カノン進行とは?
カノン進行とは、ディグリーネームで考えた時の Ⅰ - Ⅴ - Ⅵm - Ⅲm - Ⅳ - I - Ⅳ - Ⅴというコード進行です。
Cメジャーキーで考えた場合は、C - G - Am - Em - F - C - F - G というコード進行になります。
ディグリーネームが良く分からない、そもそもコード進行って?という方は、先にこちらの記事をご覧ください。
カノンって何?
カノン(canon)とは、同じ旋律を異なる時点からそれぞれ開始して演奏をする楽曲の様式のことです。
イメージとして分かりやすいのは、かえるの歌の輪唱でしょう。一つの旋律を、タイミングをずらして模倣し反復します。
カノンを用いて作曲された曲で特に有名なのは、Johann Pachelbel(ヨハン・パッヘルベル)の『3つのヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグ 二長調(原題:Canon a 3 Violinis con Basso c. / Gigue)』という曲ではないでしょうか。
みなさんも一度は聴いたことがあると思います。
この曲はバロック音楽を代表する名曲で、チェロやチェンバロ、ヴァイオリンなどによって演奏されます。
バロック音楽はクラシック音楽の初期にあたり、一般的に17世紀初頭〜18世紀頃の音楽を指します。
今回の記事の題材になっている「カノン進行」とは、この曲で使用されたコード進行であり、この曲名から名前がついています。なので、カノンという様式自体とは関係はありません。
この曲を作曲した Johann Pachelbel はドイツの作曲家です。
オルガニストとして活躍した人物で、コラール前奏曲やフーガの構築に貢献しました。
カノン進行の特徴
なめらかな構成音
カノン進行は、各コードの構成音の動きがスケールのドから滑らかに繋がっています。
よくあるアレンジとして、コードを分数コードにして、ベースラインを下降させていくパターンがあります。
繰り返しやすい
カノン進行は、循環コードとしても機能します。
循環コードとはトニックに始まり、トニックに戻ってまた同じコード進行を繰り返していきやすいコード進行のことです。
例えば、ドミナントはトニックに進みたがる性質がありますが、カノン進行はトニックで始まり、ドミナントでひとくくりが終わるため、またトニックからはじめやすいのです。
こうすることで繰り返しやすく、BGM としても適しています。
主要三和音が多い
ノンダイアトニックを入れると、おしゃれな雰囲気になりますが、このコード進行は全てダイアトニックで構成されており、耳馴染みの良いコード進行です。
カノン進行の使い方
元の曲となった Johann Pachelbel のカノンは、クラシックでは珍しく、コード進行が耳に残りやすいです。
そのため、このコード進行を弾くだけで原曲が想像できてしまうので、そこを活かすか、もしくはどのように崩すかがポイントになってくると思います。
カノン進行を使うことで原曲の真似にならないの...?と思う方もご安心ください。コード進行に著作権はないのです。
カノン進行が使われている曲と応用
J-POP
あいみょん 『マリーゴールド』
I - V/VII - VIm - V - IV - I/III - IV - V(Aメロ)
楽曲全体がカノン進行の雰囲気を保ちつつ、分数コードを使用することでベースラインを滑らかにしています。
スピッツ『チェリー』
I - V - VIm - IIIm - IV - I - IV - V(Aメロ)
Aメロにカノン進行が使われています。
山下達郎『クリスマス・イブ』
I - V - VIm - V6 - IVM7 - IIIm7 - IIm7 - IV/V - V
Aメロにカノン進行が含まれており、細かい進行こそ違いますが、大きくみてカノン進行の流れを感じます。
シックスやセブンスを使っておしゃれな雰囲気になっています。
アニソン
和田光司『Butter-Fly』
I - V - VIm - IIIm - IV - I - VIm - IV - V
I - V - III- VIm - IIIm - IV - IIIm - I - VIm - V# - VI# - I(サビ)
サビがカノン進行ベースになっています。
2回し目はノンダイアトニックコードを取り入れ、元気に発展していく雰囲気になっています。
忍たま乱太郎『勇気100パーセント』
I - V - VIm - IIIm - IV - I - IIm - IIm7 - V
I - V - VIm - IIIm - IV - I - IIm - IVm - I - V(サビ)
Aメロやサビがカノン進行を感じさせるコードになっています。
IIm - VIm を入れることで、後半に変化をつけています。
洋楽
Billy Joel 『Piano Man』
I - V/VII - IV/VI- I/V - IV - I/III - II7 - V(Aメロ)
ベースラインが滑らかに下がっていくスタイルです。
後半が II - V - I (ツーファイブワン)になっており、次の展開に進む推進力があります。
The Beatles『Let It Be 』
I - V - VIm - VIm7 - IVM7 - IV6
I - V - IV - I(Aメロ)
カノン進行からやや変化させいていますが、カノン進行ならではの耳馴染みのあるコード感で、穏やかな印象です。
Maroon 5 『Memories』
I - V - VIm - IIIm - IV - I - IV - V
ブリッジ以外は繰り返しでカノン進行が使用されています。
コード間はカノン進行が前面に出ていながらも、綺麗なアレンジで近代的な曲に仕上がっています。
Pet Shop Boys『Go West』
I - V - VIm - IIIm - IV - I - IIm7 - V
カノン進行をベースに後半は II - V - I (ツーファイブワン)になっています。
一曲を通して、基本的には上記のコード進行を繰り返しています。
Lewis Capaldi『Someone You Loved』
I - V - VIm - IIIm - IV - I - IIm - V
カノン進行の雰囲気を感じるコード進行です。
ブリッジ以外は上記のコード進行を繰り返しています。
K-POP
BTS『Permission to Dance』
I - V/VII - VIm7 - V - IVM7 - IIIm7 - IIm7 - Vsus4(Aメロ)
Aメロやサビがカノン進行ベースになっています。
後半を II - V - I (ツーファイブワン)にアレンジしています。
まとめ
以上、今回はカノン進行についてご紹介しました。
このような有名なコード進行を使って、まずは一曲作成にトライしてみてはいかがでしょうか?
ONLIVE Studio では、カノン進行の他にも、J-POP のヒット曲にたくさん使用されている「王道進行」と「丸サ進行」についても過去にご紹介しています。
様々なコード進行を知って、自分の作曲に活かしましょう!
東京出身の音楽クリエイター。 幼少期から音楽に触れ、高校時代ではボーカルを始める。その後弾き語りやバンドなど音楽活動を続けるうちに、自然の流れで楽曲制作をするように。 多様な音楽スタイルを聴くのが好きで、ジャンルレスな音楽感覚が強み。 現在は、ボーカル、DTM講師の傍ら音楽制作を行なっている。 今後、音楽制作やボーカルの依頼を増やし、さらに活動の幅を広げることを目指している。