音楽制作のための音響学vol.1音の正体と伝わり方〜

そもそも音とは何なんでしょうか? 音を根本から理解することで、制作現場で使用される用語や、音響機器の説明書、音作り、制作環境づくり...様々な理解が深まるきっかけにもなります。

Nami
2023-07-285min read


音の正体は...ズバリ振動です!
では、なぜ振動は音になるのでしょうか。
音の伝わり方を知ると、この答えが見えてきます。

音の伝わり方とは

音の伝わり方には大きく分けて、空気中を介して伝わる空気伝播音と、個体を介して伝わる個体伝播があります。

  • 空気伝播音

空気は「弾性体」という性質を持っており、外力がかかった時に変形して圧縮され、外力が取り除かれると元に戻るという性質です。イメージとしてはバネのような感じです。
振動(この時この振動を音源と呼びます)が発生し、この振動が空気分子を押すことによって圧力変動が生じます。空気分子が押されて圧力の高いところである「密」が生まれ、隣の空気分子を押し出し、それと同時に圧力の低いところである「疎」が生まれます。

このような「密」と「疎」の動きが空気の性質である弾性体によって生まれ、まさに波のように広がり私たちの耳まで届き、鼓膜を揺らします。また、この波を音波といいます。

上記のことから、音の正体は圧力変化であるとも言えますね。

弾性体イメージ図
  • 固体伝播

固体伝播とは、音源からの振動が固体を媒介して伝わっていくことです。
固体に振動が加わり、固体内の分子や粒子にエネルギーを与えられ、このエネルギーが伝わることで、固体内の分子や粒子が振動し始め、その振動が周囲の分子や粒子に伝播していきます。この振動の伝播が音波として広がり、他の媒体に伝わります。
分りやすい例は、マンションで上の階から足音がしたり、椅子を引きずる音が聞こえる...などです。

多くの場合、固体伝播も最終的に個体から空気中に音が放たれるため、私たちの耳に届くまでに空気伝播音も同時に発生しています。
固体伝播のみの例として、骨伝導イヤホンがあります。骨伝導イヤホンは、骨組織を通じて内耳に音波が伝わり、聴覚神経を刺激して音を聞くことができるイヤホンです。

固体は空気よりも密度が高いことから、分子同士の相互作用が強く、音が遠くまで伝わりやすい特徴があります。その他空気伝播では伝わらない波動も伝わるため、防音を施す時には少々厄介です。
また、空気中か、固体か、液体か...音波が伝わる媒質によって伝わる速度も異なります。
空気中の音波の速度は約340メートル/秒、水の音速は約1,500メートル/秒、個体である骨の場合、音速は約3,200メートル/秒と空気中よりもかなり早く伝わります。

ちなみに、家の防音を考える時には空気伝播音と固体伝播のそれぞれの対策を考えなければなりません。
また、音は媒質によっても音質が異なるため、部屋の素材も考慮する必要があります。
例えば、同じ音源でも、部屋の素材や家具の配置によって反射や吸収が変わり、音の反響や響きが変化します。そのため、部屋の素材や配置も防音や音響の観点から考慮する必要があります。

※媒質(ばいしつ)とは、物理的な波動や振動が伝わるための物質や環境のことを指します。

振動が生まれる原因

音は振動によって生まれ、その振動による圧力変化によって私たちの耳に届くことが分りました。

そもそもの振動が生まれるきっかけですが、いくつか原因が考えられます。
一番イメージしやすいのは、物体が振動を発するもの。太鼓やギター、声帯の振動、スピーカーなどです。
また、前章で圧力の変化によって音が伝わることをお伝えしましたよね。何かしらの原因により、空気中に圧力が加わることでも音は発生します。
例えば、銃声や爆発音、などが挙げられます。これらの音は、急激な圧力変化が媒体(通常は空気)に伝わることで生じるものです。


まとめ

以上、今回は音に関する基礎知識をお届けしました!
なんだか理科の授業を思い出しますね。音の正体は振動であり、圧力変化であり、波動でもあります。

音楽制作のための音響学vol.2では、この基礎知識をもとに、音の音量を表すdb(デシベル)について解説しています。

  • 音楽制作のための音響学vol.1音の正体と伝わり方〜
音楽制作のための音響学vol.2 デシベル( dB )の様々な種類について | ONLIVE Studio
音楽制作のための音響学シリーズ第二弾!前回の「音の正体と伝わり方」に引き続き、今回は「デシベル」について解説。デシベルは、音楽制作のなかで、必ず聞く用語ですよね。しかし、その言葉を正しく理解していないと混乱しやすいトピックでもあります。今回は「デシベル」について少し踏み込んで解説していきま
Nami
Written by
Nami

東京出身の音楽クリエイター。 幼少期から音楽に触れ、高校時代ではボーカルを始める。その後弾き語りやバンドなど音楽活動を続けるうちに、自然の流れで楽曲制作をするように。 多様な音楽スタイルを聴くのが好きで、ジャンルレスな音楽感覚が強み。 現在は、ボーカル、DTM講師の傍ら音楽制作を行なっている。 今後、音楽制作やボーカルの依頼を増やし、さらに活動の幅を広げることを目指している。

監修

Masato Tashiro

プロフェッショナルとして音楽業界に20年のキャリアを持ち、ライブハウスの店長経験を経て、 2004年にavexに転職。以降、マネージャーとして、アーティストに関わる様々なプロフェッショナルとの業務をこなし、 音楽/映像/ライブ/イベントなどの企画制作、マーケティング戦略など、 音楽業界における様々な制作プロセスに精通している。 現在はコンサルタントとして様々なプロジェクトのサポートを行っている。

More from ONLIVE Studio blog

Register Now

ONLIVE Studioに
登録してみませんか?

プレリリース期間中に、プロフェッショナルに登録してくださるアーティストを積極的に募集しています。

ちょっとでも面白そう!と思った方は、ぜひ登録してみてくださいね!

ONLIVE Studio →