音楽制作のための音響学vol.2 デシベル( dB )の様々な種類について

音楽制作のための音響学シリーズ第二弾! 前回の「音の正体と伝わり方」に引き続き、今回は「デシベル」について解説。 デシベルは、音楽制作のなかで、必ず聞く用語ですよね。 しかし、その言葉を正しく理解していないと混乱しやすいトピックでもあります。 今回は「デシベル」について少し踏み込んで解説していきます!

Nami
2023-08-164min read

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そもそも音とは何なんでしょうか?音を根本から理解することで、制作現場で使用される用語や、音響機器の説明書、音作り、制作環境づくり...様々な理解が深まるきっかけにもなります。

デシベル( dB )が表すものは一つではない!

「デシベル」と一口に言っても、実は様々な種類があります。
dB と表記されているものでも、それは省略して使用されていることが多いのです。
音楽制作の領域で使用される dB として、dBSPL 、dBFS 、dBu  …など様々あり、色々ありすぎてわけがわからない!という方も多いのではないでしょうか。

dB の後ろに別の単語がくっついていますね。それによってそれぞれ基準となる数値が異なります。
では、そもそもデシベル( dB )自体の言葉の意味は何でしょう。

デシベルは相対的な量を表す単位

デシベル=音量と思っている方は多いのではないのでしょうか?
しかし、厳密にいうと違います。

デシベルは絶対的な数値ではなく、ある一定の数値を基準として相対的な量を表す単位のことです。
そのため、よく飛行機の音は 80dB 前後と言われますが、一方で DAW のフェーダーは 0dB を超えないように調整しますよね。
この理由は、基準としている数値がそもそも違うからです。

デシベルという単位が用いられるのは、音圧、電力、電圧、電波、光強度、ゲイン(電子回路などにおける)などがあります。

デシベル( dB )は、ベル( Bel )という比率を表す相対的な単位が元になっており、この単位をさらに扱いやすくするために1/10を表す「デシ」をくっつけたものがデシベルです。

この単位はアレクサンダー・グラハム・ベル( Alexander Graham Bell )という発明家が考案しました。このデシベルは電話の開発と音声の伝送に関する研究を行っていた際に、音の強度や電気信号の強度を表すための指標としてデシベルを導入したとされています。

デシベルの「ベル」は、この方の名前に由来しています。


なぜ絶対値ではなく「デシベル」を使うのか

DJ Mixer
Photo by Dim Hou / Unsplash

結論からお伝えすると、数値を取り扱いやすくするためです。

音の正体は、圧力の変化でもあると、第一回目ではお伝えしました。
人間が感じることができる音圧は、20 μPa(マイクロパスカル) 〜 20 Pa(パスカル)とも言われています。 人間の耳はよくできているもので、このレンジってかなり広いんです。
どれくらい広いかと言いますと、20 μPa(マイクロパスカル) =0.000002Pa
つまり、最小〜最大で聞き取れる音圧が100万倍も差があります。

このように大きい数を扱いやすくするための単位を対数と言います。デシベルは対数の一種とも言えるでしょう。

対数の考え方

対数はどんなものか、少し深掘りしてみましょう。
先ほどもお伝えしたとおり、対数とは大きい数を扱いやすくするための単位です。
特徴は、「底」と呼ばれる数に対して、どれくらいの累乗で「真数」が表されるかを求めることです。

具体的な式を見てみましょう。

log10 100=2

対数ではlogというものが用いられます。
この式でいう「底」が10で、真数は「100」です。対数は2に当たる部分です。つまり、10を2乗することで100になることを表しています。

これは簡易的な式ですが、これだけでも100を表すために2という相対的な小さい数で表せることが分かりますね。

ちなみにデシベルの式ではこのような対数の考え方が利用されています。
デシベルの式は以下になります。

dB =20log10(p/p0)

ここでのPは基準値となるものによって異なります。

例えば、空気中における音の強さを表す単位であるdB SPLの場合、人間が聞くことのできる最小の音圧である20μPaを表す2.0×10(-5) を基準としてP0に代入します。Pはそれに対する任意の音の強さを入れます。

つまり、この基準値であるPに何を入れるかでdBのバリエーションが増えているということです!


まとめ

なんだか計算式が出てきたり難しく感じるかもしれませんが、何となくでも知っているだけで、1dBの差って、実際どれくらい?など、理解できる幅が広がる予備知識になります。

次回は具体的な dBSPL、dBFS、dBu などの違いについて解説をしていきます!

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Nami
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Nami

東京出身の音楽クリエイター。 幼少期から音楽に触れ、高校時代ではボーカルを始める。その後弾き語りやバンドなど音楽活動を続けるうちに、自然の流れで楽曲制作をするように。 多様な音楽スタイルを聴くのが好きで、ジャンルレスな音楽感覚が強み。 現在は、ボーカル、DTM講師の傍ら音楽制作を行なっている。 今後、音楽制作やボーカルの依頼を増やし、さらに活動の幅を広げることを目指している。

監修

Masato Tashiro

プロフェッショナルとして音楽業界に20年のキャリアを持ち、ライブハウスの店長経験を経て、 2004年にavexに転職。以降、マネージャーとして、アーティストに関わる様々なプロフェッショナルとの業務をこなし、 音楽/映像/ライブ/イベントなどの企画制作、マーケティング戦略など、 音楽業界における様々な制作プロセスに精通している。 現在はコンサルタントとして様々なプロジェクトのサポートを行っている。

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