ほどの音圧が必要となります。
ラウドネスを測る単位:LUFS、LKFS
LUFS( Loudness Units Full Scale )および LKFS( Loudness K-weighted Full Scale )は、デジタルにおいて使用されるラウドネスを表す単位です。
これらの単位は、等ラウドネス曲線などの人間の聴覚特性が考慮されています。なぜ2つの単位が存在するかというと、採用するラウドネスの規格が EBU(欧州放送連合)または ITU (国際電気通信連合)由来であるかによって呼び名が異なるためです。したがって、LUFS と LKFS は同じラウドネスを表す単位です。
主な音楽配信サービスではこの単位を使用して、以下のように基準値が設けられています。
- Apple Music -16LUFS
- Amazon Music -13 LUFS
- YouTube -14 LUFS
- Spotify -14 LUFS
- SoundCloud -14 LUFS
この基準値より大きく上まわる場合はノーマライズされます。
ラウドネスを測る単位と方法:ラウドネスメーター
基準のラウドネスに合わせるために活用できるのがラウドネスメーターです。
Logic pro や Cubase にはラウドネス値を測る Loudness Meter がプリセットで入っています。
その他プラグインでより多機能なものを入れても良いでしょう。
- LEVELS | Mastering The
- MasterCheck Pro | Nugen Audio
- Insight 2 | iZotope
- WLM Plus Loudness Meter | WAVES
また、その他にも音量を表すメーターとして、PEAK メーター、RMS メーターなどがあります。
PEAK メーターは、dBFS を表すもので、クリッピングの確認に役立ちます。
RMS メーターは音圧を平均的な値を示すものなので、人間の聴覚に近いとされていますが、ラウドネスメーターのように聴覚特性を考慮しているわけではありません。
東京出身の音楽クリエイター。 幼少期から音楽に触れ、高校時代ではボーカルを始める。その後弾き語りやバンドなど音楽活動を続けるうちに、自然の流れで楽曲制作をするように。 多様な音楽スタイルを聴くのが好きで、ジャンルレスな音楽感覚が強み。 現在は、ボーカル、DTM講師の傍ら音楽制作を行なっている。 今後、音楽制作やボーカルの依頼を増やし、さらに活動の幅を広げることを目指している。
Masato Tashiro
プロフェッショナルとして音楽業界に20年のキャリアを持ち、ライブハウスの店長経験を経て、 2004年にavexに転職。以降、マネージャーとして、アーティストに関わる様々なプロフェッショナルとの業務をこなし、 音楽/映像/ライブ/イベントなどの企画制作、マーケティング戦略など、 音楽業界における様々な制作プロセスに精通している。 現在はコンサルタントとして様々なプロジェクトのサポートを行っている。