EQ(イコライザー)とは?
EQ とは、任意の周波数帯域の音量を調節できるエフェクターです。
特定の周波数帯域を調整することでノイズなどの不要な音を軽減したり、反対に強調させたい帯域の音量を増幅させたりすることができます。
EQ は音作りだけではなく、各楽器の周波数域を整理することにも使えるため、楽曲全体をまとまりのある音に仕上げることにも役立ちます。
この段階では、「よく分からない...」「周波数の調整って、なんの意味があるの?」と、疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。次の章で、EQ の役割を具体的に解説していきます!
〜前提知識として知っておきたい!音に含まれる周波数について〜
私たちが普段聴いている音には、様々な周波数が含まれています。※1
例えば、ピアノの「ラ」と、クラリネットの「ラ」は同じ音の高さですが、音色は違いますよね。
「ラ」の音を鳴らしている時、実は「ミ」や「ド」などの音も同時に鳴っています。この時「ラ」以外で鳴っている音を、倍音と呼びます。音色は、倍音の構成によって決定されます。
つまり、「同じ音の高さでも、含まれている倍音が違うことで様々な音色が存在する」ということです。
では「ラ」などの音の高さは何で決定されるのでしょうか。
これは、音に含まれる周波数成分の中で一番低い音(周波数)である「基音」が、その音の高さとなります。
EQ では、音に含まれている倍音・基音を含めた周波数成分を彫刻のように削ったり、反対に増幅させることで、音を変化させることができます。
※1 例外として、人工的に作られたサイン波(正弦波)が存在します。
サイン波は、一つの周波数しか含まない音のことです。倍音を含まないないため、基音のみ鳴っている音と考えることもできるでしょう。
なぜ EQ を使うの?
不要な音をカット or 軽減する
EQ を使って不要な音や耳障りな音をカット、もしくは軽減することで、聞きやすい楽曲に仕上げることができます。
不要な音とは、レコーディング時に入ってしまったノイズなどです。耳障りな音は、楽器のアタック音などの耳に痛い音、部屋鳴りなどによって特定の音だけ共鳴して聞こえてしまっている音などです。
アコースティックギターの場合は、ピックと弦がカツカツぶつかる音などが耳障りな場合、その周波数帯域の音量を下げることで、軽減することができます。
このような音を EQ によって処理していくことで、楽曲を全体で聞いた時に、それぞれの楽器の馴染みがよくなります。
音作り
EQ は、各楽器の音作りに役立ちます。
アコースティックギターを例に挙げて説明します。
アコースティックギターを録音すると、ギターの弦が振動して出る音、その中でも6弦に近い音、1弦に近い音、ギターのボディによって共鳴した音、部屋に共鳴した音、ピックと弦があたる音...など、様々な音が含まれていますよね。
以下の図のように、それぞれメインで鳴っている周波数帯域があるため、どこの帯域を強調するかによって、音色の雰囲気が大きく異なります。
すごく簡単に言ってしまえば、低めの周波数域を削って、高めの周波数域を中心に音作りをすれば、軽くて軽快なサウンドに、反対に低めの周波数域を中心にすれば、重めで存在感のあるサウンドになる...のようなイメージです。
※上記の図は、あくまでイメージを掴むためのざっくりとしたものです。
各周波数帯域を整理する
楽器はそれぞれ独自の周波数を持っています。
周波数帯域が似ている楽器同士を使用する場合、マスキングが起きやすいです。
マスキングとは、同じ周波数域を持つ音が同時に鳴ると、一方の音が聞こえづらくなるという現象のことです。
マスキングされると、音がこもって聞こえたり、本来出したい音が聞こえづらくなってしまいます。
以下の表は、それぞれの楽器が持つ音域です。
例えば、女性ボーカルとギターの音域は重複している部分が多いですが、ボーカルとギターが持つ周波数成分が似すぎてしまうと、それぞれの魅力が半減してしまうので注意が必要です。
このようなマスキングを防止するために、EQ を使って各楽器の周波数帯域の住み分けを行うことで、各楽器の音が明瞭に聞こえるだけでなく、全体のバランスも整います。
EQ の種類
EQ には、大きく分けて「グラフィックイコライザー」と「パラメトリックイコライザー」の2種類あります。2つの違いは、操作性と自由度の高さの違いです。
グラフィックイコライザーは、コントロールできる周波数範囲が特定の帯域に区切られている EQ です。
自由度は低いですが、どの帯域をどれくらい増減させたかが視覚的に分かりやすいのが特徴です。
一方パラメトリックイコライザーは、EQ における各パラメーターをそれぞれ自由にコントロールできる EQ です。つまり、グラフィックイコライザーよりも自由度が高い EQ のことです。
ミックスにおける EQ は、パラメトリックイコライザーを主に使用します。
パラメトリックイコライザーのデメリットは、音の変化を視覚的にイメージしづらいところでした。
しかし、近年、DAW に標準搭載されている EQ は、パラメトリックイコライザーの特徴である自由度を保ちつつ、視認性にも優れた EQ ディスプレイ上で操作することができるものが多いです。
以下のような画面をスペクトラムアナライザーと呼び、音に含まれる周波数を視覚的に確認できるものです。
初めのうちは、EQ の概念を視覚から理解するのも良いでしょう。
ただし、どの方法も最終的には耳で判断することが大切です。
EQ の設定項目は何がある?
では、実際にどのような項目を設定して音を変化させていくのでしょうか。
この章では、EQ の基本的な設定項目をご紹介します。
設定項目(パラメーター)
- フリーケンシー・・・周波数のことです。
- Q 値(Q幅)・・・どれくらいの幅を操作の対象に指定するかという帯域幅のことです。大雑把にカット、ブーストしたい場合は Q 値を広く取り、特定の箇所だけの場合は狭く取ることができます。
- ゲイン・・・狙った周波数の音量をどのくらい増減させるかという設定項目です。
ゲインを調整することで、フリーケンシーと Q 値で選択した周波数帯域の音量をコントロールすることができます。 - フィルタータイプ・・・EQ には予め音を加工しやすいように、フィルタータイプが用意されている場合があります。例えば、任意の周波数より低い音はしっかり削ることができる、「ハイパスフィルター」や一定の周波数帯域のみを調整する「ベル」などがあります。
スペクトルアナライザーの見方
縦軸・・・音量です。
横軸・・・鳴っている周波数を表します。右に行けば行くほど高い音になります。
まとめ
初心者の方にとっては、「なんだか難しそう...」と感じられる EQ ですが、基本的な概念を理解することで、自身の楽曲のクオリティを向上させる一歩となるでしょう。
EQ を理解して、自分の楽曲を調整したり、メインストリームの曲を改めて聴いてみたりすると、耳を鍛えることにも繋がります。
是非実際の制作に活かしてみてください。
東京出身の音楽クリエイター。 幼少期から音楽に触れ、高校時代ではボーカルを始める。その後弾き語りやバンドなど音楽活動を続けるうちに、自然の流れで楽曲制作をするように。 多様な音楽スタイルを聴くのが好きで、ジャンルレスな音楽感覚が強み。 現在は、ボーカル、DTM講師の傍ら音楽制作を行なっている。 今後、音楽制作やボーカルの依頼を増やし、さらに活動の幅を広げることを目指している。