
丸サ進行とは?
丸サ進行とは、ディグリーネームで考えた時の IVM7-III7-VIm7-Vm7-I7 というコード進行です。
ディグリーネームが良く分からないという方は、先にこちらの記事をご覧ください。

丸サ進行という名前は、椎名林檎さんがボーカルを務めるバンドである東京事変が 1999 年にリリースした楽曲『丸の内サディスティック』で、このコード進行が使用されていることが由来になっています。
原曲キーで考えた場合のコード進行は、A♭M7 - G7 - Cm7 - E♭7 です。
ディグリーで考えると ⅣM7 - Ⅲ7 - Ⅵm7 - Ⅰ7 です。
『丸の内サディスティック』よりも前にこのコード進行がフィーチャーされた楽曲として、ジャズ・フュージョンの巨匠 Grover Washington Jr.(グローヴァー・ワシントン・ジュニア) が1980 年にリリースした『Just the Two of Us』という楽曲があります。
この楽曲は世界的に大ヒットとなり、日本でも「クリスタルの恋人たち」という邦題がついて売れたこと、さらに久保田利伸さんがカバーしたことでも馴染みのある楽曲です。
『Just the Two of Us』の原曲キーで考えた場合のコード進行は、D♭M7 - C7 - Fm7 - E♭m7 - A♭7 です。
丸の内サディスティックには「Vm7」が入っていないという若干の違いはありますが、基本的なコードの運びは同じです。そのため、丸サ進行といっても「Vm7」を含めて説明されることもあり、Just the Two of Us 進行とほぼ同義語として扱われています。
丸サ進行の特徴
J-POP には丸サ進行が多い?!近年の日本のヒット曲で使用されている
元々は洋楽から流れてきたコード進行ですが、日本国内のヒット曲に多いコード進行です。
2023 年のヒット曲でもある、YOASOBI『アイドル』や米津玄師『KICK BACK』、なとり『Overdose』では丸サ進行、もしくはそれに近しいものが使用されていました。
「エモい」サウンド
このコード進行は、「エモい」サウンドとして表現されることが多いです。
Vaundy『東京フラッシュ』やあいみょん『愛を伝えたいだとか』などでも使用されており、楽曲にオシャレな雰囲気かつ、どこか切ない印象を与えています。
音楽的な特徴とは?
一時的に転調
このコード進行には、ダイアトニックコード外の音が含まれています。それは III7 と I7 です。(Vm7が含まれる場合はVm7も該当)
通常ダイアトニックコードであれば IIIm を使用しますが、 III7 が使用されています。
これは VIm7 をトニックマイナーと見立てた時の V7として機能しており、一時的に同主調のマイナーキーに転調していることになります。
さらに、I7 は IVM7 をトニックと見立てた時のドミナントの役割を担っているので、ここでは一時的に下属調へ転調していると考えることもできるでしょう。
続いていく感
通常であればトニックである I のコードで終始感を出すところ、代わりに I7 ではドミナントになっています。
そのため、Vm7 - I7 - IVM7 がツーファイブワンになっており、進行感が強く、ずっと続いていくような印象を受けます。
浮遊感
このコード進行にはトニックの役割を果たすコードがなく、終始感がありません。
さらに転調していることによって、マイナーやメジャーの垣根も曖昧、さらに IVM7 から始まるので、どっちつかずな雰囲気がそのオシャレさを作っているのでしょう。
派生コード進行
丸サ進行の派生系として、以下のようなコード進行が挙げられます。
どこかのコード進行が削られていたり、代理として別のコードが入っています。
- IVM7 - III7 - VIm7 - V7
I7 が省略された形です。
- IVM7 - III7 - VIm7 - II7
Vm と I7 を無くして II7 を入れた形です。
- IVM7 - III7 - VIm7 - VI#M7
Vm と I7 を無くして VI#M7 を入れた形です。
丸サ進行を使用している楽曲
この章では、丸サ進行を楽曲に使用している曲をご紹介します。
(※完全に同じ進行ではない派生系も含めています。)
J-POP 編
あいみょん『愛を伝えたいだとか』
ずっと真夜中でいいのに。『秒針を噛む』
ずっと真夜中でいいのに。『秒針を噛む』MV (ZUTOMAYO – Byoushinwo Kamu)|ずっと真夜中でいいのに。ZUTOMAYO
その他
- Ado 『うっせぇわ』
- Vaundy『東京フラッシュ』
- imase『Night dancer』
K-POP編
정국 (Jung Kook) 『Seven』
정국 (Jung Kook) 'Seven (feat. Latto)' Official MV|HYBE LABELS
ITZY 『Cheshire』
その他
- aespa『'Thirsty』
- TWICE 『Feel Special』
- ILLIT (아일릿)『Magnetic』
洋楽編
Sabrina Carpenter『Nonsense』
Sabrina Carpenter - Nonsense (Official Video)|Sabrina Carpenter
Megan Thee Stallion『Sweetest Pie』
その他
- DJ Khaled『Jealous ft. Chris Brown, Lil Wayne, Big Sean』
- Ariana Grande『thank u, next』
- Jamiroquai『Virtual Insanity』
まとめ
以上、今回は丸サ進行についてご紹介しました。
このコード進行には、どこかグッと心を掴まれるような雰囲気がありますよね。
このコード進行は特徴的なサウンドなので、個人的には覚えやすいコード進行なのではないかと思います。
初心者の方も、コード進行の第一歩として、まずはこのコードを覚えてみてはいかがでしょうか。
また、丸サ進行に似ているコード進行として、王道進行という進行があります。
王道進行もまた、日本の J-POP で頻繁に使用されるコード進行です。
丸サ進行と共通している部分が多く、III7 → VIm7 の動き、そして IVM7 で始まるところが同じです。
以下の記事で詳しくご紹介しているので、こちらの記事も合わせてご覧ください。


東京出身の音楽クリエイター。 幼少期から音楽に触れ、高校時代ではボーカルを始める。その後弾き語りやバンドなど音楽活動を続けるうちに、自然の流れで楽曲制作をするように。 多様な音楽スタイルを聴くのが好きで、ジャンルレスな音楽感覚が強み。 現在は、ボーカル、DTM講師の傍ら音楽制作を行なっている。 今後、音楽制作やボーカルの依頼を増やし、さらに活動の幅を広げることを目指している。