マイクの基礎知識と選び方のポイント

マイクの仕様書を読んでみても、用語が多くてよく分からないという方も多いのではないでしょうか。 音質に大きく影響を及ぼすマイク選び。 本記事では、マイクの種類や指標などを解説します。適切な知識を元に、自分の求めるマイクを探しましょう!

Nami
2023-06-026min read

マイク選びの重要性とは

マイクは音質に影響する重要な要素です。適切なマイクを選ぶことで、録音される音源の質を向上させることができます。

一般的に、高級なマイクほどより高品質な音質を提供する傾向がありますが、必ずしも高価なマイクがすべてにおいて優れているわけではありません。
値段よりもレコーディングの目的や、レコーディング環境を加味した適切なマイクを選ぶことが、自分の欲しいサウンドを得られることにつながります。

マイクの種類

マイクには様々な種類があります。この章では音楽制作及び音楽活動で使用頻度の高い、コンデンサーマイク、ダイナミックマイク、リボンマイクの3種類をご紹介します。

コンデンサーマイク

コンデンサーマイクは、二枚の金属板間に電荷を蓄えることができる「コンデンサー」の仕組みを利用したマイクです。使用する際は、コンデンサーマイクの原理上ファンタム電源が必要になります。

コンデンサーマイクはダイナミックマイクよりも感度がよく、音をより繊細に拾うことができます。また、後述する周波数特性も広く、高い音質を望めるといった理由から、一般的にボーカルやアコースティック系楽器のレコーディングではコンデンサーマイクを使用します。

価格帯としては、ダイナミックマイクよりも比較的高価な傾向にあります。
また、マイクの構造が複雑なことから衝撃や湿気にも弱く、取り扱いや保管時の配慮をする必要があります。

ダイナミックマイク

ダイナミックマイクは振動板と呼ばれる金属コイルとその周りに配置された磁石から構成されており、その構造はコンデンサーマイクよりもシンプルな物になります。そのため、コンデンサーマイクよりも比較的安価で頑丈です。
また、ハウリングに強い、ノイズを拾いにくい、高い音圧にも対応できるなどといった点から、ライブやパフォーマンスの現場でよく使用されます。

レコーディングにおいては、一般的にドラムやエレキギターなどの録音に使用されます。

リボンマイク

リボンマイクはダイナミックマイクにおける金属コイルの代わりに、金属箔(リボン)を使用したマイクです。
この金属箔が音波を検知し、電気信号に変換するという仕組みです。

金属箔が吊り下げられたような構造なので、可動域が広く、音を繊細に拾い上げることができます。その音はナチュラルで温かみのある音として定評があります。

注意点は、リボン自体が非常に脆く、振動や衝撃に敏感という点です。そのため、取り扱いには注意が必要です。

マイク選びの指標

マイクの仕様書には様々な項目が記されています。
この章では、指向性、周波数特性、等価雑音レベル、最大 SPL 、感度、S/N比 の用語を解説します。

マイクの指向性

マイクの指向性とは、マイクに対してどの角度からの音を拾いやすいかを表します。
全方面から同じ感度で音を拾う無指向性や、一定方向のみからの音を拾う単一指向性などがあります。それぞれの指向性にもメリットデメリットがあるので、録音の用途や録音環境によって適した指向性を選ぶと良いです。

一般的に、周囲における音の受け取り方を表した以下のような図が仕様書やマニュアルに記載されています。今回は、代表的な3つの指向性をご紹介します。

  • 無指向性
引用:全指向性(無指向性)|audio-technica
  • 単一指向性
引用:単一指向性|audio-technica
  • 双指向性
引用:双指向性|audio-technica

周波数特性

マイクにおける周波数特性とは、マイクが受け取る音の周波数に対する感度や、それによって出力される電気信号の周波数成分の強さを示す特性のことです。
周波数特性はマイクが受け取る音の周波数と、その周波数に対する感度の関係がグラフで記されています。

グラフ上で感度が高い周波数帯域がある場合、そのマイクはその周波数帯域の音をより強く感知しやすく、その逆に低い周波数帯域の音はより弱く感知される傾向があります。
具体的にグラフを例に見てみましょう。

グラフ例1 引用: NT1-A | RODE


上記は RODE NT1-A の周波数特性のグラフです。
20Hz から 20kHz までの広い周波数範囲をカバーしていることがわかります。周波数特性は比較的フラットで、特に 100Hz から 1kHz の範囲でほぼ均等に感度があります。また、高周波数域では少し強めの傾向があり、5kHz から 15kHz にかけて上昇しています。

グラフ例2 引用: SM7B -- ボーカルマイクロホン

こちらは SHURE SM7B の周波数特性のグラフです。
50Hz から 20kHz までの範囲をカバーしていることがわかります。また、周波数特性の均等性に優れているため、比較的フラットに音を録ることができます。

SM7B には、低音域の制御のためのロールオフ(カットオフ)スイッチが搭載されており、このスイッチをオンにすると、100 Hz 以下の低音を減衰させることが可能です。

等価雑音レベル

マイクにおける等価雑音レベルとは、マイク自体が発生させるセルフノイズ(電気信号の雑音)を示す数値です。この値が小さいほど、マイクでされる音声の品質が高くなる傾向があります。

等価雑音レベルは、セルフノイズ、等価ノイズレベル、ノイズレベルなどと表示されている場合もあります。

最大 SPL ( Sound Pressure Level )

最大 SPL は、マイクが受け取ることができる最大の音の大きさです。
マイクがこの値を超える音を受け取ると、歪みやクリッピング(音割れ)が生じ、且つ故障の原因にもなるので注意です。

感度

マイクの感度は、音を拾う能力のことです。
マイクが受け取る音の強さが大きければ、マイクはより大きな電気信号を出力します。つまり、マイクの感度が高いほど、より小さな音でもしっかりと拾うことができます。この値は、0に近いほど感度が良いです。

感度が良くてもセルフノイズが大きくては、ノイズも拾いやすくなってしまいます。感度をみる時は次の項目である、S/N 比と一緒に確認をすることがおすすめです。

S/N 比

マイクにおける S/N 比とは、信号対雑音比のことです。これは、マイクが捉えた音声信号の強さ(シグナル)と、不要な音(ノイズ)の比率を表します。この場合のノイズは、マイク自体から発生されるノイズのことです。S/N 比が高いほどノイズの割合が少なく、音声信号が明瞭となります。
音楽制作で使用されるマイクの S/N 比の数値は、おおよそ 70〜80db 以上が相場となります。

低い

高い

60db

90db

メリット


◆S/N比が高いマイクに比べて比較的安価なため導入しやすい

メリット


◆ノイズが少ない

◆録音される音声がクリアで正確な音声を録音できる

◆ノイズが入りにくいため静かな場所での録音や小さい音の録音にも適している

デメリット


◆S/N比が高いマイクよりノイズが入りやすい

◆ノイズ除去処理を行わなければならない場合がある

◆高音質を求める場合の使用は向かない

◆静かな場所や小さな音の録音には向かない

デメリット


◆S/N比が低いマイクに比べて比較的高額なため導入コストがかかる。

他の要因を考慮せず S/N 比の性能のみで考えた場合は、セルフノイズを拾いにくいため、S/N 比が高いマイクのほうが良いマイクと言えます。
ただし、録音した音声にノイズが入ってしまう原因はマイクのセルフノイズ以外にも、録音環境や録音方法、録音する際に使用するマイク以外の機材音などがあります。

マイク選びのポイント

マイク選びの際は、以下のようなポイントを考慮し、一番適しているマイクを選択することが重要です。

何に対して使用するかを明確化させる

使用目的によって、マイクに必要な性能や特性が異なります。目的を明確にしておくことで、最適なマイクを選ぶことができます。
例えば、レコーディングの際には繊細に音を拾うコンデンサーマイクを使用する傾向がありますが、ライブだと耐久性のあるダイナミックマイクが選ばれる傾向にあります。
また、レコーディングでもボーカルを録音するのか、ドラムを録音するためのものかなど、録音対象によってもマイク選びは変わってくるでしょう。

使用環境を考慮する

マイクを選ぶ際には、使用環境によって選ぶマイクも変わってきます。
レコーディングを例に挙げると、レコーディングスタジオのように録音環境が整った場所でのレコーディングは、感度が高く細かいニュアンスを捉えることができるコンデンサーマイクが適しています。
一方で録音環境を整えていない宅録の場合やライブハウスでの収録の場合などは、通常のレコーディングスタジオと比較して外部からの音が入りやすいため、指向性が狭いダイナミックマイクが適しているでしょう。

欲しいサウンドをイメージする

どのようなサウンドが欲しいかを考えることは、非常に重要です。
使用するマイクによって、得られるサウンドのキャラクターが違います。高音域までクリアなサウンドで表現してくれるもの、重心が低く感じるもの、音の立体感を感じるもの…マイクによってそれぞれキャラクターがあります。
自分が欲しいサウンドを明確にし、実現し得るマイクを選ぶと良いでしょう
そのためには、実際に使用している人のレビューをみて判断したり、実際に聴き比べてみたりして判断することが大切です。


まとめ

マイクには様々な種類があり、マイク選びに難しさを覚える方も多いのではないでしょうか。マイクは必ずしも「マイクの性能が高い」=「良い音が得られる」というわけではありません。一つの性能を切り取って考えるのではなく、今回ご紹介したマイクの性能、欲しいサウンド、環境、録音対象など、様々な要素を複合的に考えることが、良い選択に繋がります。

最近ではマイクの比較記事があったり、マイクの音質比較動画などがYouTubeに投稿されています。実際に音の違いを体感して判断してみるのがおすすめです。

Nami
Written by
Nami

東京出身の音楽クリエイター。 幼少期から音楽に触れ、高校時代ではボーカルを始める。その後弾き語りやバンドなど音楽活動を続けるうちに、自然の流れで楽曲制作をするように。 多様な音楽スタイルを聴くのが好きで、ジャンルレスな音楽感覚が強み。 現在は、ボーカル、DTM講師の傍ら音楽制作を行なっている。 今後、音楽制作やボーカルの依頼を増やし、さらに活動の幅を広げることを目指している。

監修

Masato Tashiro

プロフェッショナルとして音楽業界に20年のキャリアを持ち、ライブハウスの店長経験を経て、 2004年にavexに転職。以降、マネージャーとして、アーティストに関わる様々なプロフェッショナルとの業務をこなし、 音楽/映像/ライブ/イベントなどの企画制作、マーケティング戦略など、 音楽業界における様々な制作プロセスに精通している。 現在はコンサルタントとして様々なプロジェクトのサポートを行っている。

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