マスタリングとは?
現代におけるマスタリングとは、音楽制作においての最終工程で音質や音量を整えて最終的な作品の品質を高める作業です。このような調整により楽曲が一つの作品としてまとまり、より品質の高い作品をリスナーに届けることができます。
また、マスタリングでは YouTube 、CD 、DVD などの様々な媒体で聞いても一貫した作品のクオリティを持たせるために調整を行い、それぞれの媒体に適した形式で書き出すなども行います。
ミックスとの違い
ミックスは作品をどのように魅せるかを考慮し、録音された複数のトラックをそれぞれ調整していきます。そのため、ミックスでは創造的な工程となります。
ミックスについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
マスタリングは完成したミックスに対して最終的な調整を行う作業です。
ここではアートといった意味合いよりも、ノイズが入っていないか、どの媒体でも適切に再生されるか、などを考慮するため、どちらかといえば技術的な調整になります。
マスタリングの歴史
マスタリング( mastering )の語源は、もともとは原盤制作が由来です。
アナログ時代では、最終的な音源を制作するにあたってマスターレコードを制作する必要がありました。
このマスターレコードは、後に複製されるレコードの原盤として使用されるものになります。当時はマスターレコードを利用して作ったスタンパーというプレス型を用いてレコードが複製されており、このスタンパーを制作する工程をマスタリングと呼んでいました。
1950 年頃にテープレコーダーが登場します。これまでマスターレコードは演奏された音を直接カット(レコードに溝を入れること)して作られていましたが、テープレコーダーの場合、テープで録音したものをビニールレコードに音源を転送するという工程を挟みます。その際に周波数の最適化や、音質を向上させる動きがエンジニアの中で始まりました。
この頃から、マスタリングエンジニアは転送の役割以外の音質やラウドネスについて意識し始め、マスタリングエンジニアとしての職業発展に繋がったとされています。
マスタリングで行われる主な作業
この章では、マスタリングで具体的に行われる主な作業をご紹介します。
マスタリングでは、以下の作業などを行うことによって音像や音量、音質を整え、リスナーに最適な音源を提供します。
レベル調整
音量のバラつきが出ないように各楽曲の音量を調整し、一定のレベルに合わせます。特にアルバムなどの複数曲が収録されている場合に必要です。
また、一曲の中でも楽曲全体のバランスを調整することで、音の飛び出しがなくなり、聴きやすい音源になります。
音圧調整
市場に出回る音楽と比較して音量が小さすぎないか、その他各媒体規定のウドネス値などを考慮し、音圧を調整します。音圧調整には、コンプレッションやリミッター、マキシマイザーなどのツールが使用されます。
周波数特性の調整
音源ごとに異なる周波数特性を調整し、バランスを整えます。ベースやキックドラムなどの低音域を強調したり、ボーカルの明瞭さを向上させるために、イコライザーを使って周波数を調整します。
クロスフェードやトラック間の繋ぎ
楽曲を一曲の流れに仕上げるために、クロスフェードやトラック間の繋ぎを行います。
また、曲頭と曲終わりに空間を持たせるなど、リスナーが聞いた時に心地く聴けるかを考慮して調整します。
特にアルバム制作では、曲の間の繋ぎを考慮してマスタリングを行うことが重要です。
最終的な検査
最終的な検査を行い、ノイズや歪みなどがないかを確認します。
書き出し
音源が完成したら、各メディアに最適化したフォーマットやビットレートで音源を書き出しを行います。
この際に、ISRC コードなどのメタデータを音源データに書き込みます。ISRC コードとは、音楽業界で使用される国際的な音楽原盤の識別子のことです。音楽配信サービスでの楽曲検索や楽曲の著作権管理など様々な用途で使用されます。
ISRC 以外にもメタデータには、曲名、アーティスト名、アルバム名、ジャンル、作曲者、作詞者、レコード会社、リリース日などの情報が含まれています。
これらの情報を正しく入力することで、自分の音楽が市場に出回ったときに適切に管理することができ、またユーザーにも届きやすくなります。
マスタリングをプロに依頼するメリット
マスタリングを自分で行うことは音楽制作の知識を広げるという意味でも、有効的な手段です。
一方で、マスタリングも自分で行うとなると、知識を得る時間と作業する時間を要するため、自分の創作活動に専念したい場合は、マスタリングの工程をプロに依頼することをおすすめします。
音楽制作工程は、よく料理に例えられますが、マスタリングは料理における盛り付けや配膳に当たります。最高な食材を揃えても、量が多すぎたり、少なすぎたり、適切なお皿に盛り付けられていないと美味しさも半減してしまいます。
マスタリング作業をプロに依頼するメリットは、高いクオリティと高度な技術力、適切な音響機材、専門知識を持つエンジニアが作業を行うことで、楽曲の最高の状態を引き出すことができることです。また、外注することにより労力と時間の削減にもなります。
音楽スキルシェアサービス ONLIVE Studio には、マスタリングエンジニアも登録されています。現在はプレリリース期間中で、2023年の夏に本格リリース予定です。サービスインをした際には、ぜひご活用ください。
まとめ
マスタリングによってトラックに仕上げのタッチを加えることで、より完成度の高い音楽作品を作り上げることができます。
最近では LANDR や iztope 「 Ozone 」など、マスタリングを AI で行ってくれるサービスやプラグインも登場しています。
料金はサブスクや一曲買い切り、プラグイン買い切り、無料のものまで様々。
曲の仕上げたい方向性や求めるクオリティによって使用の判断をしていく必要はありますが、試してみると面白い結果が得られるかもしれません。
東京出身の音楽クリエイター。 幼少期から音楽に触れ、高校時代ではボーカルを始める。その後弾き語りやバンドなど音楽活動を続けるうちに、自然の流れで楽曲制作をするように。 多様な音楽スタイルを聴くのが好きで、ジャンルレスな音楽感覚が強み。 現在は、ボーカル、DTM講師の傍ら音楽制作を行なっている。 今後、音楽制作やボーカルの依頼を増やし、さらに活動の幅を広げることを目指している。
Masato Tashiro
プロフェッショナルとして音楽業界に20年のキャリアを持ち、ライブハウスの店長経験を経て、 2004年にavexに転職。以降、マネージャーとして、アーティストに関わる様々なプロフェッショナルとの業務をこなし、 音楽/映像/ライブ/イベントなどの企画制作、マーケティング戦略など、 音楽業界における様々な制作プロセスに精通している。 現在はコンサルタントとして様々なプロジェクトのサポートを行っている。